■多少古くても性能はお墨付きのクルマたち
燃費規制や環境意識の高まりから、近年は燃費性能を追求したモデルを販売することが各メーカーとも当たり前の状況です。しかし、クルマの魅力を語るうえで重要な要素のひとつに動力性能があり、パワフルなエンジンを搭載したモデルがなくなったわけではありません。
一方で、そうした高性能車はエンジン以外にも足まわりやブレーキのグレードアップや、新技術を惜しみなく投入することで、車両価格が高騰してしまい、なかなか手が出しづらいのも実情です。
そうした状況のなか、注目したいのが古めのモデルの中古車で、なかには異常なまでに価格が高騰しているモデルもありますが、比較的リーズナブルで高性能なモデルも数多く存在。
そこで、格安で狙えるおすすめの高性能モデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ4代目「ソアラ」
トヨタ「ソアラ」といえば、一世を風靡したハイソカーの代表格といえるクルマです。2001年に発売された4代目ソアラは、レクサス「SC」として海外で販売することを主眼に開発されただけあり、当時は高級な装備のひとつだった「電動格納式ハードトップ」を採用したコンバーチブルボディの、贅を尽くしたラグジュアリークーペとして登場しました。
2005年には日本でもレクサスブランドの本格展開により、トヨタブランドのソアラとしての販売を終了してSCに改名。1981年に誕生した初代から数えて24年の歴史を持つソアラの名前は、惜しまれつつも消滅してしまいました。
そんな最後のモデルとなった4代目は、全長4515mm×全幅1825mm×全高1355mmという当時のクーペボディとしてはかなりのビッグサイズ。現在でも古臭さを感じさせない美しいボディラインは、ラグジュアリークーペならではの魅力です。
またトヨタ車として初めて18インチタイヤを装着するなど、20年近く経った現在でも時代遅れなイメージはありません。
搭載されたエンジンは、4.3リッターV型8気筒という大排気量の自然吸気を採用。最高出力は自主規制によって控えめな280馬力ですが、大排気量NAエンジンならではの、発進時からの豪快な加速が魅力です。
また、内装ではウッドパネルを多用し、2+2のシート表皮も4種類用意されるなど、贅を尽くして仕立てられていました。
現在の中古車価格は40万円ほどから100万円未満が主流で、手が出しやすい価格といえますが、高額な自動車税がネックです。
しかし、4.3リッターもの大排気量エンジンから放たれるパワーに、レザー&ウッドの豪華なインテリアとオープンで味わえる贅沢を、一度は体験してみる価値はあるといえるでしょう。
●日産5代目「フェアレディZ」
日本を代表するスポーツカーといえば、50年以上もの歴史がある日産「フェアレディZ」が挙げられます。北米を中心に、もっとも知名度の高い日本製スポーツカーとして長く愛され続けています。
1969年に、それまでのオープンモデル「ダットサン フェアレディ」から方向転換し、欧州のGTカー路線へと舵を切って誕生。美しいスタイリングと、当時としては抜群の信頼性と高性能さ、そして価格の安さを武器に、アメリカで大ヒットを記録しました。
その後はフルモデルチェンジするたびに新たなスポーツカー像を見せてくれ、本格的なハイパワーエンジンを手に入れたのは、1989年から2000年まで生産された4代目からです。
しかし、日産の業績悪化からフェアレディZの系譜は一旦途絶えてしまいましたが、2002年に5代目としてZ33型が復活。
外観は初代に原点回帰してロングノーズ・ショートデッキの典型的なスポーツカーのスタイリングに生まれ変わり、全グレードが2シーターとなります。
全長4310mm×全幅1815mm×全高1315mm のボディに、280馬力を発揮する3.5リッターV型6気筒自然吸気エンジンを搭載。トランスミッションは6速MTと5速ATを採用し、「運転する楽しさ」を全面に打ち出して、走りもスポーツカーとしての切れ味を取り戻しました。
そんな5代目フェアレディZですが中古車価格は非常に安価で、車両価格は20万円前後から設定されるなど、かなりお買い得です。
物件数も多くパーツも豊富で、安価な個体を自分好みに仕立てる楽しみ方も可能なうえ、運動性能はいまも最新モデルに引けを取りません。
●スバル3代目「フォレスター」
スバルを代表するSUV「フォレスター」は、扱いやすいサイズのボディに、スバルならではの水平対向エンジンと4WDを組みわせた「シンメトリカルAWD」を採用し、悪路走破性と高速性能を高い次元で両立したモデルです。
初代フォレスターのデビューは1997年で、当初からパワフルなターボエンジン搭載モデルが存在し、ハイパワーSUVの先駆け的な存在となっていました。
2002年にはフルモデルチェンジした2代目が登場。よりSUVらしいルックスと抜群の走行性能を持ち、オンロードが似合うスポーツSUV的な性格がクローズアップされました。
とくにスバルのスポーツ部門である「STI」が手がけた「STiバージョン」は、265馬力を誇る2.5リッター水平対向ターボエンジンを搭載するなど、さらに走行性能が強化されています。
