■GR86は…「次期型を検討しているフェーズ」
2021年に2代目、そして「GR」という名前が付いて登場した「GR86」。
トヨタとスバルが「もっといいクルマづくり」という取り組みで誕生しました。
現在「次期型GR86」に向けた開発が行われていますが、どのような状況なのでしょうか。
【画像】「えっ…!」これが「進化版GR86」です。画像を見る!
2024年シーズンがスタートしたスーパー耐久シリーズ。
2022年からST-Qクラスに28号車GR86と61号車BRZは共に参戦し、ガチンコ勝負を繰り広げてきました。
この戦いは、GRとスバルがモータースポーツの場を活用し「カーボンニュートラル燃料」を使用したGR86/スバルBRZの次世代モデルの先行開発を「公開しながら行なう」と言う、これまでの自動車開発の概念を超える取り組みです。
そして2024年シーズンは、2022年、2023年の2年間で一定の成果を得たと言う事で、スバルは「今シーズンは将来のBEVを含めた市販車へのフィードバックを目的とした活動に切り替えます。シーズン途中から新たなマシンに変更し、近い将来お客様に届けられる技術を織り込みながらレース現場で車両を鍛えていきます」と発表しました。
開幕戦の菅生はスキップし、第2戦の富士24時間からBRZで参戦予定です。
なおマシンはシーズン途中から「WRX S4」に変更されるのは公然の秘密となっています。
対するGRはGR86で継続参戦となりますが、マシンは“新車”に変更。
事前に配布された資料によれば28号車GR86は「次期型を検討しているフェーズ」と記載され様々な部分に手が入れられているようです。
実車をパッと見る限りは2023年シーズンを走っていたGR86 CNF Conceptとあまり変わっていないように感じますが、各部をよーくチェックすると全くの“別物”です。
あまりの衝撃にピット内で呆然としていると、「解っちゃいました?」と筆者に近づいてきたのは、GR86の開発責任者・藤原裕也氏です。2024年仕様は何か異なるのでしょうか。
「この2年間で色々な学びがありましたので、それらをフィードバックさせています。と言っても隠す所は何もありませんので、ジックリ見ていってください」
まずはパワートレインです。
2023年までは61号車BRZが水平対向4気筒2.4リッター自然吸気エンジンを搭載することから、出力調整のためにGRヤリス用の直列3気筒ターボ(G16E)を1.4リッターに排気量ダウンさせたユニットでしたが、2024年は1.6リッターにアップ。
燃料は2023年の途中から改良されたカーボンニュートラル燃料を使用しています。
「将来のユニットの可能性を探している中、GRヤリスとデータの共有ができる、更にここでの活動が他の車種に広げることなどを考えると、現時点では1.6リッターが最適解と言う判断です。
ただ、『これで行きます!!』と言うわけではありません」(藤原)
ちなみに筆者は金曜日の早朝に行なわれたROOKIE Racingの全体朝礼に参加しましたが、ここで28号車の監督兼ドライバーの大嶋和也選手のあるコメントが気になっていました。
「シャシは今まで戦ってきたノウハウを反映して新しくなっています。
エンジンは今回は3気筒の1.6リッターターボエンジンでパワーが出ていますが、途中から違うエンジンが載るなど、色々と考えていますので」
違うエンジンとはなんでしょうか。
これは東京オートサロン2024でモリゾウこと豊田章男氏が語った新エンジンのひとつ、つまり「レースに勝てるエンジン」なのでしょうか。
「言ってましたね(笑)。当然、重要な選択肢の一つですよ。
ただ、その一方でこの1.6リッターターボを更に進化させると言う考えもありますので、正直に言えば『両面で動いてる』と言う状況ですね」(藤原)
28号車GR86のもう一つは新開発の6速MTです。
現行GR86はアイシン製「AZ6」を採用していますが、これはアルテッツァ時代から採用されている物ながら中身の部品もケースも新設計された物です。
ただ、許容トルクはそれほど高くないので、チューニング時のアキレス腱と言われていたのも事実です。
今回はそこに大きくメスを入れたと言うわけです。
「欧州向けレクサスISのディーゼルターボ用にラインアップしていたユニット(AY6)をベースに、最新の技術を盛り込むと同時にシフトフィールやモータースポーツでの操作性を考慮した設計になっています。
今、トヨタ/レクサスが持つユニットの中での最善策です。
MTは2ペダルと比べると少数派なのはですが、無くしてはダメなモノです。
そこで、『我々ができる事、まだまだあるよね』と言うわけです。
もちろん既販モデルの事も考えていますよ」(藤原)
※ ※ ※
前述の事前資料においても28号車GR86の年間目標は、「パッケージ変更による嬉しさの確認」と「量産を見据えたパワートレイン強化」と記載されていました。
■そういえば…「次期モデルの開発」にGOサインは出た?
