■いよいよEVが本格普及するか?
2021年12月にトヨタが今後のEV戦略を発表したり、また輸入車メーカーもBEV(バッテリーEV)のラインナップを拡充するなど、いよいよEVの普及が本格化する気配がしてきました。
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しかし電力だけで動くEVは、現状では冬の長距離ドライブがかなり苦手だといいます。確かに寒い時期はバッテリーの消耗が激しいといわれていますが、実際はどうなのか気になります。
そこで、欧州メーカーのBEVに乗っているオーナーに、冬の高速道路におけるBEVの実態について聞いてみました。
トヨタの豊田章男社長は、「2030年に向けたEV(BEV)戦略」の説明会で、2030年までにBEVの世界年間販売目標を350万台に、レクサスは2035年までにすべてのモデルをBEVとする新戦略を発表。
日本のシェアを47.7%(2021年)も占めるメーカーがEV戦略をここまで推し進めるとなれば、ほかのメーカーも追随せざるを得ない状況になります。
現在はガソリンエンジン車やハイブリッド車に乗っている人も、次にクルマを買うときはBEVになる可能性が高くなったといえそうです。
現在EVはどんな種類があるのかを改めて整理してみます。
まず「HEV(ハイブリッド車)」と「PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)」ですが、これらはガソリンエンジンとモーターを組み合わせたパワーユニットを搭載。
HEVの燃料はガソリンですが、最近ではエンジンを発電用と割り切った「シリーズ式ハイブリッド」を採用するケースが増えています。
さらにPHEVは、ガソリンエンジンに加えて外部電源からの充電を可能にしており、よりピュアなEVに近いモデルといえます。
一方で今後急速に車種が増えそうなのが、BEVです。100%電力のみということで「ピュアEV」とも呼ばれています。
もうひとつ「FCEV/FCV(燃料電池車)」という、ガソリンに代わる燃料(水素など)で発電するEVがあります。
多くの人がイメージするEVは、外部電源から車載バッテリーに充電して走行するBEVを指しています。
馴染み深いところでは日産「リーフ」やマツダ「MX-30」、ホンダ「ホンダe」などが該当します。
そして輸入車メーカーもBEVをラインナップに加えており、メルセデス・ベンツやBMW、アウディ、プジョー、シトロエン、ボルボなどもBEVの販売を開始。また知名度も高くなったテスラはBEV専門メーカーです。
一方でBEVの電力補充に欠かせない充電スポットは、全国に1万8270か所(2020年3月ゼンリン調べ)。逆にガソリンスタンド(GS)は減少傾向で、総数でいえば現在のGSの約6割程度までBEV用の充電スポットが増えた計算になります。
ただし1か所の充電スポットには急速充電器、または普通充電器が1基か2基しか設置されていないことも多く、充電には最低30分程度はかかることを考えると、まだまだ足りないというのが実情のようです。
高速道路ではたいていのSA・PAに充電器がありますし、一般道ならBEVを販売する自動車メーカーのディーラーや商業施設、コンビニエンスストアに設置されていることもあります。
しかし、自動車ディーラーに関して、日産以外のディーラーは店舗の定休日に充電器を使用できないケースが多いといい、利用可能な時間を確認する必要があるでしょう。
■24時間365日充電器が開放されている日産ディーラーは救世主!?
充電スポットの数や場所が、BEVオーナーにとっては死活問題といえそうです。
搭載されるバッテリーは外気温の影響を受けやすく、冬など寒い時期は航続距離が短くなることがあります。
たとえば高速が大渋滞し、さらに雪などの悪天候も重なり冷え込むと、「電欠」という最悪の事態を招く可能性もあるというのですが、実際はどうなのでしょうか。
最初に断っておきたいのですが、「BEVは使えない」といいたいのではなく、むしろその逆です。今後BEVが普及していくことを想定して、その特徴や傾向、航続距離を伸ばすための対策法などをBEVオーナーの実体験をもとに検証してみます。
今回BEVでの高速道路体験を赤裸々に話してくれたのは、都内在住のMさん(40代・男性)。
昔から輸入車好きだったことから輸入車メーカーのBEVを購入。航続距離はフル充電で400km前後(WLTCモード)というスペックで、年末に高速道路を利用して帰省したそうです。
「前日は自宅の家庭用電源から充電しておき、出発時に表示された航続可能距離は300km弱でした。片道200kmなのでこれなら充電なしでいけると期待をしていました。
当日は外気温が低かったので、AC(ヒーター)も作動させていたのですが、これが良くなかったのか思いのほか電力を消費してしまいました。
10km程度走行した時点で航続可能距離が20km以上も減っていて、すでにこの時点で軽くドキドキしていました」