2007年には3代目へフルモデルチェンジし、車高がさらにアップしたことで、よりSUVらしい外観になっただけでなく、室内の居住性を向上させるなど、ユーティリティの向上が図られました。
この3代目のなかでも人気グレードになっていたのがターボエンジン搭載のグレード「XT」で、スバル車の特徴である加速力が大いに魅力的でした。
全長4560mm×全幅1780mm×全高1675mmのボディに搭載されるのは、2リッターの水平対向4気筒ターボエンジンで、最高出力は230馬力とやや控えめですが、ピークパワーよりも中低速域のトルクを重視して、ワンランク上のパワフルな走りを実現。
現在、ターボモデルのXTは100万円前後の価格帯がメインで、フォレスターのターボモデルでは最後のMT車をラインナップするのも魅力的です。
■異色のハイパワーステーションワゴンとSUV
●日産「アベニールGT4」
1990年代の初頭、スバル初代「レガシィ ツーリングワゴン」によって確立された高性能ステーションワゴン人気によって、スバル以外の各メーカーからもハイパワーなステーションワゴンが多数発売されました。
当時は2リッターターボエンジンというのが定番で、実用的なステーションワゴンとして誕生した日産「アベニール」にもターボエンジン+4WDで武装したスポーツグレードが存在。それが「アベニールGT4」です。
アベニールは商用モデルのライトバンとボディを共有するモデルとして1990年に初代が発売されると、使い勝手の良さとステーションワゴンブームの後押しもあり、スマッシュヒットを記録。日産ご自慢の4WDシステム「アテーサ」を採用したフルタイム4WDを搭載するなど、中身も見た目以上に洗練されていました。
そして、1998年に2代目へとフルモデルチェンジし、スタンダードモデルの「サリュー」シリーズと、スポーツ路線の「GT4」シリーズという2系統へと進化。
高性能モデルのGT4は全長4650mm×全幅1695mm×全高1490mmの「5ナンバー」サイズで、エンジンは230馬力を発揮する2リッター直列4気筒ターボ「SR20DET型」を先代から踏襲するかたちで搭載。アテーサ4WDを標準で採用し、オンロードでの走りを高めていました。
外観は比較的派手さを抑えた印象ですが、フロントバンパー下部から覗く前置きインタークーラーが高性能さをアピールしています。
中古車としてはGT4の物件数は少なめですが、40万円から60万円程度で入手可能で、日産が誇る名機、SR20DET型エンジン搭載車がこの価格帯で手に入るのは、かなりお買い得ではないでしょうか。
●三菱「エアトレック ターボR」
これまで「ジープ」や「パジェロ」といったオフロード性能に優れたクロスカントリーモデルをはじめ、優れた4WD技術を採用したモデルが多い三菱ですが、現在はクロスオーバーSUVを中心のラインナップとなっています。
この、現行ラインナップを先取りしたかたちで販売されていたSUVが「エアトレック」です。
エアトレックは、6代目「ランサー」のプラットフォームを使って開発された新時代のクロスオーバーSUVとして2001年に誕生。
当時はSUVという呼称が一般化しておらず、ミニバンの使い勝手とステーションワゴンのスポーティな走行性能に、オフロード性能を加えたコンセプトのモデルです。
搭載されたエンジンは2.4リッターのGDI(直噴)エンジンと2リッターエンジンを搭載し、駆動方式はFFか4WDを設定。
そしてシリーズのなかでも異彩を放っていたのが、「ランサーエボリューション」譲りの4G63型2リッター直列4気筒ターボエンジン搭載の「ターボR」というグレードです。
最高出力は240馬力に抑えられていましたが、フルタイム4WDを採用しており、全長4465mm×全幅1750mm×全高1540mmの当時としては大ぶりなボディながら優れた加速性能を実現。ちなみに、機械式立体駐車場の制限である全高1550mmを下回ることで、クロスオーバーSUVとしての使い勝手も重視されていました。
近年のクーペSUVに近いスタイリッシュなフォルムをいち早く採用したエアトレックは、商業的にヒットしなかったこともあり、中古車は激安で、ターボRでも50万円前後の価格帯が相場です。
ランエボ譲りのターボエンジンを搭載したSUVであり、しかもインパネシフト採用でウォークスルーもできる実用性の高さも併せ持っており、かなり魅力的な1台といえるでしょう。
※ ※ ※
10年以上前のモデルでも十分な性能と耐久性があり、いまも普段使いするうえで問題はないでしょう。
しかし、新規登録から13年を経過すると自動車税が上がり、13年超と18年超の2段階で重量税も加算されるということを考えると、維持費の面で購入に二の足を踏んでしまう人も多いのではないでしょうか。
また、パーツの供給も消耗品は問題ありませんが、内外装の部品や樹脂パーツは欠品も増えているのが実情で、コレクターズアイテムアイテムになるようなモデル以外では、再生産は絶望的です。
日本は自動車生産では大国のひとつですが、古いクルマを維持する環境は良いとはいえず、自動車文化を継承するという面では厳しい国といえるでしょう。
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