シャシ周りはどうでしょうか。
パッと見るだけでもエンジンの搭載位置、前後サスペンション周り(サブフレーム、アーム類)、更には着座位置など、2023シーズンのモデルと見比べると明らかに異なります。
特にリアサスペンション周りは取り付け位置を含め、車体側にも大きく手が入っています。
この2年間、「アクセルを踏んで曲がれるクルマ」を目指して開発を行なってきましたが、昨シーズンまでの、現行モデルに対しての「対処療法」から「根本から変えた」と言うわけです。
この部分に対して、藤原氏は次のように話しています。
「一言で言うと『エンジン/タイヤ/人の位置関係』を全て見直しています。
エンジンは下に10mm、後方に60mm移動しています。
当然、ドライバーの着座位置も60mm後方に下げられ、ステアリングやペダルなどの操作系もそれに合わせて最適化。
実はステアリングコラム回りやペダルなどは別のクルマ用を暫定的に使用しています。
サスペンションは前後共に刷新しています。2023シーズンも暫定的に変更していましたが、今回は車体側にも大きく手を入れています。
さらに、量産を見据えてアーム類はアルミ→スチールに変更しています」
これらの変更は重要配分の更なる最適化、つまりスポーツカーの要となる“基本素性”を整えることが目的。
つまり、このクルマは見た目こそ現行GR86ですが、中身は次世代のパッケージ検討車なのです。
「このパッケージだと、おのずとキャビンは後ろに動きます。
つまり、FRスポーツらしい『ロングノーズ/ショートデッキ』をより実現しやすい。
現時点では外観はGR86のままですが、シーズン中にパッケージ変更を活かした空力のアップデート(=デザイン変更)も行なっていく計画もあります」(藤原)」
また新たなGR86、そして菅生での走りに対してGRの高橋智也プレジデントは次のように話しています。
「今回イチからボディ・シャシを作り直しています。
エンジンも1.4から1.6にしており、1.4は去年で色々試したいデータが取れました。
今年は市販車で採用している1.6のエンジンをさらにいろんな使い方で鍛えてみるという趣旨です。
またGR86の弱点だったミッションは新しいものに載せ替えています。ただドライバーからはシフトが入りづらいという声もあり、持ち帰って確認していきます。
28号車は、より次の86に向けてその進化をクルマのパッケージに合わせて作っていきたと思っています」
※ ※ ※
ちなみに、ここまでのアップデートを行なったと言う事は、次期モデルの開発にGOサインは出たと考えていいのでしょうか。前出の藤原氏は次のように話してくれました。
「まだ、出ていません(笑)。
次期モデルに繋がるポテンシャルを見せる事、それも今シーズンのミッションだと思っています。
スバルさんとは2023年のようにガチンコ勝負ではありませんが、同じST-Qなので当然意識はしています。
風のウワサではWRX S4だと聞いていますが、負けられませんね」
そんな2024年仕様の28号車GR86ですが、予選はBドライバーの坪井翔選手がST2クラスを超える1分29秒677を記録。決勝もシッカリと走り切り、数多くのデータを残しました。
果たして28号車GR86は、次期モデルの扉を開くことはできるのか。
そして、マスタードライバー・モリゾウを笑顔にすることができるのか。そちらも楽しみです。
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みんなのコメント
利点は低重心だけとか、それも軽量直3積めばお釣りが来るほどだし
必然の成り行きだわな