1980年代後半から90年代にかけて、国産車は2ドアクーペの人気が高かった。国産メーカー各社は、こぞって4人乗りの2ドアモデルをラインアップに加えていた。しかし、人気の中心がワゴンやクロカンと呼ばれるRV(レクリエーショナルビークル)に移ると、クーペの販売は激減。各メーカーはたちまちクーペの生産を中止した。この流れはその後も続き、現在、国産車で2ドアクーペといえばトヨタ、レクサス、GR、日産、スバルに数車種が残っているだけになってしまった。
しかし、欧州車やアメリカ車は1950~1960年代に出現した2ドアクーペを今でも作り続けている。クルマを文化としてとらえている彼らは、たとえ販売数が激減しても数少ないクーペユーザーのためにクルマを開発し、販売しているのだ。メルセデス・ベンツも例外ではない。そして、そのメルセデスから新しい2ドアクーペが発売された。「CLEクーペ」だ。
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インテリア、装備、後部座席の実用度は?
車格は「Cクラス」と「Eクラス」の双方をカバーするサイズ。全長は4850mm、全幅1860mm、全高1420mm。ロングノーズ、ショートオーバーハング、ファストバックルーフの実車は意外に大きく見える。そして、美しいプロポーションだ。
長さのあるドアを開け、前席に座る。背もたれとヘッドレストが一体となったハイバックシートは専用開発されたスポーツシート。低めの着座位置だが、Aピラーとドア上縁はドライバーに迫っている。小径で握りも太めのハンドルはスポークが2本ずつの最新のツインスポーク。インテリアは試乗車の「200クーペスポーツ」ではAMGラインインテリアが標準装備となっている。
運転席の目の前には12.3インチの液晶パネル。その隣の11.9インチのディスプレイは、画面が6度、運転席に向けられている。ダッシュボードのトリムや各操作スイッチパネル、ドアパネル、空気吹き出し口にはアンビエントライントが組みこまれている。最新のドイツ車はアンビエントライトが流行だ。
後席へはストラップを引き、背もたれを倒すと、前席が前方にスライドする。ストラップでの座席操作はメルセデス・ベンツとしては初採用だそうだ。ストラップにはナッパレザーが用いられている。やや窮屈な姿勢で後席に座る。乗降時の姿勢は体を屈めなければならないが、後席に移り、左右1名ずつのセパレートシートに座ってしまえば、頭上のスペースは身長160cmまでだが、足元も一応、広さは確保されている。サイドウインドウはハメ殺しで開閉しないが、ロングドライブも耐えられる空間だ。
ただし、フロント部から拡がるガラスルーフは薄いシェードで陽射しを遮るだけなので、最近の日本の暑さには耐えられないかもしれない。試乗したのは夏前だったが、気温30℃を記録する猛暑日。路上駐車した後の室内はかなり室温が高く、走り出しても室内は陽射しの強さで、室温が下がらなかった。パノラミックスライディングルーフ22万円のオプションだが、装着は積極的にはすすめたくない装備だ。
硬軟を使い分けることができる万能クーペ
2024年3月に国内デビューをはたした「CLEクーペ」だが、ラインアップは「200クーペスポーツ」の1グレード。車両本体価格は850万円(消費税込み)。パワーユニットは直列4気筒2.0Lのガソリンターボ。9速ATを搭載。さらにエンジンとミッションの間にマイルドハイブリッドシステム(ISG)を組み合わせている。このシステムの電動ブーストは短時間で最大23PS、205Nmを発生する。
サスペンションはスポーツサスが標準だが、試乗車はオプション(40万円)のドライバーズパッケージが装備されていたので、連続可変ダンピングシステム搭載の「DYNAMIC BODY CONTROLサス」を装着していた。さらにこのオプションは後輪操舵システムも採用されていた。駐車時には前輪と逆方向、高速時には前輪と同じ方向に動くことで、低速域での取り回しの良さと高速時のハンドリングの安定感が向上している。
9速ATの走行モードはE/C/S/I。それぞれエンジン/ダンパー/ハンドル/ESP/エキゾースト音の5項目のチューニングが変化する「DYNAMIC SELECT」を標準装備している。ダンパーの調整はドライバーズパッケージ装着車のみだ。C(コンフォート)モードを選択して走り出す。乗り心地は中速以上ではやや硬め。路面の凹凸での上下動も硬め。ハンドリングはやや重め。コーナーでは戻しが強めだ。
印象としてはコンフォートを名乗るなら、乗り心地はもう少しソフトに、ハンドリングも軽めにしたほうが、優雅におしゃれなクーペを運転する雰囲気が楽しめるような気がする。試乗車は、スポーツ性を打ち出している。クーペスポーツという車名どおりだが、このスタイリングの美しさは、見て楽しむ要素と、ハンドルを握って、のんびり流す楽しさを味わいたい。
スポーツ走行は、S(スポーツ)モードにまかせたい。実際にSモードは重めのハンドルでの安定感や、コーナーでのハンドリングを楽しめるセッティング。乗り心地も上下動は振幅が短く、キツめの乗り心地を演出している。だからこそコンフォートモードは、もっとコンフォートでもよい。メリハリを効かせてほしい。
2.0Lガソリンターボ+ISG+9速ATの動力性能は、0→100km/hの加速が7秒台と速く、直4エンジンは6000回転までスムーズに上昇し、シフトアップを繰り返した。一方で100km/hの巡航は9速で1300回転と低く、エンジンはゆるゆると回っているにすぎない。もちろんエンジンの不快な音や振動は皆無だ。新型「CLE200クーペ スポーツ」は、硬軟を使い分けることができる万能クーペといえる。
■ 関連情報
https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/models/coupe/cle/overview.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博
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みんなのコメント
首都高の継ぎ目越えでもフラットで吸い付く様に走る。
運転していても後ろに乗っていても、端から車の姿勢を見ても直ぐ分かる安定性。
以前乗っていたcカブリオレを下取りにだしたので
両者の比較ができる。
それから言うと 余裕のある人には 買い替えをお勧めする。
このクルマはcのモデルチェンジではなく 新型車である。
すべてが新しく快適である 買って損はなかった。