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ちょうどいい過激さとは? BMW M550i試乗記

掲載 更新 2
ちょうどいい過激さとは? BMW M550i試乗記

BMWのミドルクラス「5シリーズ」には、M社が手がけたエンジンを搭載する「M550i」が設定されている。カタログモデルとして販売されているドイツで、塩見智が試乗した。

上品さが魅力

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オーストリア・ザルツブルグでの取材が終わったあと、まっすぐ帰国せずに電車で1時間ちょっとの隣国ドイツのミュンヘンを訪れた。目的はふたつ。ひとつは繁華街のマリエン広場にあるヘッツェネッカーで黒い艶消しのリモワの「ハイブリッドMを」買うこと。もうひとつは日本導入前のBMW 「M550i」を借りて試乗することだ。新型コロナウイルス感染症がまん延し、世の中がこんな騒ぎになってしまう前の2月半ば、ほんの2~3カ月前にはこうした試乗が出来た。

土曜日の夕方、ミュンヘン郊外にあるBMW・AGのプレス&フリートサービスを訪ね、BMWジャパン経由で予約していたM550i xDriveのキーを受け取る。暗いガレージにずらり並べられた広報車。向けるべき方向がわからずリモコンキーを高く掲げてスイッチを押すと、すぐ近くにあったシャンパンクオーツのM550iのハザードランプが光った。

発売から3年近くたち、見た目の新鮮味はやや薄れた5シリーズ。現行型は、キドニーグリルが巨大化し、左右のヘッドランプとくっついたものの、最新のいくつかのモデルのようにグリル内のルーバーが立体的に盛り上がった“筋骨隆々タイプ”ではなく、上品さが保たれている。

キドニーグリルの縁取りやドアミラーカバーなどがセリウムグレーに塗られ、シャンパンクオーツのボディカラーと相まって大人っぽい印象だ。最新のデコラティブなBMWも悪くないが、こういう落ち着いたモデルも残してほしい。

今回、試乗する車種こそ決めていたが、試乗ルートを決めていなかった。それはクルマを借りる前日に否応なく決まった。ザルツブルグのホテルにシャツを忘れたことが判明したのだ。忘れ物として保管してもらっていることは電話で確認出来た。取りに帰ろう。目的地まで約160km。そのほとんどはアウトバーンだから途中で撮影しても半日で終わる仕事だ。

上品なV8エンジン

翌朝、苦労してインフォテインメントシステムの言語をドイツ語から英語に変更して出発。日曜朝のアウトバーン8号線はそこそこ空いていた。BMWに限らず、この時期のドイツで広報車を借りるとウインタータイヤが装着されている。M550iは、ミシュランのパイロットアルピンを装着。120~130km/hで巡航する限り、ドライ路面ではサマータイヤと変わらぬ静粛性が確保されていた。グニャリとした感触など微塵もなく、ステアリング操作に対する反応遅れもない。

2017年にモデルチェンジした時点では、現行型5シリーズのノーマルモデルにはV型8気筒エンジンを搭載したモデルはなかった。その後2019年夏に、4.4リッターV型8気筒ガソリンターボを搭載したM550iが追加された。M550iのMは、ノーマルモデルと、M5をはじめとする伝統的なスペシャルモデルの中間(より若干ノーマル寄り)に位置づけられるMパフォーマンスモデルであることを意味する。

M550iに載る4.4リッターV型8気筒ガソリンターボエンジンは、現行型のBMWでいうとX5  M50iや750iなどに搭載されているN63B44D型。最近のハイパフォーマンスV型8気筒エンジンとしては一般的な、エキマニやターボチャージャーをVバンクの内側に配置したいわゆる「Hot  V」というタイプ。M550iの場合、最高出力531ps、最大トルク750Nmを発揮する。

しかしこの“ハイパワーV8”は、ハイパワーであることを感じさせない。刺激の塊のようなスペックを備え、実際に加速力は凄まじいが、それを洗練で包んでなるべく隠そうとしているように思えた。なめらかな回転フィールで知られるBMW自慢の直列6気筒エンジンに輪をかけてなめらか。アクセルペダルを踏む度にうっとりさせられる。高い回転数に達してもエンジン音の車内への侵入はわずかで、アウトバーンの巡航中に聞こえるのはほぼ風切り音だけ。

