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【SAVとして鍛え抜かれた20余年】X5のステアリングから伝わるBMWの美学

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【SAVとして鍛え抜かれた20余年】X5のステアリングから伝わるBMWの美学

SUVではなく、SAVとして誕生

BMW X5は、高級SUVニーズの拡大を受け、2000年にブランド初のSUVとして投入した。その際に、BMWは「X5」をSUV(Sport Utility Vehicle)ではなく、SAV(Sports Activity Vehicle)として定義し、新しいカテゴリーのクルマとした。

【画像】伝統の直6エンジン搭載 PEHVのBMW X5 xDrive50e M Sportの画像はこちら 全29枚

その違いはひとつのワードに過ぎないが、そこにBMW独自の哲学「駆け抜ける歓び」への情熱が込められていたのだろう。

かつて、私は初代X5のステアリングを握ったことがあるが、従来のクロスカントリーを意識したSUVとは異なり、他のBMW同様に走りを楽しめるキャラ付けが強く印象に残った。

このX5の誕生を皮切りに、大小の様々なBMW SUVで構成される「X」シリーズが拡大されることになった。ブランドの新たな歴史を築いたモデルだけに、歴代X5は重要な存在として位置付けられている。

4代目となる現行型は、2019年にデビュー。当時最新の先進機能の搭載はもちろんのこと、従来型よりも、車両前方の骨格に高張力鋼板の使用を拡大し、強度を高めながら、約15.5kgの軽量化を実現。

さらにサスペンションは、Mスポーツモデルに、4輪アダクティブエアサスペンションが採用されるなどの進化を遂げている。デザインでは、キドニーグリルが大型化され、ライトデザインもより鋭くし、若返りを図ったのが特徴であった。コクピットデザインもデジタルメーターへと置き換えられ、先進感も強調されていた。

最新のラインナップは

その最新仕様が、2023年4月のビッグマイナーチェンジモデルである。フェイスリフトを始め、カーブドディスプレイを中心とした新コクピットへの変更が主な特徴だ。

そのデザインでは、最新BMWデザインを採用することで、重厚さが与えられ、より高級感が増したものの、個人的には持ち味のスポーティさはやや薄れたように思える。新デザインのヘッドライトでは、BMWモデルとして初めて採用となる矢印型デイ・ライト機能を有したLED式に。この最新アイコンの採用は、Xシリーズの中で重要性を表現したといえよう。

最新のラインアップは、3.0L直列6気筒クリーンディーゼルターボ「xDrive 40d M Sport」と48Vマイルドハイブリッド仕様の4.4L V型8気筒ガソリンターボを積むMパフォーマンスモデル「M60i XDrive」とMハイパフォーマンスモデル「X5M Competition」に加え、プラグインハイブリッド(PHEV)「xDrive50e M Sport」を用意。限定車の「xDrive 35d Edition X」を除き、全て4WDのM仕様のみとなる。

今回の試乗車は、ラインナップ唯一のPHEVだ。

意外なことに、カタログモデルの中では、PHEVがエントリーグレードに位置する。しかし、その性能を侮ることなかれ。エンジンには、BMW自慢の3.0L直列6気筒ターボを搭載し、エンジン単体で最高出力230kW(313ps)、最大トルク450Nmを叩き出す。そこに組み合わされる電気モーターも最高出力145kW(197ps)、最大トルク280Nmと、3.0Lエンジン並みの性能を有する。

そのトータル性能は、最高出力360kW(489ps)、最大トルク700Nmに達する。さらにプラグインハイブリッドであるため、EV走行も可能で、最高速度は140km/h、航続距離が110.3km(WLTCモード)を備えているので、日常走行を電気だけで賄うことも出来るのだ。

PEHVの「50e」を選ぶメリット

試乗時は、12.4kWhのリチウムイオン電池が満充電の状態であり、メーター上には126kmの走行が可能と表示されていた。このため、初日の移動は、ほぼ電気で賄うことが出来た。

静粛性の高さもあり、高速道路走行を含め、車内は静か。モーターによる加減速も滑らかなもの。ただBMWの魅力的な直6のサウンドや回転フィールが味わえないことに寂しさを覚えたのも正直なところだ。

モーター走行が可能なバッテリー残量を割ると、自動的にハイブリッド走行にシフト。そうすれば、パワフルなエンジンが目覚める。そのサウンドがBMWを操っているという満足感を与えてくれる。

そのため、ドライバーはアクセル操作がラフとならないように注意が必要だ。もっとも車両重量が2.5tもあるため、上り坂などではアクセルを強めに踏みたくなるシーンが生じるが、直6にモーターアシストが加わるので、モーター走行と比べて加速が少々荒々しくなるのはご愛敬だ。

もちろん、それもICE仕様ならば気にならない程度なものであるし、丁寧な運転動作を心がければ、滑らかな直6エンジンを活かした高級車らしい振る舞いを見せてくれる。ただエンジンが生む躍動感にBMWらしさを覚え、嬉しくなってしまうのも本音なのだ。

乗り味については、エアサスペンションの採用により、前後席とも快適性は極めて高く、不快な衝撃を感じることもなかった。

X7の登場までBMWフラッグシップSUVの座にあったX5だけに、7人乗り仕様も用意できるほどの大型ボディを備えるが、オーナーカーであろうとしてする姿勢が強い。個人的には、後席でゆったり過ごすよりも運転する楽しさが勝ったのが、X5との過ごした時間の感想だ。そこにSAVを名乗り、X5を鍛えてきたBMWの美学があるのだろう。

今は、仕様の関係か、PHEVの「50e」方が、ディーゼルの「40d」よりも30万円安い。自宅に充電環境が用意できるならば、特に趣味などで深夜早朝に自宅を出る機会が多い人には、EVモードのある「50e」を選ぶメリットは大きいと思う。

そして、現行型でガソリン6気筒エンジンを積むのは、この「50e」だけとなっているのも、BMWファンには注目して欲しいところだ。敢えて弱点を挙げるとするならば、ラゲッジスペースが他のX5よりも小さいことだが、それでも標準で500Lを確保する。また7人乗りが欲しいならば、ガソリン仕様には設定がないため、クリーンディーゼルを選ぶことになる。

今やX5も全てが1千万円越えとなり、伝統の直6エンジンを積み、プラグインハイブリッドである「50e」は、お買い得といえそうだ。

BMW X5 xDrive50e M Sport

全長×全幅×全高:4935×2005×1770mm
駆動方式:4WD
車両重量:2500kg
エンジン:直列6気筒DOHC
使用燃料:ガソリン
総排気量:2997cc
最高出力:230kW/5500rpm(EEC)
最大トルク:450Nm/1750-4700rpm(EEC)
電気モーター:GC1P28M0
最高出力:145kW/7000rpm
最大トルク:280Nm/100-5500rpm
トランスミッション:8速AT
車両本体価格:1260万円

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