日本市場にぴったりのサイズとパッケージ
今、勢いに乗るマツダ最新のクロスオーバーSUVが、「世界でもっとも美しいクロスオーバーSUVを目指した」というCX-30だ。車格的にはCX-5とCX-3の中間に位置し、ベースはマツダ最新のコンパクトハッチバック&セダンのマツダ3。しかし、マツダ3よりも全長、ホイールベースを短縮し、全高を1540mmに抑えた(ルーフアンテナも廃し、ガラスアンテナを採用)、じつに日本の路上にジャストな全長4395×全幅1795×全高1540mm、ホイールベース2655mmとしている。つまり、立体駐車場の入庫も容易ということだ。
高級車メーカーでもないのになぜ? 「マツダは値引きしない」の真相とは
シャープな折れ線を持たないエクステリアデザインはマツダ3の延長線上にあるが、ボディサイドの写り込みの変化は、マツダ3とまったく逆の方向にある。黒い樹脂製のクラッティングはあえて幅広として、ボディを薄く見せるのと同時に、タフネスなSUVらしさを強調している。
パワーユニットは1.8リッタークリーンディーゼルのスカイアクティブD(116馬力/27.5kg-m)、および2リッターガソリンのスカイアクティブG(156馬力/20.3kg-m)が揃い、ミッションは6速ATを基本に、ガソリン車には6速MTも用意する。今後、うわさのガソリン車とクリーンディーゼルのいいとこ取りをした次世代ガソリンエンジンのスカイアクティブXも加わる予定だ。
最低地上高は2WD、4WDともに175mm。マツダ3が140mm、CX-3が160mm、CX-5が210mmということで、スタックの脱出性能を高める「オフロードトラクションアシスト」の新規採用もあり、都市型クロスオーバーモデルとはいえ、悪路や雪道の走破性にもぬかりはない。
CX-30の特筆すべきハイライトが、フル・コネクティビリティを初採用したこと。これはトヨタに次ぐもので、KDDIのSIMを全グレードに標準装備(要契約で開通)。マツダエマージェンシーコール=SOSコール(エアバッグ展開時、追突事故時には自動通報、任意の通報もOK)、マツダアドバイスコール=オペレーターサービスが、3年間無料で利用できる。さらにスマホのMy Mazdaアプリを利用することで、ドアロックのし忘れや、ハザードランプの付け忘れなどを、たとえ地球の裏側からでも、スマホの通信が可能な限り、遠隔操作できるのだから便利だ。なお、スマホとの連動で最大11項目ものサービスが利用できるという。ぐるなびや食べログのデータ(MAP)をCX-30のナビに転送することも可能だ。
パッケージ的にはマツダ3より全長、ホイールベースともに短いこともあり、CX-5よりCX-3に近いものの、後席の居住スペースは身長172cmの筆者のドライビングポジション背後で、頭上に120mm、ひざまわりに120mmのスペースを確保。決して広々とはしていないが、CX-3の同105mm、90mmより余裕がある(CX-5は同155mm、190mm)。CX-3に装備されない後席エアコン吹き出し口も完備し、大柄な人でなければ、窮屈感は感じずに済み、空調環境も文句なしのはずである。
ラゲッジスペースは開口部地上高730mm、開口部段差100mm。フロア奥行き890mm、フロア幅1000mmと十二分(CX-3は同780、1000mm)。CX-5に対して約30リットル少ないだけという容量を確保している。開口部に段差があるのが、重い荷物の出し入れ、大型犬などペットの乗降時に不利だが、開口部段差を小さくするボード(純正アクセサリー)を用意してくれる可能性もあるという。
マツダ3よりも重いのに速く感じる!
