アルファロメオのセダン「ジュリア」に今尾直樹が試乗した。アップデートされた新型の魅力とは。
純正ナビの採用
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イタリアの名門アルファ・ロメオが2017年に日本市場で発売したジュリアは、すばらしくバランスのとれた後輪駆動、もしくは4WDの正統派セダンとして、アルフィスタに喝采をもって迎えられた。『GQ JAPAN』Webでクルマを担当するイナガキ氏も、スーパーを購入し、半年間ほど愛用した。
Sho Tamuraしかし、ジュリアには購入しようとするひとをためらわせるハードルがあった。純正のナビゲーション・システムがなかったのだ。とはいえ、Apple CarPlayなどに対応するインフォテインメントシステムは搭載されていたから「スマホとつなげられるのだから問題ない」と、イタリア人とイナガキ氏は考えた(たぶん)。
しかし、それが必ずしも正しくなかったことに気づいたアルファ・ロメオは、ジュリアと、そのジュリアの姉妹車のSUV「ステルヴィオ」に、コネクティブ関連と運転支援システムの改善、充実を図った2020年モデルを送り出した。純正カーナビがついに用意され、あわせて「装備と価格のバランスにすぐれた」スプリントという新しいグレードを設定した。ジュリアのスプリントは460万円、ステルヴィオのそれは589万円と、どちらもなかなか魅力的な価格だ。
Sho Tamuraただし、装備はおなじスプリントでも大きく異なっており、一緒にご紹介すると話がややこしくなるので、ここではジュリア2.0ターボ・スプリントにしぼらせていただきます。
実質的な値下げ
いわゆるCセグメントのプレミアム・コンパクト・セダンというと、たとえばメルセデス・ベンツ「C180」もBMW「318i」も、ボルボ「S60」も、車両価格は489万円で同一。国産ガイシャのレクサス「IS」は480万1297円。ジャガー「XE」は539万円、アウディ「A4」はもうちょっと安いモデルもあるけれど、2.0リッターの200psとなると、40TFSIの556万円を選ぶしかない。
あくまでカタログ上でのお話とはいえ、ジュリア2.0ターボ・スプリント、460万円というのはきわめて魅力的な価格なのだ。ちなみに、スプリントと入れ違いに、これまでのスタンダード・グレードの、サブネームのつかないジュリアはカタログから落ちている。455万円だったジュリアは受注生産で、17インチだった。新しいジュリア・スプリントはプラス5万円で、18インチになっているから、実質値下げとも言える。
Sho TamuraSho Tamuraインテリアでは、品質感をアップすべく、8速オートマチックのシフト・レバーをレザーで覆い、センター・コンソールのパネルをヘアライン仕上げの樹脂パネルに変更している。イタリア国旗のトリコロール・カラーがレバーの根元にあしらわれていたりもする。これだけで、グッと色気が増した気がするのはイタリアの人徳ならぬ国徳だ。シンプルなデザインのレザー・シートはさりげなく標準で、シンプルだけれど、ドルチェ・ヴィータな雰囲気を醸し出している。
試乗車はアノダイズド・ブルーという8万8000円のオプションの新色のメタリックで、それに新デザインの18インチ・ホイールが軽快な印象を与える。
ボディ色にはこのほか、白、赤、グレー、黒がある。白、グレー、黒は赤い革内装が標準となる。この青色でも、あるいは赤でも、赤の革内装は受注で生産してくれる。それはそれで、どちらも派手でカッコよさげだ。
Sho TamuraSho TamuraSho TamuraSho TamuraSho TamuraSho Tamura「やってる気にさせる」
機械的な変更について正式な発表は皆無だけれど、「すごくよくなっている!」と、イナガキ氏は興奮を隠さなかった。乗り心地もステアリングも、全体にスムーズになっているというのだ。筆者的にジュリアに乗ったのは18カ月ぶりだったけれど、う~む、あいかわらずイイ! という感想を抱いた。
