ルノーのコンパクトSUV、キャプチャーの2代目モデルが2021年2月4日に発表、2月25日から発売となる。
キャプチャーは2013年に初代が登場して以来、2019年まで世界で170万台以上を販売。2020年も欧州で販売されたすべてのSUVのなかで、販売台数NO.1となり、高い人気を誇っている。
優等生だけど個性が薄い?? 新型フィットが爆発的ヒット車にならない訳 打開策は「クロスター」にあり!?
エクステリアデザインは、キープコンセプトだが、ルノー、日産、三菱のアライアンスによって新開発されたCMF-Bプラットフォームを採用。
ボディサイズは大型化され、BセグメントとCセグメントの間に位置するほど大きくなった。合わせて中身も大きくブラッシュアップされており、非常に魅力的なモデルへと進化している。
今回、この新型キャプチャーを公道で試乗することができた。欧州で最も売れているという新型キャプチャーの「凄さ」はどこにあるのか、その魅力をモータージャーナリストの吉川賢一氏が徹底レポート!
文/吉川賢一
写真/平野 学
【画像ギャラリー】欧州SUV販売NO.1のキャプチャーの魅力はどこにある? 写真30点をチェック!
ボディサイズが大きくなったことで余裕を感じるデザインに
インパクトのある顔付き、デザイン力の高さをヒシヒシと感じる。と同時にボディのチリの狭さ、作りのよさを感じる。ボディサイズは全長4230×全幅1795×全高1590mm。日本未発売の現行ジュークの兄弟車となる
フロント、リアともにCシェイプデザインのランプを採用。ラインナップはインテンス/299万円、インテンステックパック/319万円
日産・ルノーのSUVラインナップのボディサイズを見る
新型キャプチャーの第一印象は「デカい」。もちろん、CセグメントのSUVと比べれば、全長は小さめなのだが、BセグメントのコンパクトSUVのつもりで見ると、「ん?」と疑問が浮かぶほど立派に見える。
ボディサイズは全長4230(+95)×全幅1795(+15) ×全高1590(+5)mm、ホイールベースは2640(+35)mmと、先代からひとまわり大きくなり、立派になった(カッコ内は先代モデルとの差)。
特に全長を伸ばしたことで、後席の前後スペース及び荷室容量が増え、ドライバーと助手席の間の間隔も広がっている。
ちなみに最小回転半径は5.4mと、215/55R18という大径タイヤを履いたSUVにしては小さく、狭いところでの小回りもよいほうだといえる。
なお、今回の新型キャプチャーに使われているCMF-Bプラットフォームは、日産の2代目ジューク(日本未導入)にも使われているプラットフォームだ。
この新型キャプチャーと2代目ジュークは、ホイールベース含むボディサイズが近く、セッティングの違いこそあれ、ほぼ似たような車格だ。もし、2代目ジュークが日本導入されることがあれば、非常に面白いことになりそうだが、今のところその計画はないようだ。
センスのいいオシャレなデザインを誰もが感じると思う
欧州Bセグメントのクルマは、全長4200mm以下、というのが暗黙のルールとなっているのだが、今回の新型キャプチャーは、それを超えてしまっている。
しかし一応、BセグメントのコンパクトSUVという位置づけとなるようだ。ルノー担当者によると、Cセグメント車が軒並みボディサイズを拡大し続けていることで、クルマの買い替え時に、Bセグメントへのダウンサイジングを希望する人に人気があるという。
日本仕様のパワートレインは、最大出力154ps、最大トルク27.5kgmのスペックを誇る排気量1333ccの直列4気筒ガソリンターボと7速DCTの組み合わせたもので1種類のみのラインナップ。
ルノー・日産・三菱のアライアンスで開発したというこのエンジンは、1800rpmから最大トルクを発揮し、1310kgの軽量ボディを矢のごとく加速させ、このハイトルク型のエンジン性能を、CMF-Bプラットフォームが、余裕で受け止める。ちょっと飛ばしたくらいでは、全く破綻するそぶりもない。
154ps/27.5kgmの1.3L、直4ターボエンジンに7速EDCを組み合わせている。バルクヘッドにスタビライザー(指しているところ)を装着。またボンネットの付け根のところに制振材が装着されているなど、かなり力が入っているのがわかる
WLTC燃費は17.0km/L(市街地12.9km/L、郊外17.2km/L、高速19.5km/L)と、悪くはないがまずまずのレベルだ。シリンダー内に特殊なコーティングを施して摩擦低減をしているという。
