2025年のF1シーズンにおいて、デビューしたばかりの新人ドライバーが、あまり改善のチャンスを与えられることなく、すぐさまシートを追われるという状況が相次いで発生している。
レッドブルはリアム・ローソンをたった2戦だけで見限り、ジャック・ドゥーハンもアルピーヌのレースシートを僅か6戦で奪われることになった。
■オークスのアルピーヌ代表辞任、原因はブリアトーレとの不仲ではない?「あくまで個人的決断。フラビオは父のような存在」
F1は常に「沈むか泳ぐか」の世界だ。ドライバーがパフォーマンスで劣っても、それを埋め合わせるだけの資金を持ち込めば居場所が確保されることもあった。ただ野心的なチームであれば、最終的にはやはり速さを求める。ウィリアムズがニコラス・ラティフィやローガン・サージェントと決別した例のように。F1のシートはわずか20しかなく、近年ではその傾向が強まっているように見える。
アルピーヌは、ルノーが2016年末に買い戻したF1チームであある。それ以来、常に再建モードにあり、最新の体制転換では元チーム代表フラビオ・ブリアトーレが「エグゼクティブ・アドバイザー」として復帰し、ルノーCEOルカ・デ・メオに直接進言できる立場になった。チーム代表には若いオリバー・オークスが就任したが、今週突然辞任。その事実から察するに、オークスの権限は限定的だったようだ。
■ブリアトーレの”思惑”
ブリアトーレといえば、1991年にジョーダンからデビューしたミハエル・シューマッハーを1戦で引き抜いてベネトンに加入させた人物でもあり、2008年のシンガポールGPでの”クラッシュゲート”の主犯でもある……ダーティなイメージに事欠かないひとりだ。
そんな彼が最近助言したのは「ルノーのパワーユニット(PU)は使い物にならない」ということ。その結果ルノーは2026年レギュレーション向けのPU開発を中止し、来季からはメルセデスのカスタマーPUを使うことになった。さらに育成ドライバーラインアップを大幅に拡充した。
今年の1月初旬には、平川亮がラインアップに加わった。当時平川は「F1のレギュラードライバーを目指すなら、アルピーヌが一番近いということで、今年はアルピーヌのリザーブドライバーになりました」と語っており、その頃からドゥーハンに対するプレッシャーは大きくなっていたはずだ。その後コラピントもラインアップに加わり、ドゥーハンに対する風当たりはさらに強くなった。なお平川は、レギュラーシート獲得の可能性が薄れたと判断したからなのか、日本GPの直後にハースへと移籍している。
コラピントの昇格を推す声は、特に南半球から日に日に高まっていった。そしてドゥーハンはなかなか光るところを見せられず、その南半球からの声は、どんどん辛辣になっていった。その荒れ模様により、チームはSNS投稿のコメント欄に制限をかけるという事態にまで至った。
昨年8月に2025年の正ドライバーとして発表された時点で、ドゥーハンの足元はすでに不安定だった。アルピーヌが昨季最終戦でエステバン・オコンを降ろし、ドゥーハンを代役で起用した時点で、彼のレース契約には「ある一定数のグランプリのみ」という条件付きだったという噂は、関係者の間で囁かれ始めていた。
ローソンに比べて斧が振り下ろされるのは遅かったが、理由は概ね同じだった。チームがドライバーに対する信頼を失うと、そのポジションは持ちこたえられなくなる“転換点”が訪れる。
レッドブルにとってローソンを見限るのに2戦もあれば十分だった。予選Q1すら突破できなかったため、RB21に適応する見込みがないと判断。角田裕毅に交代させることを決めた。角田は安定してQ3に進出し、決勝でもポイントを獲得できるようになってきており、その判断は今のところは成功だったと言えるだろう。
レッドブルがドライバーを急遽変えることは過去にもあったことで、彼らの育成プログラムは、もともと「使えなければ即切り」の構造。通常は3年程度は様子を見るものであり、ローソンもまだ完全に切り捨てられたわけではない。
■区切りは日本GPだった?