さて、最初に試乗したのがスカイアクティブD1.8搭載のXD Lパッケージ。マツダ3から採用した腰骨を立て、背骨のS字カーブに自然に添わせる最新設計の前席のかけ心地は、Lパッケージの本革シート×体重65kgの筆者だと、腰骨と背中のフィット感は見事なものの、本革表皮ならではの硬めの張りで、新骨格シートの売りである、お尻を沈み込ませることで得られる、体重でのサポート性は希薄。ファブリックシートのほうが、ふんわりとお尻が沈み込み、ソファ感覚の心地良いかけ心地と、それが可能にする自然なサポート性による、頭部、上半身の揺すられ感の少なさという点で、個人的には好みである。
前席で印象的なのが、フロントドアのショルダーラインの高さ。おかげで、やや沈み込んだ着座感になるのだが、これが安心感、守られ感に直結。実際のボディサイズ以上のクルマに乗っているような感覚がある。ちょっと気になったのは、エアコンの内気循環モードのスイッチ。液晶画面には表示があるのだが、棚形状の横並びスイッチに表示なし。知ってしまえば押せるが、知らないと探してしまう。液晶画面同様の表示を望みたい(開発陣に注文済み)。また、横ワイド画面のナビゲーションディスプレーも、今どきとしては小さく、スマホとの連動も可能ゆえ、もっと上下方向に広い画面が欲しいところである。
スカイアクティブDユニットは、アイドリング時のみディーゼルっぽい音と振動を伝えるものの、走りだせば「あれ、ガソリン車に乗っているんだっけ」と思わせるほど、全域でトルキーにして、スムースかつ静かなエンジンフィールを伝えてくれる。中高回転に至る滑らかな回転上昇感、重厚・濃厚な回転フィールもあって、ほかのマツダ車同様、ガソリン車のスカイアクティブGよりも上級感、高級感あるドライブフィールを味わわせてくれるのだ。
コンパクトな、日本の路上にジャストなサイズ、最小回転半径5.3mの小回り性の良さもあって、とにかく街なか、狭い裏道、高速道路、駐車を含め、扱いやすさ、走りやすさは、クロスオーバーSUVとして抜群と言っていい。
動力性能は、ズハリ、同パワーユニットを搭載しながら、より軽量なマツダ3よりも“加速感”で上回る印象だった。マツダ3に対して、6速ATの最終減速比のみ、車重増と大径タイヤを履いているぶん、加速方向寄りに変更しているのだが、むしろそう感じさせるのは、ここだけの話、排気系の制御がマツダ3よりも新しく、トルクカーブがよりフラット(棚がない)になっているからと推測できる。
乗り心地、車内の静粛性は、いきなりクラストップレベルだ。とにかく18インチという大径タイヤを履いていながら、荒れた路面、段差越えなどの走行でも、乗り心地はじつにマイルドでしなやか。それでいてフラットな車体姿勢を貫き通すのだから、終始、快適で疲れない。
CX-30にはさまざまなシーンでクルマの動きをスムースにし、クルマ酔い防止効果さえあるGVC(G-ベクタリングコントロール)、および、新たにブレーキによる車両姿勢安定化制御(直接ヨーモーメント制御)を加えて進化したGVC Plusを採用。直進時に無意識のうちに行っているハンドル修正の低減から、カーブや高速レーンチェンジでの水平感覚極まる車体制御、安定感極まるフットワークに威力を発揮する。
しかも、ステアリングをほんの少し切っただけでノーズはごく自然かつリニアに向きを変えてくれるのだから、これまた運転のしやすさ、安心感に直結。その制御が過敏でなく、ルーズでもない絶妙なさじ加減が、マツダらしい人馬一体感あるドライブフィールを気持ち良く強調してくれるのだ。
一方、スカイアクティブG2.0のガソリンモデルの走りは、より静かで軽快かつ、一段とすっきりとしたドライブフィールを示す。スカイアクティブD搭載車に対して車重が軽く、クラストップレベルのエンジンのスムースさがそう感じさせる主要因だが、スカイアクティブD搭載車同様、車重がマツダ3より重いにもかかわらず、ずっと気持ち良く、“加速感”で上まわるのだから不思議。6速ATの最終減速比を変更したことで、よりトルクに乗った加速が可能になったのが、その理由かもしれない。
無論、先進運転支援機能も充実。自転車を検知する自動ブレーキのほか、渋滞追従型ACC、レーンキープアシスト、ブラインドスポットモニタリング、後退時左右接近物ブレーキサポートなどを用意。オプションで360度ビューモニターも選択可能だ。
なお、横浜周辺の市街地40%、首都高60%走行での実燃費は、XD Lパッケージが17.6km/L、20S Lパッケージが12.5km/Lだった。オススメはほかのマツダ車同様、スカイアクティブD搭載のクリーンディーゼルモデル。そのファブリックシートの上級仕様となるXD PROACTIVE Touring Selectionをベストグレードとしたい。
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