ビギナーからベテランまで、幅広い層のライダーに愛されている250スポーツ。特にフルカウルスポーツモデルは、各社から魅力的なモデルが続々とリリースされているカテゴリーだ。ここで、登場したばかりの新型R25とライバルを、走り、使い勝手、装備をじっくり比較しながら、それぞれの魅力を検証していこう。
メリットも多く手ごろな魅力あふれるモデルたち
普通二輪免許で乗れ、車検がなく、高速道路も走れるなど、250スポーツクラスには多くのメリットがある。
峠道でこそ輝く!? 新型「KATANA」試乗インプレッション!
近年このクラスが人気となっているのは、こうしたメリットに加えて、魅力的なモデルが各社からラインアップされているからだろう。
そのきっかけを作ったのは、2008年登場のニンジャ250Rの世界的大ヒット。
同時期に東南アジア市場でも250クラスの需要が急増し、CBR250R、GSR250、YZF−R25がそれぞれタイ、中国、インドネシアで生産され、日本にも続々と上陸。
さらにそれらをベースとしたネイキッドも加わり、国内でも一気に盛り上がった。
そして今、このクラスは世代交代の時期を迎えている。
CBR250RRとGSX250Rが2017年に登場。
昨年にはニンジャ250が、そして2019年はYZF−R25がモデルチェンジ。
250ロードスポーツクラス市場はますます活気付いている。
スポーツ性能を向上させながら本来の扱いやすさも健在
YAMAHA YZF-R25
注目の新型R25のコンセプトは、デビュー前に噂されていたようなサーキットでの戦闘力に的を絞った先鋭化ではなく、普段使いでの乗りやすさを保ったままスポーツライディング適性を高めるという正常進化だった。
YZR−M1を思わせる精悍なルックスに外装を一新し、ハンドル位置も22mm下げてスポーツイメージを強化。
新採用の倒立フォークは硬めのスプリングと強めのダンピング特性で、ブレーキングや切り返しでの車体姿勢変化が減って攻め込みやすくなった。
エンジンはそのまま継承するが、足回りが良くなったことで積極的にパワーを使え、体感的には前モデルよりも速くなったように感じる。
それでいて、流しても頼りなさはない。実に絶妙なバランスだ。
真価を発揮するのはスポーツランの時だけではない。
フロントタイヤの接地感が掴みやすく、車体姿勢を乱しにくい特性はビギナーにも大きなメリットになるだろう。
新型R25は、普段は従順ながら、ハイレベルな走りもこなす実力の持ち主なのだ。
RIDING POSITION 身長:176cm 体重:62kg
ハンドルは前モデルより22mm低いが、上体を伏せたコーナリング姿勢では肘の収まりが良く、手首の負担も減った。
足着き性は僅かに低下したが、160cm程度のライダーでも不安を覚えることはない。
ライダーと一緒にスポーツランを楽しめる
タンデムCHECK タンデムライダー 身長:163cm 体重:43kg
テールカウルにグラブバーの設定がないので、タンデム時はライダーの腰に手を回して乗りました。
タンデムステップの位置は絶妙で乗車時に足を踏ん張りやすいです。
シートはほど良い高さで視界も良く、ライダーと一緒にスポーツライディングが堪能できそう。
取り回しCHECK
タンクが他のモデルより大きく感じ、ハンドル位置が高く、少し遠い感じがしました。
でも、取り回しの時は逆にそのタンクの大きさが良くて、タンクに腰を当てた状態での取り回しがしやすく感じました。
ハンドルも良く切れる印象です。
ハンドル位置CHECK
ハンドルはトップブリッジ下にマウントされたセパレートタイプで、幅はあるものの取り回しもしやすい。
フルロックしても、タンクとグリップの空間には余裕がある。
DETAILS
2眼ヘッドライトは今回からLEDを採用。
センターにはYZR-M1を彷彿させる、M字風開口部デザインのダクトを設置。
シートバッグの固定は、タンデムステップ後端のフックとリアウインカーのステーを使ってネットをかけると安定感が高い。
[ アルバムはオリジナルサイトでご覧ください ]
守備範囲の広い俊足ニンジャ
KAWASAKI NINJA250
2018年に登場した現行型から走りのパフォーマンスは大きく進化した。
特に素晴らしいのは8000回転からのパワーとトップエンド1万3000回転近辺までの伸びやかさ。
5千回転近くもの幅広いパワーバンドを持っているのでスムーズに、爽快に、そして速く走れる。
車体も前後タイヤの接地状態をより体感しやすくなっており、スポーツライディングを安心して楽しめるパッケージング。
街乗りも意外なほど快適だ。
RIDING POSITION 身長:176cm 体重:62kg
ハンドル位置が高いので、ポジションは街乗りも楽な軽い前傾。
シート高は先代より10mm高くなったが、シート前方の左右幅を狭くしたことで、足を真っ直ぐに近い状態で下ろせるから、足着き性はむしろ向上している。
バランスよく扱いやすい車体
タンデムCHECK タンデムライダー 身長:163cm 体重:43kg
グラブバーのような掴むところがないので、ライダーの腰に手を回して乗りました。
