この記事をまとめると
■日産サクラと三菱eKクロスEVが人気を集めている
EV航続距離がネックで売れないと言われてなかった!? 近距離向けのサクラとeKクロスEVが絶好調なワケ
■しかし航続距離の短さがEVのイメージを下げかねない
■EVの普及にはある程度の「演出」が必要だと考える
「日本のEVといえば軽」というイメージになっていきそうだ
日本メーカー製のBEV(バッテリー電気自動車)といえば、日産サクラ&三菱eKクロスEVをはじめ今後ほかの軽自動車メーカーからも登場予定となっている軽自動車規格のBEVが「日の丸BEV」の看板車種となっていきそうな勢いだ。
ただし、現状市販されているサクラの販売状況を聞いていると、販売時に航続距離が短いこともあり「遠出は控えてくださいね」と声をかけるセールスマンも多いようだ。ユーザーもその辺りは心得ているようで、販売現場では「お客様の多くは週に1度といった頻度で充電しているようです(つまり生活圏内の移動に留めるケースが多いようだ)」との話も聞いたことがある。都市部でも見かけるようになったものの、サクラのような存在は、近所のガソリンスタンドが廃業して一軒もなくなり、路線バスも鉄道もないかほぼ走っていない地域で、「生活のための移動の足」としてクルマを手放せないが、すでに長距離移動はほとんど行わない高齢世帯向けとしてはまさにピッタリ。ある意味日本ならではの事情によるBEVニーズともいえるものに合致したクルマともいえるが、一方で筆者としてはその様子を見て「やっぱりBEVは『我慢クルマ(使用になんらかの制限がかかる)』なんだ」というイメージを持つひとも多いのではないかと危惧している。
一方で欧米や韓国、中国のBEVを見ていると、とくに欧米のBEVでは「やっぱりICE(内燃エンジン)車とは違うなあ」と感じるワクワクした気持ちになることが多い。たとえばボルボでは、見た目はICE車とたいして変わらないが、ICE車にあるエンジンスタートボタンがなく、自動的にスタンバイになり、BMW iXではボンネットが開かなかったりする。
またフォードのFシリーズピックアップトラック派生のBEVピックアップトラックとなる、F-150ライトニングでは、ICE(内燃機関)車ではデーンとV8エンジンが載っていたフロント部分が、ボンネットを開けてみると何もなく、ラゲッジスペースになっていて驚かされた。ほかにもいままでは一般的にエンジンがあるべき場所がラゲッジスペースになっているBEVが目立ち、筆者などは「やっぱり、これからのクルマなんだな」とワクワクしてしまう。操作系もかなり特殊なものが多いのだが、運転しているうちに、ヒューマンインターフェースに優れているのか手に馴染んでくるのも不思議な体験だと感じている。
EVの普及には「演出」が必要
一方の日系メーカーのBEVはICE車流の操作が目立ち、一気に現実世界に引き戻される思いをしている。もちろん欧米のBEVでもICE車の延長のようなモデルもあるので、何もBEVだからICE車と違うことをしなければならないとはいわないが、運転所作に大きな変化がなく、ボンネットを開けるとエンジンの代わりにモーターがあるのは、よく言えば真面目に作っているのかもしれないが、ワクワク感というものは感じない。
現状では割高で、集合住宅に住んでいれば充電でも不自由しがちななか、BEVを買わせようとすれば、補助金も大切だが、ある程度の「演出」は必要だと思うがいかがだろうか。プリウスが今日成功を遂げているのも、初代がデビューした時に多くのひとがBEVと間違えるほど「未来のクルマ」としてワクワクした思いを体験したからだろうと筆者は感じている。
ただし、いまの日本社会を見ていると、社会保障制度など将来への不安があまりにも多く、多くの日本のひとたちは日々生活するのが精いっぱいで将来に期待を持ってワクワクするといった気持ちを持つ余裕がないともいえよう。そのような社会状況も背景にして、日系メーカーのBEV戦略というものはどこかチグハグしているように見え、出遅れてしまっているのかもしれない。
公官庁への売り込みならまだしも、「災害時にスマホの充電ができます」といったアピールでBEVを普及させようとするのは、あまりにも夢のない話であり、そもそも『移動できる蓄電池』といったイメージを受け、筆者に限って言えば積極的に買おうという気はしない。補助金交付しているからだろうが、自分だけでなく近所の人へも災害時には蓄電池として使ってもらうといった考えがあるとも聞いたことがあるが、一般家庭における自動車は私有財産なのが大原則。それをどうするかはあくまでユーザーの独自判断となると考えるので違和感を覚えてしまう。
BEVがクルマの将来のためのすべてを握っているとは言わないが、市販モデルとしてなかなか世に送り出すことができないのは、日本が自動車先進国といわれることを考えても寂しい限りである。しかもそれが技術的な問題がメインではないように見えると筆者は感じている。
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