■熱狂的なファンが数多い魅力的なクルマを振り返る
月に2万台近く売れるほどの大ヒットを記録したクルマでも、生産が終了して数年も経つと路上で見る機会も少なくなり、人々の記憶からも忘れ去られてしまうものです。
しかし、絶版になっても人気を保っているクルマもあります。とくに近年はネオクラシックカー人気が世界規模となっているため、その傾向が顕著です。
魅力的な絶版車というとその多くはスポーティなモデルで、現在のクルマでは失われてしまった部分を持っているといえるでしょう。
そこで、今もなお熱狂的なファンが数多く存在するモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「カローラレビン/スプリンタートレノ」
1972年にトヨタは、「セリカ 1600GT」用に開発された1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載する、コンパクトな高性能モデルの「TE27型 カローラレビン/スプリンタートレノ」(以下、レビン/トレノ)を発売しました。
ハイスペックで当時としては希少なDOHCエンジンを設定しながら、比較的安価に設定されたレビン/トレノは、たちまち走り好きな若者から高い人気を獲得します。
その後、レビン/トレノは初代と同様のコンセプトで代を重ね、1983年にはスタンダードモデルのカローラ/スプリンターがFF化されるなか、FRのままとされたAE86型 レビン/トレノがデビューしました。
ボディサイズは全長4180mm(トレノ4205mm)×全幅1625mm×全高1335mmで、先代のTE71型が直線基調の外観デザインだったのに対し、AE86型は全体的に丸みを帯びたスタイリッシュなフォルムに変貌を遂げました。
また、レビンは固定式ヘッドライト、トレノはリトラクタブルヘッドライトとされたことで、外観が大きく区別されています。
搭載されたエンジンは、上位グレードが新開発の1.6リッター直列4気筒DOHC16バルブエンジン「4A-GEU型」で、出力はクラストップとなる最高出力130馬力(グロス)を発揮。
グレード構成はベーシックな「GT」が2ドアに設定され、ハードなサスペンションセッティングに185/60R14サイズのタイヤ、ロック・トゥ・ロック3.0回転のクイックステアリングギアボックスなどを搭載した「GTV」が3ドアのみ。
そして、パワーステアリングや電動リモコンミラーなど装備が充実し、外装ではボディ下部を黒としたツートーンカラーを採用したトップグレードの「GT-APEX(アペックス)」が、2ドア/3ドアともに設定されていました。
内装ではメータークラスターまわりにドライビングに必要なスイッチ類を集約した機能的なレイアウトで、欧州車流にヘッドライトとワイパーのスイッチはコラムには無く、メーター横に設置。
GTアペックスとGTVにはスポーツシートと3スポークのハンドルが奢られ、GTアペックスには当時流行していたデジタルメーターも設定されました。
サスペンション形式は全車フロントがマクファーソンストラット、リアがラテラルロッド付4リンクのリジットアクスルで、リアサスペンションはすでに時代遅れ感がありましたが、構造が単純で耐久性が高く、プライベーターでも容易にチューニングできるのは魅力的でした。
そして1987年にAE92型へフルモデルチェンジし、レビン/トレノも駆動方式はFFとなりました。
AE86型 レビン/トレノは、新車当時は大ヒットしたわけではなく、すでにFFで高性能なホンダ「シビック Si」などに押されていました。
しかし、絶版になった後に軽量コンパクトなFR車というレイアウトが再評価され、さらにマンガなどの影響から人気が高まりました。
●スバル「インプレッサ WRX」
1992年に、スバルは初代「レガシィ」よりもコンパクトなセダン/ステーションワゴンのモデル、初代「インプレッサ」を発売しました。
大ヒットした初代レガシィに続き、インプレッサもヒット作になりましたが、なかでもWRCで勝つために開発され、走りにおいて高い評価を得た高性能モデルの「インプレッサ WRX」のセダンが、ブランドイメージをけん引した存在でした。
ボディサイズは全長4340mm×全幅1690mm×全高1465mm、ホイールベースは2520mmとコンパクトで、車重が1200kgと軽量だったことも、卓越した走りに貢献したといえるでしょう。
インプレッサ WRXのエンジンは、レガシィGT RSに搭載されていた2リッター水平対向4気筒DOHCターボをベースに改良して、最高出力240馬力を発揮。この名機「EJ20型ターボ」のポテンシャルは、フルタイム4WDシステムを介して路面に忠実に伝達されました。
サスペンションは、フロントがストラット、リアをデュアルリンクストラットとした4輪ストラット式を採用。標準車の時点で高度な操縦安定性を実現していましたが、WRXは高出力に対応するために、専用スプリングとショックアブソーバー、さらに専用のブッシュを採用して強化を図っています。
車内はセダンとしての快適性や、実用性を重視したつくりがなされていましたが、WRXではスポーツシートが奢られました。
デビュー当初、WRXはセダンにのみ設定されていましたが、1993年にはスポーツワゴンにもWRXが設定されました。実用的なワゴンでありながらスポーティに走れ、やはりヒットモデルとなりました。
インプレッサ WRXはすでにスバル「WRX」に移行して消滅してしまいましたが、世代ごとに分かれてファンがいます。
また、改良が重ねられて「アプライドモデル」と同形式のモデルながら仕様が細分化され、それぞれにファンがいることもインプレッサならではといえるでしょう。
●マツダ「ロードスター」
1960年代から国産車でも比較的多くのオープンカーが存在していました。しかし、徐々に少なくなっていき、1980年代にはスポーティなモデルは消滅。
これは海外でも同様で、イギリスを中心に生産されていたコンパクトなオープンカーも、1980年代初頭には激減しました。
そんななか、1989年にマツダがユーノス「ロードスター」を発売。オープン2シーターのFRスポーツカーという趣味性が強いモデルながら、170万円台からという安価な価格と軽快な走りによって、異例のヒットを記録しました。
外観は丸みを帯びた非常にコンパクトなボディで、往年の英国製スポーツカーをオマージュしたようなフォルムを採用。フロントフェイスにはリトラクタブルヘッドライトを搭載し、軽快感を演出しています。
シャシはロードスター専用に開発されましたが、エンジンは「ファミリア」にも搭載された1.6リッター直列4気筒DOHCをベースに縦置きに変更し、最高出力は120馬力と同クラスのなかでも決してパワフルではありませんでしたが、940kgの軽量な車体には十分なパワーでした。
初代ロードスターは世界的にもヒットし、国内外のメーカーが同様なコンセプトのオープンカーを開発し、一大ムーブメントに発展したほどです。
ロードスターはコンセプトをキープしたまま代を重ね、現行モデルは4代目です。やはり各代に個別のファンが存在しますが、もっとも人気があるのは初代で、軽量コンパクトなFRオープンスポーツカーの原点というのが、大いに魅力的といえるでしょう。
※ ※ ※
今回、紹介した3車種はどれも素晴らしいクルマなのですが、もはや価格の高騰が著しく、手軽に購入することはできなくなってしまいました。
人気のバロメーターということで価格高騰は仕方のないことなのですが、本当に走りを楽しみたいというユーザーが買えなくなってしまったのは、残念なことでしょう。
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