1970年~1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”に焦点を合わせ、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両の正体を暴く“探偵”に扮します。永山探偵をサポートする“物知り少年”は、自動車評論家の小川フミオ(少年O)と『GQ JAPAN』編集部のイナガキ(少年I)のふたり。今回は1980年代の“ハイソカー”ブームで人気を集めたトヨタの5代目マークIIだ。
ロングセラーモデル
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少年O “美しき正統”
少年I 5代目マークIIのキャッチコピーですね。なにをもって“美しき正統”なのかイマイチわかりませんが、1980年代の日本車にはこういった「???」なコピーが多かったので気にしないことにしましょう。
探偵 今見て思うのは高級車なのか実用車なのか、微妙な存在感がクルマ好きの心をくすぐるモデルですね。“走り屋”が好むクルマというイメージが最近は強いです。
少年I 今回の個体は、マスコミ関係の仕事をしていらっしゃる鈴木健太郎さんという36歳の方が所有していらっしゃるものです。1996年のLGグランデエディション。2018年8月に購入なさったとのこと。セダンではなくステーションワゴンというのがマニアックですね。
少年O ベースになったマークII(X70型)は、バブル期を代表するような1台。1984年に登場して、とりわけ4ドア・ハードトップはよく売れました。リアクオーターピラーを黒塗りにした「クリスタルピラー」が強く印象に残る、パーソナル色の強いコンセプトが大当たりしました。セダンやステーションワゴンの設定もあったんですよね。
探偵 この型のマークIIといえば、4ドア・ハードトップのイメージが強いですね。
少年I だからこそ鈴木さんがオーソドックスなステーションワゴンを購入したのにはビックリです。今見ると、ビュイック「リーガル」のようで、なんだかアメ車っぽい。
少年O ステーションワゴンは超ロングセラーでした。1988年にマークIIが6代目になったときも、1992年に7代目になったときも継続生産されて、1997年にようやくという感じでマークIIワゴン・クオリスにフルモデルチェンジしました。ただしクオリスのベースはマークIIでなく「カムリ」だったので、前輪駆動でした。
探偵 そこで実質的にはマークIIと縁が切れちゃった。
少年O はっきりいってその頃は“遺物感”がありましたね。後輪駆動を守る必然性もないし。だからクオリスの登場は「こうきたか!」と、納得しました。もっとも、カムリベースのクルマをマークIIとするのは、いささか強引だなあと思ったのも事実。
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少年I 鈴木さんが最初物色なさっていたのは、ボルボ「940」かメルセデス・ベンツ「Eクラス(W124)」のステーションワゴン。ただし「クラウン」や「セドリック/グロリア」、そしてマークIIのステーションワゴンにも惹かれていたそうです。
探偵 欧州のステーションワゴンの名車と評価されるモデルと、等価なモデルととらえていらっしゃったんですね。
少年O 共通しているのは、実用性の高さで評価が高い点ですね。
探偵 たしかに。ステーションワゴンって、まじめに作られたクルマですよね。スタイリングよりも荷物の積載量を重視したパッケージングとか。とくに昔のステーションワゴンはスタイリングよりも実用性をとっていたから、なおさらまじめさが伝わってきます。
少年I ちなみに鈴木さんは「変わった内外装色を探していました」とのこと。実際に鈴木さんのクルマは「シークレストトーニング」なる独特の深みを持つ外板色と、「セーブル」なるブラウン色の内装色が特徴的です。
少年O シークレストトーニングは当時のオプションでしたね。
探偵 ステーションワゴンのスタイルと、この色との組合せは意外というか、白の印象が強い5代目マークIIのなかではかえって目を惹きますね。
少年I オーナーの鈴木さんが、このクルマを好きな理由は“昭和の刑事ドラマに出てきそうな地味で真四角なデザイン”だといいます。ただし、単に地味だからいいというんじゃなくて、見切りもよくて扱いやすく、機能的という点でよく出来ていると感心するそうです。
探偵 実車をじっくり眺めさせていただきましたが、いまのクルマにない、ある意味での落ち着いた囲気は貴重だと思います。ボディのサイズ感を感じない重厚さがありました。
少年I 鈴木さんは、BMW520i(E28)も所有していらして、修理に入れているあいだに乗るクルマとしてこのマークIIワゴンを購入なさったそうです。車検、自動車税ともに込みで28万円だったとのこと。
探偵 それはいい買い物ですね!