もちろん、アクセルペダルを深く踏み込めば、120km/hからでも140km/hからでも背中を蹴飛ばされるような加速を味わえる。踏み続ければあっさり200km/h以上に達し、前さえ開けていればその速度で巡航できる。アウトバーンは直線ないしは、非常に緩やかなカーブの区間しか速度無制限区間になっていないため、200km/hで巡航しても緊張感が高まるようなことはない。速度を上げれば上げるほど直進安定性が増すドイツ車の昔ながらの美点がしっかり備わっている。今回の試乗ではxDrive(4WD)をことさらに意識させられる状況はなかったが、直進安定性の高さにひと役買っているのは間違いない。

日本導入は当面先

アウトバーンの追い越し車線では後続車のペースを乱すことなくだれもが即座に道を譲ると言われる。僕もそう思っていたが、最近は昔ほど譲ってくれない印象がある。前の前にもクルマがいるなら仕方ないが、そうでない場合にも譲ってくれない場面が何度があった。もちろん日本の東名、や新東名みたく、居直るようにいつまでも居座るドライバーはいないものの、かつてのように追いつく前によけてくれるような感じでもなくなった。

それにしてもM550iにはお手本のような乗り心地が備わっている。ダンピング特性をコンフォートとスポーツから選べるが、コンフォートはもちろん、スポーツにしても当たりは柔らかい。それでいてコンフォートでアウトバーンをかっ飛ばしてもソフトすぎて頼りないわけではない。じゃコンフォートだけでいいじゃん! と、感じたが、好みの特性を選べるのが重要なのだろう。

素直なハンドリングはダイナミクス面での性能のみならず快適性にも貢献している。特に60km/h未満で逆位相に、60km/h以上で同位相に切れる後輪のおかげで小まわりがきくだけでなく、超高速走行時のレーンチェンジでの安心感が、誰でもわかるほどに高まっている。思い通りに走らせられる快適さというものもあると教えてくれる。

結局ザルツブルグまで、途中1度のトイレ休憩を挟んでも1時間半程度で到着した。ミュンヘン~ザルツブルグの8号線(オーストリアに入ってからはA1号線)は、多くの区間が速度無制限で、日本では体験出来ない速度域での挙動を確かめられた。同時に感じたのは、やはり今も昔もドイツ車は超高速走行をしてこそ真価を発揮するなという点だ。

ドイツ車に乗る人、購入を検討している人には、だからこそぜひドイツ車で、できれば日本で乗っている/検討しているのとおなじ車種で、アウトバーンを走行してみてほしい。超高速域でのスタビリティの高さを実感することは、おなじ速度で走行できないとはいえ、日本で使うときの信頼感、安心感、愛着につながると思う。ま、それもこれもまた気軽に海外渡航できるようになってからの話であるが。

実はM550iは2019年末に日本へも導入された。しかし50台限定だった。この限定車の人気が高かったのだろう、BMWジャパンは2020年のどこかでM550iをカタログモデルとして導入するという。ただしコロナ騒動で自動車メーカーの新車導入スケジュールは大幅に変わったため、2020年のうちにM550iが入るかどうかはわからなくなったという。とはいえ、遅れても必ず入ってくるはずだ。限定車は1319万円だったから、カタログモデルの価格もそれに近いだろう。昔ながらのBMWサルーンの抑制的なスタイリングやキビキビし過ぎない乗り味を求める方々にM550iは向いていると思う。

おかげさまでシャツはちゃんと受け取ることができた。記念にザルツブルグ城をバックにクルマを撮影し、ミュンヘンへ舞い戻った。次にこんな気ままな海外取材の機会が得られるのはいつになるだろうか。

文・塩見智

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みんなのコメント

2件
  • やっぱり最高速度制限を厳しくするとマナーが悪くなるのかねぇ
  • amgだと、この類(530ps)はamgファミリーだけど、あえて純なMでなく、MとスタンダードのちゅうかんであるMパフォーマンスで落としてるところが、bmwらしい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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