この記事をまとめると
■スタイリッシュなデザインに惹かれて1993年にシボレー・カマロZ28を購入したジャーナリストの山崎さん
おいビートル! いつまで1速でひっぱるんだよ【愛車の大好きだけどココだけはダメだった点 山本晋也編】
■傾斜の強いフロントウインドウを拭こうにも内側から最前部には手が届かなかった
■その後に入手した5代目コルベットもフロントウインドウの最先端に手が届かなかった
スタイリングに惚れ込んで購入したシボレー・カマロ
それまで、輸入車といえばイタリア車という、生粋のイタリアンスポーツカーマニアだった自分が、突然何かに導かれるかのようにイタリア車の世界から離れたのは、1990年代も半ばを迎えた頃だったと思う。 その直接のきっかけとなったのは、1993年にデビューした第4世代のシボレー・カマロだ。
いまではそれが、のちにピニンファリーナであのエンツォや612スカリエッティを生み出すことになる奥山清行氏の手によるデザインであることは十分にそれを承知しているところだが、発表直後に受けた感想は、前代の直線的なデザインから一転、曲線を基調としたきわめてスタイリッシュなモデルへと変化を遂げたなということのみだった。
とりわけグリルレスのフロントノーズから薄いボンネットライン、傾斜の強いフロントウインドウ、そして流れるようなルーフラインからリヤハッチへと至るアッパーボディのデザインはどうだ。
発売当初に日本に導入されたのは、3.4リッターのV型6気筒OHVエンジンを搭載したスポーツクーペと、あのコルベットにも通じるLT1型、5.7リッターのV型8気筒OHVエンジンを搭載するZ28の2モデル。チョイスするのはもちろん伝統のオプションコードを掲げたZ28以外にはないだろう。Z28ではルーフもブラックにペイントされ、外観はさらにスタイリッシュになる。
というわけで、この第4世代カマロの発売からさほど長い時間を必要とすることもなく、そして後先を考えることもなく、威勢よくディーラーでZ28の注文書にハンコを押す自分がいた。カラーはもちろんイメージカラーとしても使われていたレッド。オプションはたしか何も選択することはなかったと思う。装備の充実ぶりはシボレーにかぎらずアメリカ車の大きな特長だったのだ。
価格は430万円ほど。現行型のカマロがもっともベーシックなモデルでも569万円もすることを考えると。当時のアメリカ車は安かった。ちなみに円高基調の中でZ28は、一時330万円のプライスタグを付けるまでに至っていたのだから。
傾斜しすぎたフロントウインドウには気をつけよう
もちろん自分は、その新車のカマロZ28に大満足していた。走りは先代カマロよりはるかに洗練されたものになっていたし、繰り返すようだがなにしろそのスタイリングが素晴らしい。しかし、そのスタイリングに落とし穴があったことを、納車からしばらくして気づくことになろうとは。
「手が届かん」。
そんなの最初からわかっているだろといわれそうだが、あまりにも傾斜が強く巨大なフロントウインドウは、洗車をしてその内側を磨こうと思っても、その下側まで手が届かないのである。
自分の宝であるカマロZ28。他人に洗車を任せることなどできるわけがないという、このころはいわゆる洗車族だった自分は、毎週末にはせっせと昔バイトをしていたガソリンスタンド仕込みのテクニックを駆使してZ28に磨きをかけていたのだが、フロントウインドウの内側だけはどうしてもうまく汚れを落とすことができなかったのだ。
モップを使うとか、身体を思いきりインパネの上に滑り込ませるとか、いろいろと作戦は考えたものの、いずれも自分が満足できるクオリティには至らないというのが現実だった。落し物もまたしかり。たとえば高速道路の通行券など、何度フロントウインドウの最先端までそれを落としてしまったことか。
1997年には、第5世代として誕生したコルベットを買った。こちらも素晴らしいスポーツカーだったが、唯一の不満はカマロのそれと変わらなかった。
それでもコクピットからはるか遠くに見えるフロントノーズは、スポーツカー乗りとしてひとつの誇りだったし、実際にこの第5世代コルベットの走りは世界に通用するレベルにまで進化を遂げていたことを記憶している。
フロントウインドウが磨きにくくても、インパネからするすると物が落ちるとそれを回収するのが大作業になることも、可愛いといえば可愛い欠点ではないか。自分はいまでもそう思っている。
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