「信号機のない横断歩道」は、もっと安全に渡れるように改善できないだろうか。
横断歩道においては、道路交通法第38条に基づき、「歩行者優先」が明確に定められている。車両は、歩行者や自転車が横断している場合、横断歩道の手前で一時停止しなければならない。
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このルールに違反した場合、2点の違反点数が加算され、普通車の場合は9000円の反則金が科される。さらに悪質な場合には、懲役3か月以下、または5万円以下の罰金が科せられる。それにも関わらず、多くの車両が平然と横断歩道を通過しているのが現状だ。
日本自動車連盟(JAF)が毎年実施している「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」の最新データ(2024年11月発表)によると、全国平均で
「53.0%」
の車両が横断歩道で停止し、歩行者に道を譲っているという結果が得られた。この数字は2018年の8.6%から着実に改善してきたものの、依然として約半数の車両が停止しない計算となる。
この状況は、歩行者や自転車にとって大きなフラストレーションとなっている。しかし、それだけではない。横断歩道で本来止まるべき車両が歩行者と衝突する事故も発生している。
筆者の意見
2019年から2023年の間に、自動車と歩行者が横断歩道で衝突した交通死亡事故は、信号機の有無に関わらず全国で1086件発生している。信号機のない横断歩道で車が停止するようにするには、どのような対策が必要だろうか。
前述のJAFの調査結果によると、都道府県別では
・1位:長野県(87.0%)
・2位:石川県(80.9%)
・3位:岐阜県(75.2%)
となっている。これらの県は地理的に近接しているが、その周囲にある富山県は31.6%で最下位となっており、地域別の傾向を把握するのは難しい。また、調査対象は各都道府県2か所ずつの横断歩道であるため、場所によって結果に差が出ることもある。
筆者(古宮宗、フリーライター)が住む神奈川県の平均は58.4%だが、日常的に使用する横断歩道では、何台もの車を見送ることが多い。さらに、日によっては車がすぐに止まることもあり、地域差よりもドライバー
「ひとりひとりの意識」
の問題が大きいと感じている。
もうひとつの課題は、歩行者側の対応に限界があることだ。2021年から「横断するときは、手を上げるなどして運転者に対して横断する意思を明確に伝える」という方針が導入されたが、手を上げても車が止まらない場合が多い。車の方にまっすぐ向いても止まらない車は依然として止まらないのだ。
筆者への反対意見
しかし、地域の影響がある可能性もある。実際、長野県は9年連続で全国1位の結果を達成している。
長野県では子どものころからの交通安全教育が盛んであり、歩行者は手を上げて意思表示、停止した車へのアイコンタクトやお辞儀が奨励されている(『長野放送』2024年11月8日付け)。
また、歩行者の動作が車の停止にどれだけ影響を与えるかについて、NHKが調査を行った(2021年12月17日付)。その結果は次のとおりである。
1.何もしない:4%
2.手をあげる:42%
3.手をあげて目をあわせる:55%
4.手をあげて目をあわせ、一歩踏み出す姿勢で待つ:60%
このデータから、歩行者の行動によって車が停止する確率が大きく変わることが明らかとなった。
信号機設置費用と課題
それでも、歩行者の努力だけで車を100%止めることは難しいといえるだろう。
信号機の設置は最も効果的な方法と考えられるが、交差点1か所あたりの設置費用は最大で約630万円に達する。新規導入に加えて、機器の更新にも多額の費用がかかるため、実現には課題がともなう(『朝日新聞デジタル』2023年3月8日付)。
費用面だけでなく、他にも問題がある。交通量が多い場所に信号機を設置すれば渋滞が発生しやすく、逆に交通量が少ない場所では、信号無視をする歩行者が増え、事故のリスクが高まることがある。
他の施策としては、横断歩道を目立たせて注意を促す方法がある。具体的には、横断歩道の白以外の部分を色で塗りつぶしたり、手前に帯状のペイントを施したりする手法だ。
この方法は2000年代後半、雪で横断歩道が見えにくくなる北海道などで導入され始めた。カラー化前の横断歩道での車と歩行者の接触事故件数は年平均16.3件だったが、着色後は同6.8件に減少したというデータがある(『読売新聞オンライン』2022年10月12日付)。
車の停止率が向上したというデータが全国各地で確認されており、コストもそれほど高くない。
取り締まり強化で停止率上昇
もうひとつ大きな効果が見込まれるのが、取り締まりである。
JAFのデータによると、2023年の三重県の停止率は51.3%だったが、2024年には64.3%に上昇し、14位にランクアップした。
2023年11月には、三重県知事が乗った公用車が歩行者のいる横断歩道で一時停止をせず、県警から青切符を交付された。この出来事は2024年5月に地元紙で大きく報じられ、県民に危機感を与えた可能性がある。
さらに、富山県の例も注目される。2019年には停止率が5.3%で全国ワースト4位だったが、2023年には50.0%で全国20位に改善し、2024年には31.6%で再びワースト1位に戻った。富山県内の横断歩行者妨害に対する検挙数は、
・2019年:1473件
・2020年:3938件
・2021年:5834件
・2022年:4842件
・2023年:2295件
と減少している。
県警は、2023年に停止率が向上した理由として「検挙数の増加が影響した」としており、取り締まり強化の効果があった。しかし、2023年に検挙数が半減したことで、元の状況に戻った可能性も考えられる。
メディアや取り組みの限界と課題
まず、ドライバーに横断歩道での歩行者優先の重要性を徹底的に周知することが重要だ。しかし、どのメディアを使用しても、そのメッセージが全てのドライバーに届くわけではない。
一方で、歩行者自身もドライバーに対してアピールすることが求められるが、これにも限界がある。
最も効果的な対策としては、警察による取り締まりが挙げられるが、人件費や税金がかかり、効果が一時的なものにとどまる可能性もある。
それでも、夜間でも目立つカラー塗装の横断歩道を導入するなどして、歩行者の安全を確保し、車が100%停止する状況を実現することが求められる。
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みんなのコメント
また、歩行者側もスマホ見ながらだと渡る意思が伝わらない。