HONDA S2000/F20C
種類:直列 4気筒DOHC16V・VTEC
総排気量:1997cc
ボア×ストローク:87×84mm
圧縮比:11.7:1
最高出力:250ps /8300rpm
最大トルク:22.2kgm)/7500rpm
私が考える価値あるクルマの条件 by 西川淳「運転することそのもので、幸せな状態(≒ウェルビーイング)になれること」
1948年の創業からちょうど50周年を迎えた1998年。ホンダは1台の新型スポーツカーを発表する。それはホンダ黎明期のSシリーズ以来となるFRレイアウトの2シーターオープンスポーツだった。いわずと知れたS2000だ。個性的なスタイリングとともにファンを熱狂させたのは、フロントミッドに搭載されたコンパクトで高性能な新開発F20Cユニットである。
20世紀において名車の第一条件といえば優れたエンジンを搭載することだった。優れたエンジンなくして名車としての評価はなかった。それほどエンジンが輝いていた時代に、スポーツカーユニットの開発力において世界が認めるホンダが精魂込めて作り上げたのだ。F20Cの仕様やスペックには目を見張るものがあった。
ホンダ・エンジンといえば何はさておき革新的なVTEC、すなわち可変バルブタイミング・リフト機構である。低回転域のトルク特性を引き上げつつ、高回転域におけるパワーを確保するVTECシステムは、高性能と環境性能を高める技術的な礎ともなった。
F20Cの開発においては特徴をさらに進化させるとともに、フロントミッドに搭載できるよう可能な限りコンパクトかつ軽量に設計することがポイントとなった。工夫は枚挙にいとまがなく、ローラー同軸ロッカーアームや小型のDOHCヘッド、高剛性アルミダイキャストブロック、アルミ鍛造ピストンや鍛造クランクシャフトなど量産スポーツカーとしては異例のハイスペックが奢られた。結果、1997ccから250ps/8300rpm、218Nm/7500rpmを発揮するリッター当たり125ps(250ps)を発揮する超高回転エンジンとなり、マニアを狂喜乱舞させた。
1999年に生産開始。筆者もプロトタイプに試乗した瞬間に「ひと乗り惚れ」。即座にオーダーを入れて、販売スタートと同時にイエローのS2000を手に入れた。低回転域におけるギリギリの実用性と、力を振り絞って9000rpmまで一気に吹き上がるエンジンフィールは感動レベル。多少の扱いづらさもまた「面白味」であった。なかでもソフトトップルーフを開放してのドライブは、キレッキレのハンドリングと相まって、エンジンフィールを丸ごと味わえたという点で最高だった。
S2000は海外マーケットでも好評をもって迎えられた。2005年のマイナーチェンジではストロークを延長して2.2リッター(242ps/221Nm)へとスープアップ、F22C型となった。高回転域でのフィールを損なうことなく実用域のトルク性能を引き上げたのだ。これは主にアメリカ市場からの要望に応えたものだったという。
S2000は、2009年に生産を終えるまで全世界で11万台が販売された。日本ではその6分の1強のセールスで、販売面で見ると必ずしも成功作とはいえなかった。だが、現在はNSXに次ぐホンダ製の絶版リアルスポーツカーとして高い人気を誇っている。
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