ちなみに、この1.3Lのパワートレインは欧州市場でも上級グレードとして販売されてはいるが、ルノーによると、欧州市場でバカ売れしている人気グレードは、より小さな1Lターボのエンジンと、6速MTの組み合わせだという。
本国ではE-TECHというルノー製のプラグインハイブリッドグレードもあるが日本には、その存在すら明らかにされていない。車重は1560kg(+250kg)と増えてしまうが、1.4L/100km(70km/Lオーバー)の燃費を誇る。ぜひ、こちらのモデルの導入も検討してほしいところだ。
かなりイカつくなったフェイスデザイン
バンパー左右にあるエアディフレクターは、フロントタイヤ側へと貫通しており、走行中の気流を整流することで燃費改善および直進性向上などに効果がある。こういったところにもルノーの力の入れようがわかる
フロントマスクのデザインは、シグネイチャーライトが付いたCシェイプのヘッドライトを採用するなど、初代と比べてかなりイカつくなった。先に登場した、新型ルーテシアの面影を強く感じられる。
また、センターグリルの横にあるエアディフレクターは、フロントタイヤ側へと貫通しており、走行中の気流を整流することで、燃費改善および直進性向上などに効果がある。
BMWやメルセデスといった高速走行を得意とする欧州車メーカーでよく見られる手法で、細部まで手を抜かずに作われたことが伝わってくる装備だ。
2トーンカラーのボディカラーは、もはやどのメーカーのSUVでもやっているが、サイドのウィンドウ下に入ったシルバーラインによって、ルーフが浮かび上がったように見せるフローティングデザインも、昨今のコンパクトSUVに共通する最新トレンドでカッコいい。
ボディサイズに対してはオーバースペックにも見える215/55R18サイズの大径タイヤも、55扁平は死守しているところを見ると、見栄えと走りのバランスがギリギリとれるところに落としているように感じる。
また、Cシェイプのリアテールランプもスタイリッシュ。サイドには細かなスリット模様が入っており、非常にシャープな印象だ。
遠くからでもわかるCシェイプのリアコンビネーションランプ
7J×18インチのアルミホイールに、215/55R18サイズの大径タイヤを履く
インテリアも最先端かつスタイリッシュ、しかし残念な点も
乗り込んだ瞬間、新しさ、オシャレさ、質感の高さを感じるコクピット。インテンステックパックはブラックのインテリアカラーとなる
インテンスにはボディカラーに応じてブラックとオレンジのインテリアカラーが用意される
インテリアは、かつてのルノー車のように奇抜なデザインを取り入れることもなく、キレイにまとめられた印象だ。
面白いフライングセンターコンソールや手にしっとりとなじむ本革巻きのステアリングホイール、所々に施されたインテリアの加飾、身体にフィットする本革シート(テックパック)、モードチェンジに応じて変色するインテリアライティングなど、ほぼCセグメント並みの質感だ。なお、電気式パーキングブレーキも標準搭載となる。
センス良くまとめられてはいたが、7インチのマルチディスプレイだけは、やや物足りなさを感じる。今回、ナビゲーションをApple Car Playで使用したが、表示部が小さくて運転中の視認性はよろしくない。8インチは欲しいところだ。
立派な左足のフットレストに対し、右側には太いピラーがあるため右足の置き場がない。設計初期から想定しておかないと、右足フットレストは実現できない
そして筆者が毎度チェックする「右足用のフットレスト(もしくは平らな置き場所)は、この新型キャプチャーでも確認ができなかった。
高速走行でACCを入れた時に、左右の足をフットレストにおいて突っ張ることで、身体への負担を大幅に下げられる。
ACC(アダプティブクルーズコントロール)が普及してくる今後は、必須ともいえる工夫だ。
アクセルペダルの右側には支柱があるため、ボディ設計へ最初から織り込んでおかないとなかなか設置は難しいのだが、コストは基本的にかからない工夫なので、次期型では、検討していただきたいと思う。
上位クラスのモデルをベンチマークにし、細部の仕上げまでこだわったインテリア。ダッシュボード、ドアパネル、センターコンソールの側面まで乗員が手に触れるところには高品質のソフト素材を採用し、コンパクトカーとは思えない上質さを感じさせる
ヘッドクリアランス、レッグスペースともに十分な広さ
リアラゲッジ容量は欧州BセグメントSUVの最大レベルの536Lとなり、リアシートを倒した状態では1235Lまで広がる。また上下に分割するダブルフロアシステムは使いやすい
ウェットでも安定度はバツグン!!