もともとバッテリーは、温度の低下によって性能が悪化するといわれています。またBEVの場合、AC使用はかなりの電力を消費することが早くから指摘されており、シートヒーターやステアリングヒーターなどを標準装備するBEVが多いのもエアコンの使用を減らし電力消費を抑える効果を狙ったものだといわれています。
ちなみにBEVには、電気式ストーブのような方式の「PTCヒーター」と、家庭用エアコンのような構造の「ヒートポンプ式」があります。
車種によっては両方搭載するものもあれば、PTCヒーターのみでも大容量バッテリー搭載でカバーするタイプがあるようです。
ガソリンエンジンは、燃料を燃やすときに出る熱を再利用するため電力はほとんど使用されません。従って、寒冷地では(エンジンの排熱を上手に活用する)HEVやPHEVのほうが適しているといえるかもしれません。
「エアコンを使用した状態で走行していると、バッテリー残量はみるみる減っていきます。残量50%ではまだ次のSAを目指せますが、30%前後になると(それまでの電費を考慮すると)かなり焦りが出てくるのが、ガソリンエンジン車とは大きく違うところです」(BEVオーナー Mさん)
またMさんが嘆いていたのが、SA・PAにある急速充電器の設置場所です。
レストランや売店が入る施設よりかなり離れた場所に充電器が設置されることが多く、悪天候や寒い季節では建物に駆け込むまでの徒歩移動が地味に体に堪えるのだとか。
また設置されていても最大2台程度しかなく、充電は1台で30分程度かかるため、ほかのBEVが充電中の場合は待ち時間+充電時間で1時間近くタイムロスすることもあるそうです。
「BEVで長距離移動する場合、事前に目的地までの道中で充電スポットや充電タイミングを見込んだスケジュールを立てる必要があります。どこで充電するか、また充電中の時間の配分などBEVに合わせる旅程となるのは仕方ない部分です。
たいていの急速充電器は電圧が400V、電流が70A程度です。30分の充電で航続可能距離が100km程度回復する計算です。
ただこれまでの経験上、エアコンを使用していると表示される航続可能距離の6、7割程度しか走れないので、時間と走行距離のバランスは悪いといわざるをえない部分もあります」(BEVオーナー Mさん)
さらに大変なのが、すべてのSA・PAに急速充電器が設置されていないことです。航続距離が50kmを下回ると「電欠」への恐怖が迫ってくるといいます。
「充電器があるSA・PAまでたどり着けないとなると、いったん高速を降りて、近隣の充電スポットを探さなければいけません。
BEVを取り扱うメーカーのディーラーなら充電器は設置されていますが、定休日や年末年始、お盆などでお店が休みだと充電器も使えないケースがほとんどです。
その点、日産のディーラーは定休日でも充電器を開放してくれているのは本当に助かります。
バッテリー残量が減ってきたら、まずは近くの日産ディーラーを目指すのがBEV乗りにとって1番の安全策になっています」(BEVオーナー Mさん)
BEVの充電にかかる費用はどれくらいなのでしょうか。
全国で充電サービスを展開している「e-Mobility Power」の会員だと、最初の5分が275円、その後は55円/分で、30分充電すると単純試算で1650円かかる計算となります。
一方、冬の寒い時期にエアコンを使用しながら高速道路を走行すると、1回の充電量では100km持たないケースが多いとMさんはいいます。
通常だとガソリンエンジン車よりコストパフォーマンスが良いはずのBEVですが、冬に限ってはかなり劣勢になってしまうようです。
ただし、下り坂が続くような道などで「回生ブレーキ」を上手に使う、またはエアコン使用をシートヒーターなどで代用することで、もう少し電費は稼げる可能性があります。
「金額以上に辛いのが、充電にかかる時間的な損失です。HEVなら難なく走れてしまう航続距離をBEVの場合は何度も充電しなければいけません。
また1回の急速充電で最低30分以上はタイムロスしてしまうのも辛いです。充電スポットもまだまだ十分とはいえないので、数も充電量ももう少し向上してほしいです」(BEVオーナー Mさん)
※ ※ ※
外気温によってBEVのバッテリー性能は大きく左右されるという弱点を露呈したカタチになってしまいましたが、これが現在のBEVをめぐる実情ともいえます。
現状のBEVは1回のフル充電で走行できる距離内なら大きなメリットとなりますが、遠方への長距離移動を頻繁にする人には、既存のHEVやPHEVのほうが向いているということになりそうです。
まだ誕生して歴史の浅いBEVだけに、今後の普及次第では大幅な性能向上や充電インフラの充実が期待できます。
この電費問題がクリアできれば、BEVはもっと身近な存在になるかもしれません。
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みんなのコメント
どうすんのコレ
EVの場合は、更にバッテリー経年性能劣化もあるから経年減算しないと駄目。
地方の積雪地帯なら1/2、山岳地帯なら1/3程度と考えた方が良いかもね。
当地域では『使えない』の一言です。