2021年12月にフルモデルチェンジしたハイゼットカーゴとアトレーが、ダイハツ関係者が驚くほど売れているという。
広い室内で、荷物もたくさん載るので、コロナ禍で部屋を求める層などからも人気が集まっているとのことだが、実のところは何が理由なのか?
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渡辺陽一郎氏が、ハイゼットカーゴとアトレーが絶好調のワケを現場などに取材、その裏側を分析していく。
文/渡辺陽一郎、写真/DAIHATSU
■関係者も驚く絶好調の2台 気になる納期などの最新事情は?
2021年12月にフルモデルチェンジしたダイハツ アトレー
2021年に日本国内では約76万6000台の商用車が販売され、この内の約50%を軽商用車が占めた。乗用車に占める軽自動車の比率は約35%だから、商用車の方が普及率は高い。軽商用車は日本の物流を支える最も身近な存在だ。
軽商用車の販売内訳を見ると、キャブオーバーバンと呼ばれるワンボックスボディのバンと、軽トラックがそれぞれ50%近くを占める。残りは少数のボンネット型バンだ。
2021年12月には、キャブオーバーバンの主力車種とされるハイゼットカーゴとアトレーがフルモデルチェンジされ、ハイゼットトラックもマイナーチェンジを実施した。
従来のアトレーは、ハイゼットカーゴをベースにした5ナンバー規格のワゴンだったが、新型では4ナンバーの商用車に変更されている。つまり現在のアトレーは、ハイゼットカーゴのワゴン版ではなく、上級シリーズになった。
この変更について、開発者は次のように述べている。
「先代アトレーはワゴンだったが、90%のお客様は、後席を畳んで荷室として使っていた。後席を使って4名で乗車したいお客様はタントを選ぶ。アトレーに荷物をたくさん積みたいお客様も多く、新型では、最大積載量を350kgとして表示できるバンに変更した」
2021年12月にフルモデルチェンジしたダイハツ ハイゼットカーゴ
このフルモデルチェンジは成功だったようだ。発売後1カ月の受注台数は、アトレーが約8000台(月間販売目標:1000台の約8倍)、ハイゼットカーゴは約1万3000台(同:5700台の2.3倍)、ハイゼットトラックは約2万100台(同:6000台の3.5倍)とされている。
2022年1月の届け出台数を見ると、ハイゼットカーゴ(アトレーを含む)が6517台、ハイゼットトラックは6693台だ。受注台数が多い割に届け出台数は6500~6700台に収まるため、納期遅れが心配される。
販売店では「アトレーとハイゼットカーゴを2022年2月上旬に契約した場合、納車は6月頃になる。ハイゼットトラックは少し早く5月頃」という。アトレーとハイゼットカーゴの納期は約4カ月だ。
今は新型コロナウイルスの影響で、さまざまな部品やユニットの調達に時間を要しており(半導体に限らない)、新車の納期も全般的に長い。アトレーやハイゼットカーゴは、このタイミングでフルモデルチェンジを行ったから、軽商用車としては納期が伸びた。
■なぜ2台はこれほどまでに人気が上昇したのか!? そのワケ
ハイゼット&アトレーの販売が好調な背景には、複数の理由がある。
まず軽商用車はフルモデルチェンジの周期が長く、17年ぶりに刷新されたことだ。新型ではプラットフォームを一新しており、走行安定性や乗り心地を向上させた。後輪駆動車用のCVT(無段変速AT)も新開発され、動力性能、燃費、静粛性などを幅広く改善している。
軽商用車にとって大切な荷室の機能も向上させた。ボディサイドの上に向けた絞り込みを抑え、荷室容量を拡大している。荷室の内部を従来以上に平らに仕上げ、荷物を積む時にも干渉しにくくなった。
このように新型アトレーとハイゼットカーゴは、17年ぶりのフルモデルチェンジとあって、さまざまな機能を進化させた。その結果、先代型からの乗り替えも進み、好調な売れ行きに至っている。
17年ぶりの待望のフルモデルチェンジが好調の理由のひとつ。商用車ならではの荷室の広さも魅力だ
人気を高めた2つ目の理由は、従来のビジネス用途に加えて、広い車内を趣味の空間として活用するユーザーも増えていることだ。販売店では次のように説明した。
「アトレーでは、レジャーで使われるお客様が50%前後はおられる。コロナ禍になり、休日も混雑した場所を避けて出かけるようになった。アトレーなら、自転車を積んだりキャンプも楽しめる。残りの50%のお客様は、仕事に使われるが、レジャーと兼用することも多い。
新型アトレーには車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロールなどの運転支援機能も採用され、ワゴンのように快適な運転を楽しめることも、人気の理由になっている」
■新型になって変わったポイント 4ナンバーサイズ化は要注意
そのいっぽうで、アトレーが5ナンバー車から4ナンバー車になったことで、新たな注意点も生じた。
まずは軽商用車の規格に当てはめるため、後席の足元空間が狭くなったことだ。身長170cmの大人4名が乗車した場合、5ナンバー規格のワゴンだった先代型では、後席に座る乗員の膝先に握りコブシ3つ半の余裕があった。それが新型では1つ少々だから大幅に狭い。
フルモデルチェンジで4ナンバーとなり軽商用車の規格となったため後席の足元は先代よりも狭くなった。ほかにも車検時期や任意保険の違いにも注意
最初に車検を受ける時期も、5ナンバー車なら購入の3年後だが、軽商用車は2年後だ。小型/普通商用車と違って、車検を毎年受ける必要はないが、購入から約5年後に売却する場合、軽乗用車なら車検は1回だが軽商用車は2回になる。
任意保険にも注意が必要で、軽商用車では、21歳/26歳未満不担保といった年齢条件を付帯できない場合がある。軽自動車税は、乗用車は年額1万800円で軽商用車は5000円と安くなるが、出費が増える可能性もあるわけだ。
それでも多くのユーザーにとって、アトレーが各種の安全/快適装備を充実させ、後席が狭まっても荷物をしっかりと積めるようになったメリットは大きい。
ダイハツ軽商用車ファミリーの一角を担うハイゼットトラック。アトレー、ハイゼットカーゴと同時にマイナーチェンジした
新型のアトレーとハイゼットカーゴが売れ行きを伸ばした3つ目の理由として、ダイハツが軽商用車を好調に販売している事情もある。
2021年の軽自動車販売ランキングを見ると、スズキが50万9169台、ダイハツは53万2702台を届け出して1位になったが、軽乗用車の販売台数はスズキが約1万台多かった。その代わり軽商用車では、ダイハツが4万台以上も上まわっている。
今のダイハツでは、主力車種になるタントの売れ行きが伸び悩む。2021年の軽自動車販売ランキングは、ライバル車のN-BOXが1位で、2位はスペーシア、タントは3位だった。タフトとハスラーのライバル対決でも、ダイハツは負けている。
それでもダイハツとしては、軽自動車の販売1位を守らなければならないため、軽乗用車が不振な今、軽商用車のアトレー/ハイゼットカーゴ/ハイゼットトラックの優位は絶対に譲れない。
つまりこの3車種の高人気は、ダイハツの切実な販売事情も反映させているわけだ。それだけに渾身の開発が施され、多くのユーザーの共感を呼んでいる。
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