ユーザーニーズを考えた結果
マツダが、2012年の新世代商品群第1弾となるCX-5でディーゼル車を販売した理由は次のとおりだ。原油を精製した際にガソリンと軽油は同時に製造されるので、国内での燃料消費がガソリンに偏っていると、余った軽油を海外へ売るなど輸送の際に余計な二酸化炭素(CO2)を排出することになる。そのため、地産地消と言われるように、生産された本拠地で消費するのがもっとも環境負荷の少ない消費につながるという考えによる。これもひとつの環境対策だ。
「ハイブリッド・ターボ・ディーゼル」同じようなカタログ燃費の場合のパワートレインの選び方とは
1999年(平成11年)に東京都が『ディーゼル車NO作戦』を展開し、排ガス対策が未熟な乗用ディーゼル車の販売が行われなくなった。もちろん、トラック/バスへの排ガス対策も厳しく求められた。その結果、首都圏のスモッグが解消されたのである。
一方で、ディーゼル車は公害の元という印象が強まり、多くの消費者も好まなくなった。しかし、ディーゼルエンジンがガソリンエンジンに比べ燃費に優れることは知られるところであり、ハイブリッド車を持たないマツダは、SKYACTIV技術の開発により、ガソリンエンジンの燃費はより良く、ディーゼルエンジンは排ガス浄化を推進し、先のとおり初代CX-5で両エンジン搭載車を発売したのである。
さらに、2015年発売のCX-3や、17年発売のCX-8では、クリーンディーゼル車のみの販売とした。したがって、ディーゼルのマツダという印象が強まったかもしれない。もともと燃費性能に優れ、低速トルクが大きいことにより発進加速が楽なディーゼル車人気が高まった。
一方で、日常的なクルマの利用では、振動騒音の少ないガソリンエンジン車のほうが快適であり、ことにSKYACTIV-Gと呼ばれるガソリンエンジンは、レギュラーガソリンで十分な出力を確保する開発もなされたことから、年間走行距離が短い利用者や、高速道路などを使った長距離ドライブをあまりしない利用者には、ガソリンエンジンの快適さが好まれた。
優劣ではなく、上下でもなく、ガソリンエンジンの快適さや回したときの爽快さはディーゼルエンジンより勝っており、一方で、ディーゼルエンジンの力強さは追い越し加速や高速巡行でラクな運転をもたらす。クルマの利用の仕方によってガソリンかディーゼルかの選択肢があってよく、消費者が選択できることは買い物の楽しさのひとつでもある。
したがって今日もマツダがガソリンエンジン車もディーゼルエンジン車も併売するのは当然であり、CX-3もあとからガソリンエンジン車を追加した。乗り比べると、ガソリンエンジン車のほうがやはり快適性に優れる。
年間の走行距離が1万kmほどの人であればガソリンエンジンで十分であり、2~3万kmを走る人ならより燃費が良かったり長距離移動で楽だったりするディーゼルエンジンを選んでもいいだろう。
ディーゼルのマツダがガソリンエンジンをなくさないのではなく、どちらも併売するのが消費者にとって好ましい品揃えである。
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