■衝突実験用に新車を3台購入する!?
2021年5月25日、自動車の安全性能を評価・公表する「自動車アセスメント(JNCAP)」において、最高評価にあたる「ファイブスター賞」が発表されました。
なかでも、2020年秋にフルモデルチェンジしたスバル「レヴォーグ」は最高得点を獲得して「自動車安全性能 2020 ファイブスター大賞」に輝くなど、高い安全性が立証されています。
クルマの安全性を評価する自動車アセスメントとは一体何なのでしょうか。
どのような評価試験を実施して安全性を評価しているのか、評価試験をおこなっている「自動車事故対策機構(NASVA)」に聞いてみました。
自動車アセスメントとは、国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構が実施する、新型車の安全性能を評価し公表する事業のひとつです。
実際に新車を用いてさまざまな試験をおこない、項目ごとにテストを重ねて総合的な安全性の高さを評価・公表しているといいます。
「ユーザーの皆様がより安全なクルマを選べるようになるために、またメーカーによる安全なクルマの開発が促進されるように、さまざまな項目で評価試験をおこない、結果を総合評価する事業です。
2019年までは予防安全性能評価衝突安全性能評価事故自動緊急通報装置に分けて発表していましたが、2020年からよりわかりやすいように総合的な安全性能評価へと変更しています」(NASVA担当者)
我々ユーザーに代わって、自動車事故前の予防安全や実際の事故で役立つ衝突安全、事故後に必要な緊急通報を各項目に分けて試験し評価点を算出。最終的には★評価で安全性能の結果を客観的かつ総合的に評価しているということです。
評価車種選定は、販売台数の多さなどを勘案し国土交通省の自動車アセスメント評価検討会か、またはメーカーからの評価申し出によって選定されています。
選定された車種は、衝突安全性能試験の項目である「フルフラップ全面衝突」「オフセット全面衝突」「側面衝突」用に3台購入。実際に納車されたクルマの状態を確認、計測などを経て評価試験に挑むのだといいます。
その評価試験は「予防安全性能試験」と「衝突安全性能試験」が実施されており、予防安全では「衝突被害軽減ブレーキ(対車両・日中の対歩行者・夜間の対歩行者)」「車線逸脱抑制」「後方視界情報」「高機能前照灯」「ペダル踏み間違い時加速抑制」の7項目。
衝突安全は「フルフラップ全面衝突試験」「オフセット全面衝突試験」「側面衝突試験」「後面衝突頚部保護試験」「シートベルト着用警報装置(助手席・後席)」「歩行者の頭部保護性能試験」「歩行者の脚部保護性能試験」の7項目が試験されます。
「試験後はデータの解析をおこない、自動車アセスメント評価検討会において結果に基づいた評価案を審議し評価結果を確定させます。
ちなみに試験準備から評価までの期間は、1台につき3か月から4か月程度の時間をかけています」(NASVA担当者)
■2020年度は6台がファイブスター賞を受賞
気になる2020年度は、乗用車が6車種、軽自動車が4車種の計10車種を試験・評価しています。
衝突安全性能と予防安全性能が最高ランクで、事故自動緊急通報装置も搭載しているファイブスター賞に輝いたのは6台。
前述のように、最高得点はスバル「レヴォーグ」で、ほかにもホンダ「フィット」、トヨタ「ヤリス」「ヤリスクロス」「ハリアー」、日産「デイズ/デイズ ハイウェイスター」が受賞しました。
ファイブスター賞を受賞したモデルは現時点で最高レベルの安全性を確保しているといえ、運転していても安心感があるということになりそうですが、受賞していないほかのモデルが安全ではないというわけではありません。
あくまでも、衝突安全性能が若干劣っているだけとか、事故自動緊急通報装置を非搭載だったりというレベルの違いであって、現代のクルマとして必要とされる安全性能を確保するために、自動車メーカー各社が技術を結集させていることには変わりません。
そんなクルマの安全性を評価している自動車事故対策機構(NASVA)という団体は、ほかにはどのようなことをしているのでしょうか。
「我々NASVAは国土交通省所管の独立行政法人で、当時交通事故による死亡者の増加を受けて昭和48年(1973年)に制定された自動車事故対策センター法に基づき設立された自動車事故対策センターが前身になります。特殊法人等改革の一環として、平成15年(2003年)に改めて設立されました。
自動車アセスメント業務のほかに、被害者支援活動もおこなっています。自動車事故により脳を損傷した人向けの療護施設を設置・運営し、脳や脊髄に重度の後遺症を負った方へ、介護料の支給や訪問支援など在宅介護への支援もおこなっております」(NASVA担当者)
ほかにも運転者適正診断なども実施しているのだとか。これは自動車の運転に関して交通事故防止のためのアドバイスを提供するサービスで、プロのドライバーを中心としたユーザー(年間約46万人)が利用しているのだそうです。
一般ドライバーも利用できる「一般診断」コースがあり、運転態度や認知・処理機能、視覚機能などを心理・生理両面で診断しアドバイスを記載した「適正診断票」が発行されます(診断時間:約80分、手数料2400円)。
※ ※ ※
メーカーが公表した評価ではなく、中立公正な立場の組織が実際に試験した結果を踏まえて安全性を評価しているということが重要なポイントです。
ここで安全性能が最高ランクを示す「ファイブスター賞」を受賞するということは「(行政公認の)安全なクルマ」ということであり、ユーザーがクルマ選びの指標のひとつにできるのではないでしょうか。
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