クルマの運転支援システム、標準搭載が当たり前の時代へ
最近発売されたクルマの新型モデルには、そのほとんどに運転支援システムが搭載されています。運転支援システムとは、自動ブレーキや前走車の追従など、ドライバーを手助けする機能全体のことです。
具体的には、人や他車との衝突を回避しようという自動ブレーキ(「衝突被害軽減自動ブレーキ」「プリクラッシュセーフティブレーキ」「AEB」などとも呼ばれる)や、前走車を追従する「アダプティブ・クルーズ・コントロール」(「ACC」とも呼ぶ)、斜め後ろの他車の存在を教えてくれる「リヤビークルモニタリングシステム」(「リヤビークルディテクション」と呼ぶことも)、走行レーンをキープするための「車線逸脱防止」(警報のみの場合もある)などといった、数多くの機能が存在します。
ところが、この運転支援システムは、メーカーや車種ごとに、その性能に大きな差があります。たとえば自動ブレーキでいえば、あるモデルは人もクルマも認識してくれるのに、とあるモデルはクルマだけ。しかも、速度が高くなると働かなくなるなどといったケースもあります。さらに、前走車を追従する機能も、稼働する速度域が異なったり、ステアリング操作のありなしという差もあります。そして、そうした細々とした機能自体を、いくつ備えているのかどうかも、モデルによって異なるのです。
ちなみに、そうした運転支援システムについて横並びで性能を比べるJNCAPの「予防安全性能アセスメント」という評価制度があり、その試験結果を見ると、車種ごとに性能には大きな差があることがわかります。
同じ「機能」で差が出る大きな理由のひとつは「手段」
では、なぜ、そのような差ができてしまうのでしょうか?
理由のひとつは、運転支援システムという技術が、まだ発展途上だから。人やクルマを認識して、ぶつからないように自動でブレーキを作動させるシステムの普及は、ごく最近のことです。その技術は、まだまだ円熟と呼べるものまで磨き上げられていません。
また、いろいろな自動車メーカーが「障害物を認識してブレーキを作動させる」という機能を実現していますが、使っている技術はメーカーごとに異なります。完成したひとつの技術があって、それをみんなで共有しているのではありません。それぞれの自動車メーカーが、独自にシステムを開発しているのです。
たとえて言えば、「家屋の二階にあがる」という行為は同じでも、「ハシゴを使う」「階段を使う」「エレベータを使う」というくらい違います。ハシゴは安いけれどグラグラと不安定。エレベータはラクチンですが設置は大変、といったように、それぞれにメリットとデメリットがあります。
同じように、自動ブレーキも、ひとつのカメラで済ますのか、カメラとレーダーなど数多くのセンサーを組み合わせるのか、といった違いがあります。センサーが多くなるほど、安心度は高まりますが、値段も高くなりますので、いかに安く、いかに安心度を高めるのかがポイントとなっているのです。
うたい文句の影に隠れた走りの「質」
また、機能は同じでも、制御の磨きこみの差もあります。磨きこみが足りなければ「運転は下手」になってしまいます。
実際に、いろいろなクルマの運転支援システムを乗り比べると、その差は歴然です。たとえば「前走車を追従する機能」では、前走車がいなくなるとあわてて急加速して、逆に前走車に近づくと強いブレーキをかけるなど、ギクシャクと走るケースも。一方、ゆったりとしていて、「運転がうまい」と褒めたくなるようなシステムも存在します。システムによって、意外と運転の上手さに差があるのです。
今となっては「運転支援システム」自体が珍しいものではなくなりました。だからこそ、現在は、その内容と質に注目するという段階になってきたのではないでしょうか。
【画像】「アイサイト・ツーリングアシスト」動作イメージ
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