フォードが、新型「ブロンコ」を発表し、日本でも話題になっている。そこで、日本で買えないアメリカ車のSUVを、小川フミオが紹介する。
日本でも大注目の新型ブロンコ
米国でフォードがこのほど発表した「ブロンコ」がやたらカッコいい。1996年にモデルが途切れてから、じつに24年ぶりにモデル名が復活することになる。丸形ヘッドランプ、バスタブ型ボディ、大径タイヤと、1966年の初代が持つ魅力を現代的に解釈しなおしたようなデザインが大きな存在感を放っている。
米国の作家ジェイ・マキーナニーは、かつて米国の田舎町を「4WDカントリー」と揶揄した。でもいまやマンハッタンのような都会でもクロスカントリー型4WDのカッコよさが注目される時代である。ゴツさが強調されるほど都会の住人が興味を募らせるという逆説的な現象もマーケットでは見受けられるほどだ。
同時に、フォードでは、一部の歴史あるモデルではあえてレトロスペクティブ(懐古的)なスタイルを採用している。代表的なのは現行「マスタング」と「フォードGT」だ。
過去に戻る理由は、カッコよさの追求ゆえだろう。じつは米国車のマーケティングの否定ともいえる。というのは、これまで米国車は、まったくおなじデザインを続けることに否定的だった。
もとをたどれば、1950年代のデザイン戦略に端を発する。欲望を喚起するべく、“ダイナミック・エコノミー”の名で、多少なりとも毎年、スタイリングに手をくわえきたのが米国車だ。
1966 Bronco Exteriorおかげで、たとえば”もっとも魅力的なマスタングは”という問いかけに対して、おなじシリーズであっても、"1964年から1966年にかけてのファストバックがスタイリング的にもっともピュアだし、とりわけ、289キュービックインチ(4.7リッター)の高性能V8搭載の「Kコード」モデルが最高”と、答えることになる。
日本で買えないのが残念
あいにく新型ブロンコは、日本に正規輸入される予定はない。フォードは2016年に日本法人を閉鎖してしまったからだ。トランプ大統領は2017年に、日米貿易における完成車の「不公正貿易」に言及し、日本ではもっと米国車を輸入販売すべきだと檄をとばしたものである。
フォードはトランプ大統領の発言より前に日本市場から撤退しており、米国の自動車の対日輸入に制約があったから撤退したわけではない。
2021 Bronco Interior2021 Bronco Interior米国車が日本で売りにくいのは、左ハンドル車であることが大きな理由だ。新型のシボレー「コーベット」は右ハンドルも作るけれど、それはかなり珍しい話だ。ほかにも、アウトサイドミラーが電動で折り畳めないとか、さまざまな理由があげられてきた。もちろん、乗れば、個性的で魅力的なクルマが多いのも、事実なのであるが。
ブロンコと、ひとまわりコンパクトなブロンコ・スポーツを見ていると、日本でもファンが生まれそうな雰囲気だ。おなじように、日本で買えない米国製のSUVはほかにもある。魅力的なモデルが多いので、輸入されることを願いつつ、下記に紹介してみよう。
(1)シボレー「ブレイザー」
2021 Chevrolet Trailblazer ACTIVJim Frenak-FPI Studiosゼネラルモーターズが手がけるシボレーブランドのSUVが「ブレイザー」。そもそもは1969年にブロンコに対抗して開発された「K5」がオリジナルだ。このときの機能主義的なスタイリングは、まさに新型ブロンコように、いまリデザインして世に送り出したら人気が出そうだ。
いまのブレイザーのオリジンは1995年に登場した第2世代の「S-10ブレイザー」だろう。日本でも当時ゼネラルモーターズの輸入代理店を務めていたヤナセの手で販売され、大きなヒットを記録したモデルだ。2ドアはとくに、大きく傾斜した太いリアクオーターピラーなど、特徴的なスタイリングであった。
2021 Chevrolet Trailblazer RS現在米国で販売されているブレイザーは2019年に販売開始されたもので、トレイルブレイザー名で販売されている。日本でもそれなりにファンをつかんでいる2ドア・クーペ、シボレー「カマロ」との関連性を感じさせるシャープな印象のフロントマスクを持つ。さらに、リアでキックアップしたベルトライン、それにピラーが途中で切れているようなカラースキームによるフローティングルーフなどがスタイル上の特徴だ。
直列4気筒車は前輪駆動(米国ではかならずしも四輪駆動ではなく、前輪駆動とか後輪駆動の簡便なSUVが多い)で、V型6気筒搭載車は4輪駆動。ゼネラルモーターズと提携関係にある中国の広州汽車では上屋のみストレッチした3列シート仕様もある。
個人的には、全長4.8mの本国仕様がタイヤとボディのバランスがよく好ましい。フロントマスクを真っ黒にブラックアウトした仕様など、日本の路上でも映えそうだ。
(2)ジープ「グラディエーター」
