もくじ
どんなクルマ?
ー 小規模だが「かゆいところに手が届く」改良
どんな感じ?
ー ダイハツ得意の「落としどころのうまさ」
ー あると使ってしまう「パワーモード」
「買い」か?
ー 軽ハイトワゴンでは「良質/良心的」
どんなクルマ?
小規模だが「かゆいところに手が届く」改良
現行の6代目ムーヴは2014年12月デビュー。最近のダイハツ車は約1年ごとに細かい改良を施すのが通例だが、今回はデビューから約2年半での定例的なマイナーチェンジとなる。ただ、今なお人気車種の座をキープしていることもあってか、変更内容は小規模だ。
今回の試乗車となった標準系は変更点がとくに少なく、目に見える部分では、外装がフロントグリルとアルミホイールのデザイン変更、内装が加飾パネルの質感アップとドアトリム表皮のブラッシュアップ程度にとどまる。
機能面では、地味だが販売現場でキラーアイテムになりそうな改良点がいくつか見られる。たとえば、後席スライドが荷室側からも操作可能になったのは朗報。伝統的なハイトワゴン軽で、後席に左右独立スライドをもつのはムーヴとワゴンRだが、それを荷室からもスライド可能なのはムーヴだけである。
また、クルマを真上視点で映しだす「パノラマモニター」も新採用されて、ここはワゴンRと日産デイズ/三菱eKワゴンに追いついた。
もっとも、今回のマイナーチェンジ最大のニュースは、アドバンストセーフティのスマートアシストが従来のIIから、最新世代のIIIにアップグレードされたことだろう。この「スマアシIII」の搭載はタントとミライースに続く3機種目となる。
どんな感じ?
ダイハツ得意の「落としどころのうまさ」
今回はエンジンやシャシーなどの走行面での改良は公表されておらず、実際に乗っても、これまでどおりのムーヴだった。
もっとも、それは悪い意味ではなく、ロングホイールベースによるフラットで落ち着いた乗り心地や肩の力が抜ける直進性、刺激はないが安定した操縦性……などの実用車としての仕立ては、基本設計がより新しいワゴンRをいまだに上回るポイントも少なくない。
動力性能については、車重が圧倒的に軽いワゴンRや、エンジンスペックが明らかに優るホンダN-WGNに一歩ゆずるのは事実。ただ、「カタログ性能より実燃費や扱いやすさに注力している」というエンジニアの主張どおり、右足の微妙なアクセルワークによる速度調整のしやすさなどは、なかなか巧妙で、郊外の幹線道路や高速では歯がゆいシーンもなくはないが、運転はしやすい。
今回あらためて面白かったのは、この6代目ムーヴから市場投入された「パワーモード」である。
あると使ってしまう「パワーモード」
「パワーモード」はステアリングホイールのボタンを押すだけで、エンジンとCVTの制御がより活発になる機構なのだが、今回のようなNA車では、エンジンパワーが明確に上がるわけでもなく、またCVTにはSレンジも用意される。
つまりは、パワーモードなど使わずとも、積極的にアクセルペダルを踏めば同等の効果は得られるわけで、「ただのギミック」といわれれば反論はできない。
ただ、この種の実用軽のユーザーはクルマの運転に苦手意識のある向きが多く、潜在的に「アクセルを踏むのが怖い」と思っていたりもする。
上り勾配や合流などの「イザ!」というときに、ことさらに右足を踏み込まずとも指1本でスルスルと穏やかに加速力を増してくれるパワーモードは、なるほど、そうした方々には使い勝手が良さそうだ。
かくいうわたしも、3日間の試乗で、いつの間にかパワーモードスイッチを多用するようになっていて自分でも驚いた。これは「加速したいならアクセルを踏むべし」というクルマの本質からは少しばかりハズれたギミックであり、いかにも日本的な本末転倒感はある。
しかし、うまく使うと街中でよく出くわす「少しだけ加速したい」というシーンをスムーズにこなすことができて、素直にラクなのだ。
「買い」か?
軽ハイトワゴンでは「良質/良心的」
ダイハツのスマアシIIIは自動ブレーキの作動速度レンジこそワゴンRのデュアルセンサーブレーキサポートより少しせまいが、誤発進抑制機能がリバース側にもつく点ではスズキを上回り、先ごろの新型N-BOXの最新型ホンダセンシングに次ぐ多機能である。
この種のシステムはおいそれと実体験するわけにはいかないが、今回の試乗中も車線逸脱警告やブレーキ警告はきちんと作動していたので、安心感はある。
今回はスマアシ機能や装備をより充実させながらも、価格もわずかに下げられており、商品力は地味ながらも着実に向上した。ここを読んでいただいているような方々に積極的にオススメしたいクルマではないが、軽ハイトワゴンでは良質/良心的といっていいゲタグルマではある。
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