少年I 2.0リッター直列6気筒24バルブの“ハイメカツインカム”1G-FEエンジンを搭載しているものの、走らせてみるとおとなしい印象を受けたそうです。
少年O ハイメカツインカムというのは、トヨタ独自のDOHCエンジンのことですね。カムシャフトが2本あるのでツインカム。DOHCエンジンは気筒あたり基本的に、吸気バルブと排気バルブを2つずつそなえ、燃焼性能を向上させてパワーを追求します。どちらのカムシャフトもベルトとかチェーンで駆動するものですが、ハイメカツインカムは吸気バルブを駆動するカムシャフトだけベルトで駆動して、排気バルブ用のカムシャフトは吸気側カムシャフトとギアでつなげて駆動するという独自のシステムです。
少年I 読者のみなさん、解説が長くてごめんなさい。
少年O メリットは、メインテナンスが楽になるのと、バルブが狭角になるので、燃焼特性として、低回転域でのトルクが出るところでしょうか。当時、トヨタでは、ハイメカツインカムに燃料噴射を組み合わせたエンジンを「-FE」、高回転まで回る通常のDOHCエンジンを「-GE」としていました。佐藤さんのマークIIワゴンは実用性も大事なので、エンジンは2.0リッターの「1G-FE」ですね。
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探偵 私が乗った印象としては、考えていたよりずっとパワフルだなあというものです。車重は1.2tと軽量で、マニュアル変速機とともに、予想外に楽しめました。しかも最近じゃなかなか乗れない6気筒! それをマニュアルで操るというだけでワクワクします。
少年I 鈴木さんは、走行距離15万kmで購入したのですが、4年間のうちに22万キロに伸ばしてしまったそうです。
探偵 4年で7万kmとはかなり乗っていらっしゃいますね。でも運転した限り、“過走行感”はまったくありませんでした。まさにトヨタ・クオリティ。前回試乗したソアラも造りの良さにびっくりしましたが、今回のマークIIにもまたびっくりしました。とはいえ、部品の供給が不安です。
少年I 在庫部品の減少は鈴木さんも懸念だそうです。ただし大きな故障や修理は今のところないそうで、購入後に1度だけ、消耗部品などを交換する、いわゆる“リフレッシュ”をしただけで以降の調子は良いとのこと。トヨタ車の耐久性の高さを日々実感していらっしゃるそうです。
少年O 「いつまでも乗れるクルマを作るのがいちばんのエコ」といったのは、昔のポルシェでした。
探偵 まさにその言葉を裏付けるようなクルマですね。
少年I 鈴木さんのクルマは、ステアリング・ホイールもロード・ホイールも純正だそうです。最近、ハードトップ系のパーツであるデジタルインストゥメントパネルを入手したそうで、いずれメーターまわりを交換したいそうです。
探偵 そうやってクルマをどんどん若返えらせていくようなところが、ちょっと古いクルマを愛する形というか、私たち探偵団が興味を惹かれる理由かもしれないですね。
少年O “人に歴史あり”ならぬ“車に歴史あり”。
俳優・永山絢斗(ながやまけんと)1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX~外科医・大門未知子~ 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。
出演情報/
・映画『冬薔薇』2022年6月3日(金)全国ロードショー
・WOWOWオリジナルドラマ「ダブル」6月4日(土)22時30分より放送・配信スタート
・映画『峠 最後のサムライ』2022年6月17日(金)全国ロードショー
・映画『LOVE LIFE』2022年9月9日(金)全国ロードショー
【過去記事】
メルセデス・ベンツ500E
ランチア・デルタHFインテグラーレ
マセラティ・ギブリ(2代目)
メルセデス・ベンツGクラス(2代目)
アルファロメオ・スパイダー(初代)
日産PAO
スバル・レガシィ・ツーリングワゴン(初代)
ユーノス・ロードスター(初代)
ホンダ・NSX(初代)
シトロエンCX
メルセデス・ベンツSクラス(W126)
ローバー・ミニ
フェラーリ360モデナ
フォードRS200
フォード・エスコート(マーク1)
マツダRX-8
トヨタ・セルシオ(初代)
日産・フェアレディZ(2代目)
フォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1)
メルセデス・ベンツ560SEC
フォルクスワーゲン・コラード
アストンマーティンDB5
いすゞ・ピアッツァ(初代)
ポルシェ911(タイプ964)
三菱ランサーエボリューションIX
ホンダ シティ・ターボII
シボレー・タホ(初代)
三菱GTO
シボレー ・コルベット(4代目)
日産フェアレディZ(4代目)
デロリアン
マツダ・ロードスター(2代目)
フォード・フォーカスRS Mk3
トヨタ・ソアラ(2代目)
まとめ・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・Babymix ヘア&メイク・新宮利彦
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