タンデムステップの位置はちょうど良い高さで、しっかり踏ん張れ、シート表皮も滑りにくいタイプだと思います。
取り回しCHECK
動き出すまでは車体を重く感じて、少し大回りになっちゃいました。
でも、タンクの形状が良く、体重を掛けてバイクを押すときにちょうど良い位置にタンクが収まる感じで、上手くバランスが取れます。
ハンドル位置CHECK
トップブリッジよりも上に設置されるハンドル位置は高く、取り回しはしやすい。
ハンドルをフルロックしてもグリップとタンクの空間にはかなり余裕がある。
DETAILS
ダウンドラフト吸気を採用、スロットルバルブも大径化。
パワースペックは37PSと高性能だが、デイリーユースでも扱いやすい。
ユニトラック式のリアサスペンションは、リンクを備えたモノショックタイプ。
高い路面追従性がしなやかな乗り味を生む。
[ アルバムはオリジナルサイトでご覧ください ]
クラストップの最先端SS「CBR250RR」
クラストップの最先端SS
CBR250RRはいわゆる「スポーツ性も備えたコミューター」ではなく、れっきとしたスーパースポーツ。
戦闘的なルックスを見た瞬間、ライディングポジションを取った瞬間、全開加速をした瞬間、そして高速コーナーをフルバンクで抜ける瞬間。
RRに乗ればスーパースポーツの楽しさを最低4回は味わえるはずだ。
他車に比べて前傾姿勢はきついし、吸排気音も大きめだが、尖ったキャラクターはスーパースポーツなら当然のことだ。
RIDING POSITION 身長:176cm 体重:62kg
低めのハンドルで車体とライダーの一体感を高めたポジション。
グリップ位置はさほど遠くなく、前側に座れば上体が起こせ、ストリートでも窮屈さはない。
シート高は標準的で、身長160cm程度なら不安はない。
本格SSながら意外に取り回しやすい
タンデムCHECK タンデムライダー 身長:163cm 体重:43kg
シート下に掴む箇所があり、ベルトを掴むよりもこっちの方が自然でした。
ライダーとの距離が近く、腰に手を回しやすいので、親密なふたりにはフィットすると思います。
恋人とツーリングするならCBRですね。
取り回しCHECK
ハンドル位置が低いのですが、想像以上にハンドルが切れるので、取り回しはさほど難しくないです。
昨年のモデルと同じなので印象は変わらないはずなのですが、取材で取り回しする機会が増えたので慣れたのかも。
ハンドル位置CHECK
ハンドルは高さも低くて幅も狭く、垂れ角も強いがハンドルが予想以上に切れるので取り回しも容易。
フルロックすると、タンクとグリップの空間はかなり狭い。
DETAILS
クラス唯一のスロットル・バイ・ワイヤに3種類のライディングモードまで備えた最先端メカが自慢。
パワーもクラス最強の38PS。
ユニークな形状を採用した、反転表示の液晶メーター。
クラス唯一のラップタイマーやパワーモード表示も備わる。
[ アルバムはオリジナルサイトでご覧ください ]
スペック以上に爽快な走り
一般道→高速道路→峠道と各車を試乗してみて、移動区間で一番気持ちよかったのがGSX。
パワースペック以上に実際の発進加速が力強く、振動も少ないのでクルージングも快適。
峠道の登り区間をフル加速するような場面ではさすがにパワー不足を感じるが、中回転域を使ったツーリングペースなら不満ナシ。
80扁平の太いフロントタイヤの絶大な接地感と合わせ、舗装林道のような荒れた峠道でも不安なく走れる。
RIDING POSITION 身長:176cm 体重:62kg
車体が大柄で、ステップとシート着座位置の間隔が大きく、下半身のリラックス度はナンバーワン。
足着き性は標準的で、身長160cm台前半の女性でも両足が着く。
タンデムシート部が高いので乗り降り時には注意したい。
取り回しの良さはピカイチ!
タンデムCHECK タンデムライダー 身長:163cm 体重:43kg
ステップ位置がほど良く、足を乗せていて楽でした。
でも、タンデムシートの位置が高いので、乗車にちょっと手間取るのと、ライダーとはちょっと距離がある感じ。
その分、見晴らしの良さは◎です。
取り回しCHECK
一番、思うようにバイクを取り回せたのがこのGSX。
ハンドルの幅や高さも手のひらで押しやすい絶妙なポジションで、ハンドル自体もけっこう切れる印象。
4台の中ではダントツに取り回しがしやすかったです。
ハンドル位置CHECK
ハンドルはトップブリッジよりも上に設置。
4車の中でもっともハンドルの垂れ角がゆるやかで、フルロックしてもグリップとタンクの空間にはだいぶゆとりがある。
DETAILS
タンデムシート下に収納式のフックベルトを備えるが、それぞれのピッチは狭め。
大きなバッグの固定にはウインカーステーが便利。
特徴的なヘッドライト形状など、GSX-Rシリーズを彷彿させるスポーティなマスク。
ヘッドライトはオーソドックスなハロゲン。
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PHOTO:南 孝幸、森 浩輔 TEXT:太田安治、木川田ステラ、野里卓也、本誌編集部
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