東京モーターショーからジャパンモビリティショーへとモデルチェンジした昨年に続き、今年はビジネスパートのみを拡大した「Japan Mobility Show Bizweek 2024」が開催された。
国内最大級のデジタルイノベーションの総合展「CEATEC」と併催され、自動車という枠を超えたモビリティの世界はさまざまな分野と繋がり、その可能性を広げていくことを予感させた。
人との繋がりがこれからのクルマを創る 次世代ジャーナリストを探せvol.9 僕たちは、これからクルマとどう向き合っていけばいいのか
スタートアップや大企業が手を取り合うモビリティショー
まとめ・徳田悠眞 写真・淵本智信/多田裕彦(人物)スタートアップと事業会社のビジネスを創発するイベントとして開催された「Japan Mobility Show Bizweek 2024」昨年の第1回から、どんな変化があったのだろうか。総合プロデューサーの橋本健彦氏を迎えて、岡崎五朗がショーを振り返る。
マッチングプラットフォーム「Meet-up Box」
岡崎 今回はジャパンモビリティショービズウィーク2024(以下「JMS 2024」)の総合プロデューサーを務めた橋本健彦さんにお話を伺います。まずはじめに、去年行われたジャパンモビリティショー2023(以下「JMS 2023」)との違いを説明していただけますか。
橋本 モーターショーからモビリティショーへと新たに生まれ変わった昨年の「JMS 2023」は多くの方々に楽しんでいただいたショーイベントでした。一方、「JMS 2024」はスタートアップとマッチングができるコーナーやビジネスパーソン向けに特化したトークイベントなど、昨年のモビリティショーからビジネスパートのみを拡大しました。モビリティ産業の拡張という意味では、活発な議論を行える環境が常にあるべきではないかという思いのもと、ビジネスパートに特化した「JMS 2024」が開催されたという経緯です。
岡崎 昨年の「JMS 2023」はとても華やかなモーターショーだったと思っているんですが、ビジネスのマッチングも大きな柱のひとつだった。自動車産業が100年に一度の大変革時代にあり、従来は思いつかなかったようなアイデアや技術を取り込みながらもっと強くなっていく必要がある。そんな中、スタートアップと企業のマッチングで知恵を出し合う場として好評だったと思います。知り合いのスタートアップも昨年のモビリティショーに出展して本当に良かったとしみじみ言うほどビジネスチャンスが広がったらしいんですが、今回の「JMS 2024」ではさらなる工夫を織り込んだそうですね。
橋本 はい。ショーの期間だけでなく、ずっと繋がり続けられる「Meet-up Box」というマッチングプラットフォームを開発しました。システムに登録したスタートアップと事業会社の双方が、自分たちの強みや弱みを相手に見せながら、常日頃からやり取りできるようになりました。会期1ヵ月前からシステムを立ち上げており、この間にスタートアップと事業会社がコンタクトを取ったうえで「JMS 2024」に参加していただいたので、議論が活発に行われた印象です。
岡崎 ビックリしたのは、ミーティングスペースが会場のど真ん中にあって、数多く並んだテーブルがほぼ満席だったこと。あの場で商談というかお見合いというか、そういうものが行われているように見受けられたんですが、実際どうだったんですか?
橋本 会場の中央に36卓のテーブルを並べてマッチングスペースを作るのは本当にチャレンジングでした。しかし、蓋を開けてみると事前予約がいっぱいで、会期中は列ができるような状況でした。ブースの出展数自体はスタートアップと企業を合わせて約200社ですが、システムに登録された企業は1,000社にのぼり、今回の取り組みでマッチングした数は850を数えました。
既存企業に与える影響
岡崎 あの場でマッチングした後はどういうことが起こっていくんですか。
橋本 具体的な協業の仕方を掘り下げていらっしゃるようです。技術提携・資本提携・事業提携など様々な形態がある中、継続商談の方々はNDA(秘密保持契約)を結びながらお互いのメリットになるような組み方を模索している段階だと思います。
岡崎 スタートアップって規模が小さくて資金力もないから、大きなことをするにはパートナーが欲しい。そんな中、僕の知り合いに聞くと、大企業にアクセスするのが結構大変だって言うんですよ。「君、誰?」みたいなところから始まって、「どんなことをやってるの? そうか。そういう案件は違う部署だから向こう行って」と、たらい回しされるとか。日本の企業自体にスタートアップの力を借りようといったマインドが低かったんじゃないかと思っているんですけど、自動車工業会がこういう場をセットすることによって、大企業側のマインドも変わってきたんじゃないですか?
