かつて魔法の絨毯と称された心地よさを誇ったシトロエン。その味わいを受け継ぐ個性派SUV「シトロエンC5エアクロス」に新たなパワートレーンが追加された。それがシトロエン初のプラグインハイブリッドだ。
快適な乗り心地と電動化による静かな走りを手にしたをプラグインハイブリッド仕様のC5エアクロスSUVは、どんな特徴を持つのか? ほかのC5エアクロスSUVとの違いなども解説しよう。
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文/大音安弘 写真/グループPSAジャパン
【画像ギャラリー】シトロエン初の電動化車C5エアクロスSUVプラグインハイブリッド
■電動化という武器を手にしたシトロエン
グループPSAジャパンは、2021年6月24日、シトロエンのSUV「C5エアクロスSUV」にプラグインハイブリッド仕様(PHEV)を追加することを発表した。
シトロエンC5エアクロスSUVは、シトロエン初の電動化車だ。シトロエンの持ち味である快適な乗り心地に、電動化による静かな走りを組み合わせた現代シトロエンの究極の形といえる。
ビジュアル的な差別化は限定的。特徴的な違いは、フロントバンパーとエアバンプ(サイドモール)のアクセントカラーが、エンジン車では、レッドかシルバーになるのに対して、PHEVは、マットなブルーを採用(一部のボディカラーではシルバーとなる)。
もうひとつ大きな違いは、リアフェンダー左側に充電口が追加されることだ。PHVのため、給油が必要なので右側には他モデル同様に給油口も設けられている。また駆動バッテリーが追加されたので、スペースの関係上、燃料タンクが9Lぶん小型化された43L仕様となっている。
左側には200Vの充電口が備わる。もちろん、右側はガソリン用の給油口だ
■PHVのための専用シャシーを採用
シトロエンのプラグインハイブリッドシステムは、最高出力180ps/最大トルク300Nmの1.6L 4気筒ターボエンジンに、110ps(81kW)/320Nmの電気モーターを組み合わせたもの。
システムトータル出力は、最高出力225ps/最大トルク360Nmというパワフルさを実現。最高出力では、ガソリン及びディーゼルのC5エアクロスSUVを上回り、最大トルクも400Nmを誇るディーゼルに迫る勢いだ。
電気モーターは、トルクコンバーターの代わりとなる湿式多板クラッチとともに、8速ATに組み合わされており、前輪のみを駆動する。変速時にもモーターを介入させるなど専用のチューニングを施すことで、より滑らかな走りを実現しているという。
なんとPHV化で、リアサスペンションをマルチリンクに変更。より走りにも磨きが掛けられた
駆動用バッテリーには、13.2kWhのリチウムイオン電池をリアシート下に配置することで、エンジン車同等のキャビンスペースを確保している。充電は、200Vの普通充電にのみ対応。3kW出力の充電器だと、約5時間。6kW出力の充電器だと、約2.5時間で満充電となる。
シトロエンC5エアクロスSUVでは、後席下に搭載する駆動用バッテリーによるリア側重量増に対応すべく、リアサスペンションをトーションビーム式からマルチリンク式へと変更。
そこにバッテリーの重量増の影響で前後重量配分が56:44となり、よりバランスが改善されたことで、ハンドリングと乗り心地の向上がみられるというから楽しみだ。
PHV化で、フロントヘビーだった前後重量バランスが改善
■電動化が生んだ3つのドライブモード
PHVでは、「エレクトリック」「ハイブリッド」「スポーツ」のドライブモードが選択できるのも特徴のひとつ。デフォルトとなる「エレクトリック」は、できる限り電気のみで走行するモードで、EV感覚の走りが味わえるもの。
アクセルを深く踏み込んだ際などのパワーが必要と判断した場合は、自動的にエンジンも稼働する。EV走行時の最高速度は、135km/h。航続距離は65km(WLTC)となる。もちろん、バッテリー残量が少ない場合は、自動的にハイブリッド走行を行ってくれる。
最もマルチに活躍する「ハイブリッド」は、発進時は基本的にモーターのみで行い、運転状況によりエンジンと電気モーターをフレキシブルかつシームレスに切り替える。このモードでも、電気モーターを積極的に活用する仕組みとなっている。
より運転を楽しみたい時に活躍する「スポーツ」は、エンジン主体のモード。シフトアップタイミング、アクセルレスポンス、ギアシフトタイミング、ステアリング操舵力を重くするなど、スポーツ走行に適した統合制御を行ってくれる。
シフトレバーは、マニュアルモードの代わりに、エネルギー回生を強くする「B」ドライブを設定。走行時では、「B」にシフトすることで、シフトダウンによるエンジンブレーキのような使い方もできるとする。
コクピットデザインは共通だが、メーター内にエネルギーフローの表示が出来るなど機能が追加されている。
■気になる価格差は!?
プラグインハイブリッドの価格は、550万円。ガソリン車が420万円。クリーンディーゼルが439万円。その価格差は、111万円~130万円となる。
ただ装備面を考慮すると、パノラミックサンルーフとナッパレザーシートが標準化されるため、クリーンディーゼルに設定される「ナッパレザーパッケージ」装着車の476万円が近い。その差は、74万円。
さらに令和3年度環境省CEV補助金の対象車であるため、20万円が補助される。そうなれば、価格差は54万円まで抑えられる。さらに自治体によっては、独自の補助金制度が設けられていることもあるので、より圧縮することができる人もいるだろう。
また日常では、65kmのEV航続距離が確保されているため、ほぼ電気のみで走ることもできる。通勤など愛車で毎日一定の距離を走る人には、コスト面のメリットも大きいといえ、そう高い買い物にはならないはずだ。
そして何よりも、快適な乗り心地と電動化の静かな走りがもたらす快適性は、シトロエン独特の魅力をより高めてくれるのは間違いなく、シトロエンファンや快適性を重視するユーザーには、気になる存在となりそうだ。
最も高価なC5エアクロスSUVとなるが、ナッパレザーと大型サンルーフを標準化し、豪華仕様となっている点も見過ごせないところ
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