2020年9月4日、WRCで勝つために生まれたマシン、GRヤリスの市販バージョンがついに発売された。
計4グレードのうち3グレード、モータースポーツ参戦用ベース車の「RC」と一般的なベースグレードである「RZ」、ならびにその上位グレードである「RZ High Performance」には新開発のスポーツ4WDシステム“GR FOUR”が搭載されている。
これはすなわちセリカGT-FOURのST205以来約20年ぶりに復活したトヨタのスポーツ4WD車!
往年のWRCでカストロールカラーのST185を駆るユハ・カンクネンやカルロス・サインツの勇姿にシビれまくった中高年(当時青年)としては、「トヨタよ、やっと復活してくれたか!」と感涙にむせぶほかない。
そして感涙にむせびながらも同時に思うのは、そういえば今、セリカGT-FOURの中古車相場ってどうなってるのか? ちゃんと生き残っているのかということ。
そこで、中古車事情に詳しいライター、伊達軍曹がST165、ST185、ST205の3世代にわたるセリカGT₋FOURの中古車事情を徹底解説する。
文/伊達軍曹
写真/トヨタ
【画像ギャラリー】WRCを席捲した栄光のセリカGT-FOURのWRCマシンをチェック!
GRヤリスの起源はセリカGT₋FOUR
ベースモデルである「RZ」と競技ベース車の「RC」には新開発の直列3気筒 1.6L、直4インタークーラーターボエンジンと新開発スポーツ4WDシステム“GR-FOUR”を搭載している。トランスミッションは6速MT(iMT)を組み合わせている
最後のGT₋FOURとなったST205は1994年2月に登場し、1999年9月に販売終了。トヨタのスポーツ4WDはGRヤリスの登場まで約20年おあずけとなる
GRヤリスは実に約20年ぶり、セリカGT₋FOUR以来の”スポーツ4WDの復活”である。
その起源たる初代セリカGT-FOURは、WRCグループAラリーカーとしてカルロス・サインツなどのドライブによって世界を激走。
市販バージョンは映画『私をスキーに連れてって』のなかで高橋ひとみと原田貴和子が志賀高原を爆走したのが、1986年10月に登場したST165だ(1986~1989年)。
1989年5月、流面形と呼ばれた5代目セリカにもGT-FOURが用意された。そのST185(1989~1993年)には日本初のトルセンリミテッドスリップデフが装着された。
そして、1991年9月には、WRC用のホモロゲーションモデルGT-FOUR RCが発表された(RCとはラリー・コンペティションの略)。
生産台数はグループA規定の5000台で日本国内ではそのうちの1800台が販売された。輸出モデルはカルロス・サインツ・リミテッドエディションと呼ばれた。
さらには、WRCでは思うような結果は出せなかったものの、とにかくカストロールカラーがカッコよかったST205(1994~1999年)の中古車も、もしもまだ手に入るのであれば、ぜひ一家に一台は欲しいものである。
しかし最後のGT-FOURであるST205の最終年式(1999年12月販売終了)でも21年落ちであり、初代GT-FOURであるST165の初期モノに至っては34年落ち。ほとんどクラシックカーみたいなものである。
クルマというのは古くなってくると、
●絶滅する
●希少価値が出てバカ高くなる
●上記2パターンの中間ぐらいの感じで、なんとなくボチボチ生息し続ける
という3パターンに分かれることになる。
はたして「セリカGT-FOUR」の場合はどのパターンを辿っているのか? そしてまだ生息しているとしたら、それはいくらぐらいで流通しているのだろうか? 以下、トヨタ セリカGT-FOURの世代ごとの中古車流通状況を調査してみることにしよう。
初代ST165型セリカGT-FOUR/1986年10月登場
4WDシステムはベベルギヤ式センターデフとメカニカルでフロック(後期型はビスカスカップリング)の組み合わせ。ボディは大型カラードバンパー、丸型フォグランプ、大型ロッカーモールを採用
ST165セリカGT-FOURの中古車情報はこちらをクリック!
