1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「トヨタ スターレット(EP71)」だ。
トヨタ スターレット(EP71型・1986年1月発売)
小型車のFF化が進む中、スターレットは1984年(昭和59年)10月のフルモデルチェンジで、ついにFRのKP61型からFFのEP71型へと切り替わった。合理的な設計で、とくにスポーツ仕様のSiは軽快な走りを見せたが、ターボモデルを擁するライバルに比べると力不足は否めない。そこでトヨタは1年3カ月を経た1986年1月、スターレットの切り札としてターボSとターボRを投入する。通称「スタタボ」の誕生だ。
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エンジンは3バルブSOHCの2EE型に空冷インタークーラー付き水冷ターボを装着した2E-TELU型で、インタークーラー冷却のためにボンネット上に設けられたエアスクープが、ターボモデル特有の迫力を生み出している。
ユニークなのはスイッチ操作で過給圧を低く制御する2モードターボシステム(手動切替のLOモード付)を採用したことだ。最高出力/最大トルクは通常時の105ps/15.2kgmがLOモードでは91ps/13.4kgmに落ちるので、雪道走行や燃費向上の目的ではそれなりの効果があったが、パワーに期待した多くのユーザーはあまり関心を示さなかったのも事実だ。
NA(自然吸気)より23ps強力なエンジンを得たターボSの動力性能は、モーターマガジン誌の実測データで最高速度は181.58km/h、0→400m加速は15.88秒を記録。カタログのキャッチコピーであった「イダテンターボ参上」を見事に実証して見せた。
ただ、シャシ性能がパワーに追いつかず、ハンドリングは文字どおりのジャジャ馬で、コーナーでどこに行くかわからないクルマを制御するには、FFの挙動を理解した上で乗りこなすテクニックが要求された。
1987年12月に、EP71スターレットはマイナーチェンジを受ける。エクステリアでは、グリル一体フォグランプや新意匠のフロントバンパーを採用して、一段と迫力を増した。スプリングの強化やショックアブソーバー減衰力の最適化などによるハンドリングの改善も図られ、操縦性を向上させたが、ジャジャ馬ぶりは健在だった。
同時にエンジンもターボのコンプレッサー径アップやインペラ形状変更、エキゾーストマニホールドの改良を受け、パワースペックは最高出力110ps/最大トルク15.3kgm(LOモードでは97ps/13.7kgm)に強化された。とくに高回転域での伸びが改善されていて、ボーイズレーサーとしてのEP71型最終形にふさわしい、ホットハッチとしての完成度を見せた。
トヨタ スターレット 3ドアターボS(1986年)主要諸元
●全長×全幅×全高:3770×1600×1380mm
●ホイールベース:2300mm
●重量:790kg
●エンジン型式・種類:2E-TELU型・直4 SOHCターボ
●排気量:1295cc
●最高出力:105ps/5600rpm
●最大トルク:15.2kgm/3600rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/60R14
●価格:129万8000円
[ アルバム : EP71型スターレット はオリジナルサイトでご覧ください ]
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