走りはなかなかの高評価。高速走行やコーナリングでは、サスペンションの路面追従性が高いため、操縦安定性は高い
走り始めから、路面とのコンタクトフィールが柔らかく、先日試乗したVWのT-Cross(18インチタイヤ)と比べても、はるかに印象がよい。
新型キャプチャーのタイヤは215/55R18 と、他車のように不似合いな低扁平タイヤを履いていないことが効いている。
それでも、ややタイヤ外径が大きいので、あと1サイズほどタイヤ径を小さくすれば、設計的にもっと小回りができるのになあ、とは感じた。
2ペダルDCTの7速EDCは、スピードに乗せたあとの変速が、ごく短時間で行われ、見事だ。
シフトアップがスパスパと決まる感覚や音は、性能の良いマニュアルトランスミッションのようだ。強く踏み込めば、割りと荒々しいエンジンサウンドが聞こえ、それが心地よくも感じる。
CVTや多段ATの滑らかなシフトアップも良いが、トルコンの滑りがイヤで、ダイレクトにギアがかみ合う感覚を好む方には、この7速EDCのほうが向いているだろう。
ただ、車速ゼロからのスタート時に、若干もたつきがあるように感じる。信号が変わってすぐに前へ進みたくても、ほんのわずかだが、発進が遅れる。
オートブレーキホールドからの復帰時はなおさらで、一般的なAT車のそれよりも、時間がかかるのはいただけない。
高速走行やコーナリングでは、サスペンションの路面追従性が高いため、どこでも安定した走行ができる。
試乗日はあいにくの雨で、高速道路上でもウェット路面が多々あったが、1320kgの車重に対して、215幅の立派なタイヤのおかげもあり、怖さは感じなかった。
強めのハンドル操作を入れると、横方向へのタイヤのよれを感じるが、丁寧なハンドル操作をしている限りでは安心だ。
なお、走行中は常に静粛性が高く、新型プラットフォームの恩恵は、ハンドリングよりも、むしろロードノイズの低減に効いているようだ。
価格は299万円~、VW T-CROSSやヤリスクロスと比べてみる
フランス製SUVとしての魅力がたっぷり感じられるルノーキャプチャー。写真はインテンスのオランジュ アタカマメタリック
VW T-CROSS。全長4115×全幅1760×全高1580mm、ホイールベース2550mmのコンパクトなボディサイズは、ヤリスクロスとほぼ同じ
キャプチャーのグレードは、標準のインテンス(299万円)と、インテンステックパック(319万円)の2種類。20万円の差は、レーンセンタリングアシスト、運転席電動シート、レザーシート(標準はファブリック素材)、スマホのワイヤレスチャージャー分だ。
なお標準ナビゲーションシステムは、別途オプション装着となる(Apple Car PlayやAndroid Auto経由でのナビはそのままで使用可能)。
輸入車のライバルだと、VW T-CrossやT-Roc、国産のライバルだと、日産キックス(276万円~/2WD)や、ヤリスクロスハイブリッド(228.4万円/ハイブリッドX 2WD)、そろそろ次期型が登場すると思われるヴェゼルハイブリッドなどが該当する。
T-Cross(TSI 1st Plus、338万円)や、T-Roc(TDI Sport 、419万円)と比較すると、新型キャプチャーのほうが安いが、国産SUVたちと比較すると、新型キャプチャーは、約30万~70万円ほど高いプライスとなる。
それだけの差があれば、エアロパーツやアルミホイール、ドライブレコーダーといったオプションも余裕で購入できると考えると、悩ましいところだ。
だが、静・動の質感が高い新型キャプチャーを選ぶのは、大いにありだと思う。Bセグメントには全く見えないフレンチデザインの最新コンパクトSUVに乗って、街中やワインディングをドライブするのは格別に気持ちが良い。デザイン買いしても、後悔しないと思う。
ヤリスクロスのボディサイズは全長4180×全幅1765×全高1590mm。価格はガソリン車がX ”Bパッケージ”2WDの179万8000~244万1000円。ハイブリッドがハイブリッドXの228万4000~281万5000円
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No.1CM作れるで。