まずは初代セリカGT-FOURである「ST165」。これは1985年にデビューした4代目セリカをベースに作られたスポーツ4WDで、GT₋FOURの登場は1年遅れの1986年10月。
搭載されるエンジンは最高出力185ps/24.5kgmを発生する2L、直4ターボで、1987年には前述の映画『私をスキーに連れてって』に登場した。
1988年5月のツール・ド・コルスで初陣を飾ったST165型セリカ GT-FOUR グループAラリーカーは、デビューから1年ほどはさまざまなトラブルで思うような成績が挙げられなかったが1989年9月のラリー・オーストラリアではユハ・カンクネンが初優勝。
そして1990年には一気に5勝をマークし、そのうち4勝を挙げたカルロス・サインツがシリーズチャンピオンに輝く。サインツ自身の初のWRCタイトル、トヨタにとっても日本車メーカーにとっても初のWRCタイトルだった。
ST165の中古車は今や全国でわずか4台。車両価格は205万~278万円で、走行距離は7万~12万kmといったところ。
走行距離と価格との相関はあまりないようで、あくまで「コンディション次第で価格が決まる」といった状況のようだ。
ST165に乗って『私をスキーに連れてって』の気分を味わうこと、すなわち「青春時代の甘酸っぱい思い出を取り戻すぜ!」というのもステキだとは思うが、実際問題として30年以上前のクルマを普段使いするというのは少々難しい部分もある。
もちろんやってやれなくはないのだが、部品の調達やメンテナンスなどの面で苦労することは間違いないのだ。
■セリカGT-FOUR(ST165)
●全長×全幅×全高:4365×1690×1295mm
●車重:1360kg
●エンジン:1998cc、直4ターボ
●最高出力:185ps、最大トルク:24.5kgm
●価格:304万6000円
2代目ST185型GT-FOUR/1989年9月登場
丸いエアインテークがGT-FOUR RCの証。RCとはラリーコンペティションの略 。 1991年9月にWRC用のホモロゲーションモデルであるセリカGT-FOUR RC(ラリー・コンペティション)を日本国内限定1800台で販売。メタルタービンや水冷式のインタークーラーを採用し、戦闘力がアップ
ST185セリカGT₋FOURの中古車情報はこちらをクリック!
となれば、次の世代のGT-FOURである「ST185」はどうだろうか?
ST185は、1989年9月に登場した5代目セリカをベースとするスポーツ4WD。こちらもエンジンはST165同様の2Lターボだが、最高出力は225ps/31.0kgmまで増強。
そして1991年9月にはWRC参戦のためのホモロゲーションモデルであるセリカGT-FOUR RC(ラリー・コンペティション)を5000台生産し、日本国内には1800台のみが割り当てられた。このRCはさらに10ps向上した235psまで高められていた。
WRCでは、ST185型セリカGT-FOURの投入により、1992年(サインツ)、1993年(ユハ・カンクネン)、1994年(ディディエ・オリオール)と3年連続でトヨタのドライバーがWRCチャンピオンに輝いた。
またトヨタは1993年~1994年と2年連続でマニュファクチャラー選手権を制覇。ST185型セリカ GT-FOURはWRCで通算16勝を挙げ、トヨタの数々のラリーカーの中で最も成功を収めたモデルとなっている。
翌1992年シーズンからこれのグループAマシンが出走し、同年はカルロス・サインツがドライバーズタイトルを獲得。
翌1993年シーズンはユハ・カンクネンがドライバーズタイトルを獲得すると同時に、日本車メーカーとしては初のWRCマニュファクチャラーズタイトルをトヨタにもたらした。
ST185の流通量も今やST165とほぼ同程度で、ST165の4台に対し、ST185は全国で5台。
中古車価格は179万~298万円だが、比較的お安い179万円の個体は走行11.6万kmの通常GT-FOUR。
WRCのホモロゲーションモデルであるGT-FOUR RCはさすがに高くなっており、3台流通しているRCの価格はそれぞれ279万円/298万円/348万円。走行距離はそれぞれ13.6万km/9.3万km/8.7万kmだ。
RCの場合は走行距離と価格の間に少々の相関が見られるが、それ以上に「ノーマル状態に近いか?」というのと、当然ではあるが「クルマとしてのコンディション」によって価格が決まっている模様。
というか、やはりGT-FOUR RCは希少なだけあって、いまだけっこうなプライスでありますな……。
■セリカGT-FOUR RC(ST185)
●全長×全幅×全高:4410×1745×1305mm
●車重:1460kg
●エンジン:1998cc、直4ターボ
●最高出力:235ps、最大トルク:31.0kgm
●価格:317万1000円
3代目ST205型GT₋FOUR/1994年2月登場
ST205WRC仕様車はリアウイングがゲタ付きで高くなっていた。3S-GTEエンジンはタービンのサイズアップ、インタークーラーの大型化、インテークバルブのリフト量アップ、インテークマニホールドのサージタンク容量アップなどにより最高出力が20psアップの255ps
ST205セリカGT-FOURの中古車情報はこちらをクリック!