motorsport.comの取材によれば、ドゥーハンにとっての“転換点”は日本GPだったという。彼はフリー走行中にDRS(ドラッグリダクションシステム)を開いたまま1コーナーに突っ込み、コントロールを失って大クラッシュ。マシンに深刻なダメージを与えた。アルピーヌはこれをすぐさま「ドライバーのミス」として発表……これはドゥーハンにとっては驚きだったかもしれない。というのも、シミュレータではDRSを開いたまま第1コーナーに進入しても問題なかったため、リアルではやるなとは警告されていなかったのだ。
このことは「ホットコーヒーに注意しろと警告されなかった」と言って訴訟を起こした人々と同列に見る向きもあるだろう。しかし、ドゥーハンにとってはシミュレータと現実との乖離があまりに大きかったのだ。
それ以来、彼は自身の将来について問われる際の態度が明らかに不安定になり、気分にムラがある時もあったという。特にマイアミのスプリント予選でコースインが遅れ、アタックに間に合わずSQ1敗退となった時の彼の無線からは、明らかに不満の色がにじみ出ていた。この後、彼は上層部から慰められるどころか、公に不満を示したことを理由に叱責されたという。
アルピーヌ内にも彼を支持する人物は残っていた。しかし、ドゥーハンの走りによってそれが裏打ちされなければ、説得力は乏しい。
■重要な”第一印象”
ドゥーハンの代わりに抜擢されたコラピントは、ウイリアムズでの9戦で「遅くない」ことを十分に示しており、リスクの低い交代カードと見なされた。昨夏、ウイリアムズがローガン・サージェントを途中解雇してコラピントを起用した際は賭けとも思われたが、いまや“壁に突っ込むこともあるが速い”という印象が定着した。
さらにブリアトーレにとって魅力的なのは、南米で絶大な人気を誇るコラピントの登用によって、新たなスポンサー獲得の可能性が開けることだ。彼の昇格が「5戦限定の評価期間」とされているのは、成績が芳しくない場合やスポンサー資金が期待外れだった場合に備えた、ブリアトーレらしい逃げ道確保だ。
このようなやり方は、若手ドライバーの能力を引き出すには不適切だと考える人もいるだろう。チーム代表を辞任したオリバー・オークスもそのひとりだったのかもしれない。
この若手ドライバーがあっという間に切られてしまう理由を表現するとしたら、「商業」がその大きな要素のひとつとなる。F1はアメリカ市場への参入によってかつてないほどグローバル化しており、チームは数億ドル規模の価値を持つフランチャイズとなった。しかし、依然として資金には飢えている。ゆえにドライバーのイメージは商業的成功に直結し、「敗者ブランド」と見なされるとそれだけで価値が下がる。
次の要素は、現行のグラウンドエフェクトカーの難しさだ。このレギュレーションが成熟期を迎えるにつれてマシンは限界に近づき、より扱いづらくなっている。あのルイス・ハミルトンですら苦戦しているほどだ。
コスト制限によりテストの機会は減少し、若手ドライバーが実車に乗る機会は過去より少ない。新人テストや旧車テスト枠はあるが、十分とは言えない。
さらにもうひとつの要因は、F1の古い格言「すべては印象で決まる」ということだ。オリバー・ベアマン(ハース)は2025年シーズン、予選成績はやや不安定である。しかしドゥーハンやローソンのように即クビにはなっていない。
これは彼が所属するハースの小松礼雄代表が“幸福かつプロフェッショナルなチーム運営”をしていること、そしてベアマンのフェラーリでの代役デビュー(2024年サウジアラビアGP)が印象的だったことが大きい。あのデビューの輝きが、後のミスなどを“なかったこと”にしてしまったのだ。もしもジェッダでの走りがなければ、彼の印象も全く違っていたかもしれない。
ジュニアカテゴリーからは次々に新しい才能が現れ、チームはますます若年層からの囲い込みを進めている。アルピーヌ、レッドブル、マクラーレンなどはすでにカート時代からドライバーを契約しているほどだ。
このような構図では、人材の“消耗”はある程度容認されてしまう。戦場に送り込まれる新兵の供給は途切れることはないのだ。
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