既報の通り、軽自動車ながらミッドシップレイアウトとなる本格的なスポーツカーであるホンダS660が、自動ブレーキの義務化や側面衝突の強化といった法規制への対応が困難なことを理由に来年3月をもって生産終了となると同時に、ファイナルバージョンとなる「ModuloXバージョンZ」が設定された。
当記事では袖ケ浦フォレストレースウェイというサーキットでの標準車、ModuloXバージョンZを含めた3種類のS660のインプレッションをお伝えすると同時に、生産終了をきっかけにS660の購入を検討している方に向けたグレード選びの方向性などを考えてみた。
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文/永田恵一、写真/西尾タクト
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■S660ModuloXバージョンZってどんなクルマ?
来年3月に生産終了を迎えるホンダ S660のファイナルバージョンとなる「ModuloXバージョンZ」
「見ても、乗ってもいつでも楽しめるスポーツカー」というコンセプトで開発され、2015年3月に登場したS660は、走りの機能は共通でベーシックなβと充実した装備を備えるαという2つのグレードでスタートした。
そこに2018年5月に行われた一部仕様変更の際に加わったのがModuloXである。
2013年1月の先代N-BOXへの設定以来S660で第5弾となったModuloXはホンダ車の純正オプションパーツを手掛けるなど、ホンダ車を知り尽くしたホンダアクセスが元レーシングドライバーの土屋圭市さんをアドバイザーに迎え開発した「ホンダが考える究極のS660」と言えるコンプリートカーだ。
存在感も控えめに装着されているが、日常域でも効果を体感できるというアクティブスポイラー
標準のS660にModuloXで手が加えられた主な部分を挙げていくと
【エクステリア】
・エアロパーツ
空気の流れをコントロールすることで旋回性能やスタビリティ(安定性)を高める前後バンパー、スタビリティを高めながら空気抵抗を低減する昇降式のガーニーフラップ付きアクティブスポイラーを装着。なお、ホンダアクセスではエアロパーツの効果は日常域でも体感できるものと主張しており、この効果を実行空力と呼んでいる。
・アルミホイール MR-R01
「ホイールは単に強ければいいというものではなく、最適なたわみが必要」というコンセプトで開発され、鋳造に分類されるスピニング製法の採用などにより目指した剛性バランスを実現すると同時に重量もノーマルに対し約1kg軽量化されている。
・ボルドーカラーのロールトップ
【インテリア】
・ボルドー×ブラックの専用スポーツシート&ステアリング
・チタンシフトノブ
・ダッシュボード左側手前部分に貼られたボルドーカラーのソフトパッド
【機能部分】
・専用サスペンション(スプリングはフロント約10%、リア約20%強化され、ダンパーも減衰力特性を最適化すると同時に5段階の減衰力調整機能を装備)
・ドリルド(穴あき)ローター+スポーツパッドへの変更によるブレーキの強化
といったもので、価格は6速MT、CVTともに304万2600円だ。
剛性と適度なたわみを併せ持ち、ノーマルよりも軽量化を果たしたアルミホイール
それに対しModuloXバージョンZはエアロパーツを含め機能面は共通ながら下記の変更が追加されている。
【エクステリア】
・ボディカラーに特別色となるソニックグレーパールを設定(パールホワイトも選択可能)
・ブラッククロームのエンブレム
・ブラックとなるアクティブスポイラー、ホイール
【インテリア】
・各部のカーボンパネル
・専用シートセンターバック
という変更が施されたファイナルバージョンに相応しい特別な内外装を持つモデルで、価格は6速MTのみの設定で315万400円だ。
■Modulo Xと標準車を今一度比較して試す
特別色となるソニックグレーパールのほか、パールホワイトも選択可能だ
試乗会ではノーマル状態のα、純正オプションパーツを装着したα、ModuloXバージョンZの順で試すことができ、それぞれの印象をお伝えすると
●ノーマル状態のα
軽自動車ながらサーキットでも全体的に怖さをまったく感じることなく、安心感に溢れる中で、サーキットだと動力性能不足は否めないものの、動力性能不足を逆手に取ったアクセル全開率の高さという観点で楽しめるというS660の楽しさを再認識。