前後重量配分50:50。車検証でも、前荷重が800kg、後荷重が790kgというピッタンコさで、カーボン製のプロペラシャフトもよさげに思える。ハンドリングがよくて、駆動系のイナーシャが少ないように感じる。
Sho TamuraSho Tamuraその分、乗り心地は、前225/45、後255/40という前後異サイズの18インチ、ピレリ・チンチュラートP7を履いていることもあって、やや硬めではある。ただ、これがランフラット・タイヤであることを考えると、低速でも突き上げはまぁまぁ低いレベルに収まっている。
マルチエアなるフィアット独自の吸気バルブ機構をもつ1995cc直列4気筒16バルブ・ターボは、特に中速粋においてアトキンソン・サイクルのエンジンっぽくて、トルクが薄いというか酸素が薄いというか、いや、ガソリンが薄くて空気量が多いのか、という印象は否めないけれど、5500rpmからゼブラ・ゾーンが始まっているのに、6000rpmまで気持ちよくまわる。ドライブ・モードをn(ノーマル)からd(ダイナミック)に切り替えれば、エンジン回転が1000rpmほど跳ね上がり、俄然レスポンシヴになって、パワーが増す。十分速くて、スポーティで、胸がすく。
Sho Tamuraジュリアで山道を走っていると、むかし、徳大寺有恒さんがおっしゃっていた、「やってる気にさせる」というのはこれだな、と思う。
絶対的なスピードは問題ではない。高効率エンジンで、低燃費という制約があるなか、それでもクルマが目一杯自分の操作に対して応えてくれている。健気にガンバっている。そういう感覚がある。
Sho Tamuraボディ剛性もブレーキも、ドイツ車ほどにはビシッとしていない。もしかしてステアリングの剛性感も劣っている……かもしれない。山道の凸凹路面では、ガタガタという上下動に襲われる。それでも、サスペンションが路面からタイヤを離すことなく、コーナリング・フォームを保ちながら踏ん張って曲がっていく。本当に剛性がなかったり、サスペンションがダメだったりしたら、まるでダメだけれど、そうではない。
長嶋茂雄は、なんでもないゴロをファインプレイのように捕球し、派手な空振りに見せるため、かぶっていたヘルメットを落とす練習をしていた。という伝説に通じるものがジュリアにはあるかもしれない。アルファ・ロメオはなんでもない平凡なコーナリングを「やってる気」にさせてくれる。
Sho Tamuraその秘密は、ドライバーにクルマが伝えてくる情報量の多さにあるように思う。いま、どういう状況にあるのか、ドイツ勢が冷静かつ正確に伝えようとするのに対して、ジュリアはイタリアとしては勤勉な北のミラネーゼという出自ではあるけれど、♪お~・そ~れ・見~よ、とばかりに身振り手振りも交え、表情豊かに、むしろいささか誇張して表現するのだ。イタリア人の義務であるかのように。
8速オートマチックにしても、通常のトルク・コンバーター式で、パドル・シフトはついておらず、したがってレバーでマニュアル操作してもつまらんかと思いきや、ブリッピングしてダウンシフトする。ブリッピングに意味はないけど、感情を揺さぶる。「La meccanica delle emozioni (感情に訴えかけるマシン)」というジュリアのキャッチフレーズはダテではない。
Sho Tamuraアルファ・ロメオの存在感はさらに高まる
注目のナビゲーションと運転支援システムについては、ジュリア・スプリントでは採用を見送っている。オプションでも設定がない。なんとサッパリした戦略であることか。
もしも、それらを欲するのであれば、ジュリア2.2ターボ・ディーゼル・スーパー、588万円など、スプリント以外のモデルを選べばよい、というわけだ。
Sho Tamuraともかく、これまではお金を出しても手に入らなかった純正ナビゲーションと自動運転レベル2の運転支援システムが用意された。これを大きな飛躍と言わずして、なにを言う?
ジュリア2020年モデルの登場で、アルファ・ロメオの存在感はさらに高まるにちがいない。
Sho Tamura文・今尾直樹 写真・田村翔
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