2020 Jeep® Gladiator MojaveFCA US LLCこれは日本でもウケそう! と、思わせるのが、ジープのピックアップ「グラディエーター」だ。1962年に登場して、息の長かったオリジナルのグラディエーター(Jシリーズ)も味のあるスタイルだった。
2019年に発売された新世代は、オリジナルの2ドアに対し4ドアと、広い層にアピールするパッケージを持つ。ホイールベースは3487mm! 当初、”全長は意外に短いな”と、思ったらホイールベースだったのには驚いた。全長は5537mmだから、ホンモノはかなり迫力あるはず。
2020 Jeep® Gladiator Rubicon2020 Jeep Gladiator High Altitude features a full leather luxury interiorFCA US LLC2020 Jeep® Gladiator – interiorFCA US LLC2020 Jeep® Gladiator – interiorFCA US LLCグラディエーターのホームページを見ると、ジープがやれることならなんでも出来る、まさに“米国が手がける万能選手”ぶりがうたわれている。キャンパーをトーイングするにもよし、岩山、河原、そして街中、なにを背景にしてもサマになっている。
ルーフは合成樹脂製で取り外しが出来る。ジープのよき伝統を引き継いでいるのだ。グレードはいくつかあり、「ルビコン」には電動でエンゲージされるアンチロールバーが備わる。オンとオフの使いわけに便利そう。
New 2020 Jeep® Wrangler and Gladiator “Three O Five” Edition models debut at Miami Auto ShowES: Jeep presenta los modelos Wrangler y Gladiator edición especial “Three O Five” en el Salón de MiamiFCA US LLC2020 Jeep® Gladiator Rubiconまた、トップ・オブ・ザ・ラインの「モハベ」は、ツインのフォックス製油圧ダンパーというヘビーデューティな仕様だ。リム径31インチのタイヤも装着。砂漠などのオフロードを楽しむように仕上がっている。「モハベ」の上にモデルが設定されるとしたら「Big Sur」だろうか。あ、これはアップルのOSの話でした。
ピックアップトラックは、荷台になにか載せていると、じつにサマになる。ATV(四輪バギー)もいいし、サーフボードでもいいし、いっそ材木でもいい。使い倒せたら、ほんと、男前、というモデルだ。
(3)リンカーン「ナビゲーター」
Lincoln Navigatorフォード傘下の高級車ブランド、リンカーンが手がける全長5230mmの大型SUV「ナビゲーター」は、フォードのラインナップにおけるミッドサイズのSUV「エクスペディション」をベースに開発されたモデルだ。
SUVのなかでもとにかく迫力が欲しいひとには、全長5334mm、全高1989mmの余裕あるサイズのボディに、巨大なグリルを持つナビゲーターは、つねに選択のオプションに持っていたくなるモデルだ。
2020 Lincoln Navigator Reserve先代は5.4リッターV型8気筒エンジン搭載だったものの、今回の第4世代はダウンサイジングという時流に合わせて3.5リッターV型6気筒。一部の米国人には不満のようだけれど、トルクがあってかつ燃費がよければ、V6が現実的だろう。
それに室内も魅力である。3列シートを備え、かつコネクティビティなど快適装備も充実。さらに「ブラックレーベル」というぜいたく仕様を選べば、まるで英国の高級SUVのような、独特のカラースキームと形状を持つシートをはじめ、米国車ではお目にかかれない世界を手に入れることも出来る。
米国での競合はキャデラック「エスカレード」。全長5195mmで全高1910mmのエスカレード(1377万円)でも日本では(そして米国でも)充分すぎるぐらい余裕あるサイズである。ナビゲーターはその上をいっている。荷物もたっぷり収納できる3列シートのSUVは、日本でも個性を発揮しそうだ。
文・小川フミオ
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みんなのコメント
特にブレイザーは、人気のあったS-10ブレイザーとは似ても似つかない普通のクロスオーバーSUVである上にものの割り価格設定が高く、ブレイザーの上位車種だったはずのトレイルブレイザーは中国設計のサブコンパクトクロスオーバーに。名前が名前だけにフォードの本気を見たブロンコと比較されて散々な言われようという様。
グラディエーターの場合は、長年ファンが求めていたラングラーのピックアップ版というところまでは良かった。
ただ、当初の価格設定が強気すぎた上にディーラーがさらに価格を吊り上げ、一部の熱狂的なファン以外からはふざけるなとそっぽを向かれたのが残念。今ではほとんどが1万ドル以上の大幅値引きという状態。
ナビゲーターは悪くないが、アビエーターやコルセアの影に隠れて忘れさられている。