ただ、サーキットだと「もう少しシッカリしたサスペンションが欲しい」と感じたのも事実だった。
●純正オプションパーツを装着したα
この仕様は形状こそModuloX系と異なるものの、ModuloX系と同じコンセプトで開発されたフロントバンパー、ModuloX系と同形状のリアバンパー、ガーニーフラップのないアクティブスポイラー、ダンパーの減衰力調整機能がない以外ModuloX系と同じサスペンションキット、ModuloX系と共通のブレーキ関係パーツを装備していた。
乗ってみるとサスペンションキットとエアロパーツの装着によるスタビリティや回頭性の明確な向上が感じられると同時に、ノーマルでもスポーツカーらしい剛性感を持つブレーキがよりガッシリとしたフィーリングになったことにより安心感も増しており、まとめると「楽に速く楽しく走れる」という印象だった。
この点はワインディングロードや高速道路を流すといった走り方をしても同様で、かつサーキットの縁石を踏んだ際の収まりもノーマルよりいいので、公道で乗り心地もノーマルより良さそうと、より質の高い走りをいつでも味わえるだろう。
●ModuloXバージョンZ
ModuloXバージョンZは純正オプションパーツを装着したαに対する走りの面での違いは、ダンパーの減衰力はModuloX系の一番堅い5番(サーキット向け)がオプションのサスペンションキットと同等のため5番で走行したので、大きな違いはフロントバンパーの形状とアクティブスポイラーに付くガーニーフラップという空力関係だけという状態だった。
ModuloXバージョンZはフロントバンパーの違いによるものなのか回頭性がよりシャープになっているのに加え、アクティブスポイラーに付くガーニーフラップによりスタビリティも向上しているようだった。
純正オプションパーツを装着したαに対しサーキットならタイムアップと「同じ速さで走るならより楽」というアドバンテージを持つ。それだけにベストなS660はやはりバージョンZを含めたModuloX系というのが結論だ。
ただ、クルマが良くなっているだけにモアパワーが欲しくなる度合いが一番強かったのがModuloXバージョンZというのも事実だ。
■S660を買うならどれがいい?
完成されたS660が欲しい、失敗のないカスタマイズがしたいという人はModuloXがおすすめだ
方向性としては予算もあるにせよ、自分好みにカスタマイズしていくという人なら装備内容や選択できるボディカラーを考えながら標準系のβかαというのがいいだろう。
一方で「完成されたS660が欲しい」、「カスタマイズはしたいけど、失敗はしたくない」という人であれば、この際300万円オーバーの価格は気にせずにModuloX系の好みに合う方を勧める。
なお純正オプションパーツに関しては試乗したパーツ装着車のようにテンコ盛りとすると、実売価格もあるにせよ定価だとModuloX系と変わらない価格になるので、欲しいパーツが多いならはじめからModuloX系を選ぶか、ほどほどの範囲とした方がいいだろう。
■まとめ
鮮烈な印象を残して走り去ろうとしているS660。またいつの日か、ホンダの『S』が登場する日を心待ちにしたい
S660が生産終了となるのは本当に残念なのと同時に、今になるともしS660をワイドボディ化し、1リッターターボを搭載した仕様があったら、「輸出も可能になってS660の運命も変わったのかもしれない」とも感じる。
しかし、「こんなクルマを本当に市販する」という意味でのホンダらしさを持つS660がトータル7年も生産されることだけでも、効率や法規が厳しくなる一方の現代では奇跡であり、不便なクルマなのは事実ながら欲しい人はぜひ購入することを勧める。
ただ、S660は限定車ではないにせよ、来年3月の生産終了までの残り時間を考えると供給可能な台数はそう多くないのもあり、受注状況によっては想像よりずっと早くオーダーストップとなる可能性も大いにあるだけに、欲しいなら即注文が吉だ。
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みんなのコメント
でもさ…そうゆう事じゃないんだろうねぇ、ロマンは大事、乗れる人は色々な意味で幸せだと思うぜ。
これってタルガトップじゃないの?