橋本 その通りです。1,000社が集った状況からどういう力学が働くかというと、大企業側も負けていられないという競争意欲が芽生えてくる。スタートアップもリソースがそれほど多くないので、他企業に取られてしまうとアクセスできなくなっちゃうんです。なので、躍起になってスタートアップの方々にオファーをし、話し合うという流れが作られています。
岡崎 企業側はマッチングするにあたって、こういう技術が欲しいとか、こういう領域のアイデアが欲しいという点を熟考して登録しなければいけない。それがすごく重要だと思っていて、弱点の洗い出しをするいい機会にもなったんじゃないかと思うんです。
橋本 そうなんです。例えば、大企業が、オファーしたスタートアップに断られるケースもあるわけです。その時に、自分たちの技術あるいはアセットが魅力的に見えていないんだなと気づかされる。自社の内側を見直し、オファーの仕方や強みの見せ方を変えることによって、マッチングが増えてきているかなと思います。
スタートアップにもたらすメリット
岡崎 スタートアップって人も資金も豊富には無い。そんな彼らが何を希望するかと言うと、まず自分たちのサービスを使ってもらったり、物を買ってもらったりすることなんですよね。試してよかったらもっと先に行きましょう、みたいな。海外の例だと、BMWはスタートアップに対して5万ドルまでの案件を年に30件ぐらいやっているらしいんです。これだと取締役会までいかずに事業部長クラスが決済できる。日本でもそれくらいフットワーク軽く、スタートアップと付き合うメンタルが求められている感じがするんです。
橋本 その話にはものすごい説得力がありますね。1つ目はスピード感。スタートアップの方が早くて短期決戦ですよね。2つ目はバジェット。収入が立つことはスタートアップにとって大きなメリットです。3つ目は実績。大企業に買ってもらったことを他企業にアピールできる。その中で、BMWが素晴らしいと感じた点はPDCA(*)を回せること。1つのスタートアップと組むだけではダメだったけど、他と組み合わせたらよりよい価値創造にできるんじゃないか、というようなヒントがそこに眠っているはずなんですよね。また、目的や目標を達成できなかったとしてもチューニングできると思うんです。投資を無駄にさせないやり方はいくらでもあるはずです。それが定着すれば市場や産業がさらに活性化するんじゃないかと思います。
岡崎 そうですね。スピード感のあるスタートアップときっちりやる大企業の良さをミックスできれば、日本はもっと強くなっていくんだろうなと思います。
2025年で更なる進化を目指す
岡崎 「JMS 2024」に続いて来年も橋本さんが総合プロデューサーを務めると聞きました。自動車ショーとビズの両方を進化させていくんですか。
橋本 はい。ともに進化させていきますし、「JMS 2024」のマッチングで作られた企業をステージもしくはブースにお呼びして、成功体験や失敗談を周りの方々に共有していく場にしたいと考えています。またブースには、目標や協業したい相手を一目見て分かる工夫を施したいんです。さらに、製造物として大きなプロダクトをお持ちの方々がきちんと展示できるスペースの確保などにも配慮したいですね。
岡崎 自動車工業会がスタートアップに期待をかけているし、応援しようという姿勢が現れているなと感じます。会場ですごく面白かったのが、トヨタのEV開発の偉い人が何気なく歩いているんですよ。一般の方かなと思ったら、ああ、トヨタの人だって。資料をいっぱい抱えている姿を見て、「大発見とかありましたか?」って聞いたら、「実はたくさんあるんですよ」と。大企業の偉い方がこういうところを訪れて、色んなブースや会社の人と話すと視野が広がるらしく、そういう場にもなっているんだなと思いました。また、「CEATEC 2024(**)」と併催したのも大きかったんじゃないですか。
橋本 そうですね。モビリティ産業の隣接領域にある存在と併催できたのは大きいことだと思います。モビリティ関連企業やスタートアップが電気通信産業を見ることによって、自分たちのアセットにこういった活用の仕方があるんじゃないかと気付かされる。逆に、「CEATEC 2024」に出展する企業がモビリティショーを視察したら、自分たちの商品や技術がこんなところに使えるんじゃないかという互いのチャンスやヒントの発見に繋がっているのでは無いでしょうか。
岡崎 異業種交流という意味において、スタートアップだけじゃなく企業にとっても「JMS 2024」はとても意義のある内容でしたね。今回は「CEATEC 2024」がメインを張ったわけですが、今度はどちらがメインというのでなく、一緒にやっていくコラボレーションの可能性も出てきましたね。
橋本 出てきました。現に「CEATEC 2024」にブース出展されている方が、「JMS 2024」の「Meet-up Box」に登録されているケースもあるんです。「JMS 2025」の開催に向けて、双方が手を取り合ってビジネスを作り上げたら、新たな光というか違った世界を見せられるんじゃないかなと感じてます。
岡崎 「JMS 2025」の日程はすでに発表済みで来年10月末ですよね。おそらく、自動車ショーならではの華やかな世界も楽しませてくれるでしょう。併催で生まれたコラボレーションやスタートアップとの新しい試みがどうなるのか楽しみです。期待していますね!
*PDCA=Plan-Do-Check-Act cycle:Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという概念。
**CEATEC=Combined Exhibition of Advanced Technologies:あらゆる産業に必要とされる国内最大級のデジタルイノベーションの総合展。
橋本健彦/Takehiko Hashimoto
1981年生まれ。2005年(株)電通入社。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、ICT系協賛企業の事業開発などに携わる。Japan Mobility Show 2023企画統括プロデューサーに続き、今回のショーでは総合プロデューサーを務める。現在は(株)trybeat取締役社長。
岡崎五朗/Goro Okazaki
1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。本誌『クルマでいきたい』は2009年より続く最長連載となっている。
徳田悠眞/Yuma Tokuda
1992年生まれ。自身のYouTubeチャンネル>「GOOD CAR LIFE Channel/ゼミッタ」にてニューモデル紹介や愛車レポートを行うほか、Web媒体でコラムを執筆。現在はランクル300やシビックタイプRなど最新モデル9台を所有。気になる車種は買って評価を行う。目指すは「YouTuberと自動車ジャーナリストのハイブリッド型」。
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