ならば、セリカGT-FOURとしては一番新しいというか、最後のGT-FOURであるST205の中古車事情はどうなっているのか?
ST205は、1993年10月に登場した6代目のセリカをベースとする4WDターボモデルで、FFモデルに遅れること4カ月の1994年2月に発売された。
こちらの2Lターボエンジンはターボチャージャーの性能向上と給排気系の改良などにより、先代比30ps増の最高出力255ps/31.0kgmを発生するとともに、広い回転バンドで高トルクを発生する特性。
WRC参戦の公認を取得するために作られたのは、2500台限定(国内向けは2100台)の「GT-FOUR WRC仕様車」だ。
旋回時のグリップを大幅に高める「スーパーストラットサスペンション」を採用したST205型ベースのグループAラリーカーは1994年シーズン途中のラリー・オーストラリアから出場。
しかし大型化されたST205は、その重量ゆえにWRCでは苦戦。勝てたのは1995年のツールド・コルスだけで、レギュレーション違反による制裁なども受けながら、1995年にワークスとしての活動を終えた。
ST205の流通台数はST185より1台多い全国に6台しかない。中古車価格は「新しい」だけあって全体的に高い。
1台だけ124万円という走行23万kmの格安物件はあったが、あとは軒並み250万円オーバーで、最高値は359.9万円。
こちらは走行わずか2.5万kmのフルノーマル/禁煙/屋内保管という博物館級の個体なので、約360万円という価格にも納得だ。
一般的な走行6万~8万kmぐらいのST205は、250万~270万円ぐらいというのがおおむねの相場である模様。
ちなみに希少な「WRC仕様車」は、2020年9月上旬時点では1台も見つけることができなかった。
■セリカGT-FOUR WRC仕様(ST205)
●全長×全幅×全高:4420×1750×1305mm
●車重:1390kg
●エンジン:1998cc、直4ターボ
●最高出力:255ps、最大トルク:31.0kgm
●価格:327万1000円
まとめ/セリカGT₋FOUR「中古車の現在地」
いずれにせよ、セリカGT-FOUR「中古車の現在地」とは、おおむね以下のとおりであるようだ。
●流通量は各世代とも少ない
●しかし「完全に買えないほど希少」というわけでもない
●安価な個体も一部あるが、たいていは世代を問わず200万円オーバー
●最終のST205だけは、走行距離がきわめて少ない個体も一部流通している。その場合の車両価格は300万~360万円ぐらい
またこのほか、純正部品の調達が困難という部分もあり、シンプルに「年式的に古いから整備はいろいろと大変」というのも確実にあるだろう。
しかしそれを押してでも欲しいのであれば、「探せば探せなくはない」程度の流通量は確実にある。
価格も「高いけど、買えないほど高いわけでもない」というのが、セリカGT-FOURという中古車の刺激的な部分だろう。
買って買えなくはない、探せば探せなくはない歴史的な名車、というのがセリカGT-FOURの「中古車の現在地」といえる。
特にその「RC」や「WRC仕様車」は、今後も延々と筆者のようなクルマ好き中高年の購買マインドをWRCの幻影でもって、くすぐり続けるのだろう……。
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みんなのコメント
いや、そーいうレベルではない、電気系統が壊れたらお手上げだから、ふつうに車修理工場に持ち込んでもお手上げだから、もちろん部品交換しかできないディーラーでは迷惑顔される、この手の旧車は毎日がメンテではなく毎日が修理、直らない故障も、許す、割り切る、これがないと乗れない