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巨大V12エンジンを運んだロールス・ロイス カリナン・ブラッグバッジで辿る 後編

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巨大V12エンジンを運んだロールス・ロイス カリナン・ブラッグバッジで辿る 後編

レジャー施設に転用された空軍基地

グレートブリテン島の南、カルショットから中央部のダービーまで、ロールス・ロイス・カリナン・ブラックバッジで走る。夜間ならリアリティが出るものの、写真撮影に向いていないから日中を選んだ。

【画像】ロールス・ロイス・カリナン・ブラックバッジ どれがお好み? 英国ブランドの上級SUV 全107枚

今はグーグルマップという便利なものがあるから、一般道の確認も簡単。ゴージャスな運転席に座り、スターターのボタンを押す。6.75LのV型12気筒ツインターボ・エンジンが静かに目覚め、そっと発進する。

1913年、英国海軍は海上偵察と兵器開発を目的に、カルショットの岬に空軍基地を建設した。現在残っているのは格納庫程度で、レジャー施設に転用されている。岬の先端には、円形の要塞、カルショット城がそびえ立っている。

飛行艇が海上へ降ろされた、コンクリート製のスロープも一部が残っている。手前側にある倉庫の側面にあしらわれた、スーパーマリンS.6Bのモザイク画が、われわれを出迎えてくれた。

岬の先端へ向かう途中、オフロード走行を試す機会もあった。キャンプエリアの草地程度ではあったが、湿っていてぬかるんでいた。SUVとはいえ、ハイエンドなロールス・ロイスで立ち入ることなど、普通は思いつかないかもしれない。

車内には、オフロードと記されたボタンがある。より手強い不整地にも立ち向かえる能力が備わっていることを、静かに誇示するように。

滑らかに600psを発揮するツインターボV12

写真撮影を済ませ、グレートブリテン島の中央、ロールス・ロイスの工場があったダービーへ向けて出発。当時のドライバーがどんな苦労に見舞われたのかは想像するしかないが、カリナンを運転する筆者は、快適至極。何の心配もいらない。

ヘッドアップ・ディスプレイに表示される、スピードメーターは定期的に確認する必要がある。ダブルガラスと吸音材入りのタイヤ、遮音されたパワートレインなどのおかげで、車内は外界から隔離されている。

1931年のように、スピード違反で捕まるわけにはいかない。極めてシルキーに回るV型12気筒ツインターボは、滑らかに最高出力600psを発揮してくれる。

Rエンジンを載せたファントムIは、途中給油に立ち寄ったのだろうか。カリナン・ブラッグバッジが一般道で表示する燃費は、4.6km/L前後。右足を、少し注意深く動かしながらの状態で。

カタログ値の0-100km/h加速4.9秒を試すと、あっという間に数字は小さくなる。車重が2700kgもあるSUVにしては、かなりの瞬発力だといっていい。一方で、高速道路を穏やかに走っている間は、8.9km/Lが表示された。

途中、ガソリンスタンドに立ち寄った。ロールス・ロイスが指定するハイオクを満タンにしたら、160ポンド(約2万7000円)も取られた。

一般道を縫いながら、ダービーには午後7時に到着した。カーナビは、ロールス・ロイスの歴史的な航空機用エンジンや自動車を管理していた、ロールス・ロイス・ヘリテイジ・トラストのゲート前に誘導してくれた。

気持ちを鼓舞したファントムIのトラック

惜しくも先日閉鎖されてしまった場所だが、貴重なコレクションは別の場所へ移され、維持されるようだ。業務用のトラックが通過するたび、後ろ半分が改造されたファントムIを思い出す。

37LのRエンジンは、ロールス・ロイスの工場へ運ばれると、待機していたエンジニアによって、分解整備が素早く実施された。翌日、カルショット航空基地へ届けるために。

シュナイダー・トロフィーの優勝が掛かった3戦目。英国政府の注目も集まるなかで、V型12気筒エンジンに組まれたスーパーチャージャーは、最大限にブースト圧が高められた。

ロールス・ロイスの技術者たちは、大きなプレッシャーのなかで作業したことだろう。夜道を疾走するドライバーと、信頼できるファントムIのトラックは、彼らの気持ちを鼓舞したに違いない。

番外編:シュナイダー・トロフィーとは

飛行艇レースのシュナイダー・トロフィーは、フランスの技術者で投資家だった、ジャック・シュナイダー氏の発案で1912年に始まった。航空機開発の推進が目的だった。

参戦できるのは、水上から離発着する飛行艇のみ。ホスト国は、前年のレースの優勝国。最高速を競い、5年以内に3度優勝した国が出た時点でレースは終了。シュナイダー・トロフィーを、永久に保持できるというルールが定められた。

1931年までに英国とフランス、イタリア、アメリカのチームによって11回が開催され、英国が見事に優勝を飾っている。だが1931年の予選段階では、チームの雲行きは良くなかった。英国政府は経済危機に見舞われ、チームへの資金提供を中止していた。

しかし、大富豪のレディ・ヒューストン氏が10万ポンド、現在の価値で約500万ポンド(約8億3500万円)をチームへ提供。優勝に向けて強力に後押しした。

大手が掛かった戦いに、フランスとイタリアのチームは辞退。アメリカは、既に1926年に手を引いていた。英国チームは、1929年の時速328.64マイル(528.89km/h)を更新することで、勝利を確実なものにすることを狙った。

果たして、スーパーマリンS.6Bで挑んだ英国チームは、カルショット航空基地が面したザ・ソレント海峡で時速340.08マイル(547.30km/h)を達成。シュナイダー・トロフィーを勝ち取るに至った。

さらに2週間後には、ロールス・ロイスのRエンジンは同じ機体を平均速度で時速407.5マイル、655.8km/hまで加速させた。トロフィーは、ロンドンの科学博物館に今も展示されている。

ロールス・ロイス・カリナン・ブラックバッジ(英国仕様)のスペック

英国価格:32万9020 ポンド(約5494万円)
全長:5341mm
全幅:2180mm(ミラー含む)
全高:1823mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.9秒
燃費:6.6km/L
CO2排出量:343g/km
車両重量:2660kg
パワートレイン:V型12気筒6749ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:600ps
最大トルク:91.7kg-m
ギアボックス:8速オートマティック

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