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【求められるもう少しの余裕】アウディA6アバント 40 TDI(最終回)長期テスト

掲載 更新 1
【求められるもう少しの余裕】アウディA6アバント 40 TDI(最終回)長期テスト

積算 9052km プレミアムとしての余裕

text:Damien Smith(ダミアン・スミス)

【画像】アウディA6 サルーンとアバント 全47枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


丁度いい余裕。アウディA6のようなクルマで重要なポイントだと思う。

長期テストで乗る前から、アウディA6が良いクルマなことはわかっていた。内外ともに洗練された仕上がり。滑らかで快適なドライビング体験。ふんだんに搭載された安全技術。優れた燃費性能。

素晴らしいデキだ。一方で、ドイツご三家のプレミアムブランドとしての期待値に応えるには、細かな部分も重要となってくる。特にA6クラスの価格となれば、傑出した仕上がりすら求められてくる。

その達成は、アウディのポジションを考えると少々難しい課題なのかもしれない。アウディA4は、一般的な市場の中型のファミリーカーとして、共通の基準がある。A5は、それのスポーティ版。

さらに上のアウディA8は、ドライバーかリアシートに座るかは関係なく、リムジンとしての優れた体験が求められる。その中間にあるA6は、そのどちらも満たす必要がある。

幅広いアピール力は、ブランドのDNAが表れる部分でもある。家族に優しく、贅沢な雰囲気を味わえ、高いパフォーマンスも必要。BMWメルセデス・ベンツのライバルに感じられる余裕が、アウディにも感じ取れるのか。長期テストで気にしてきた部分だった。

今回は、4ドアのサルーンとステーションワゴンのアバントを乗り継いできた。初めに前半で乗っていた、わずかに力強く魅力でも上だった、クワトロのサルーンを振り返ろう。

4ドアサルーンからアバントへ

選ばれたのはトップグレードの50 TDIで、すでに安くはない4万9270ポンド(704万円)の車両価格に、2万ポンド(286万円)以上の沢山のオプションが追加されていた。

デイトナグレーと呼ばれるボディカラーのA6は、2トーンのV型5スポーク・アルミホイールで見た目もスマート。車内はスター・ウォーズの宇宙船のような雰囲気があった。

磨き込まれた金属パーツと対象的な、ダークトーンのラグジュアリーな雰囲気。夜間に灯される車内の照明は、宇宙感を一層高めていた。

130kmほどある通勤距離も、3.0LのV6ディーゼルエンジンとオプションのエアサスペンションで快適に感じられた。4輪操舵は、実際の交通環境での走りを支えてくれる機能だった。

その後、残り半分の期間はアバントに乗り換えた。氷河のように輝く白いボディは、サルーンと変わらぬ美しさ。筆者の場合、大柄なSUVよりステーションワゴンの方が好みだ。

グレードやスペックはサルーンより下の40 TDI。インテリアの素材は若干質素になるが、それでも余裕を感じられる雰囲気が残る。ダッシュボード中央の大きなタッチモニターは、同一のものだった。

50のサルーンではガラス張りのタッチボタンだった部分は、物理的なボタンに置き換わっている。でも、AUTOCARでは良く話題になるが、押す位置や反応がわかりやすい従来のボタンの方が、筆者も良いと思う。

楽しみに感じたクルマでの通勤や旅行

アバントには2.0Lの4気筒ターボディーゼルが搭載され、クワトロではない前輪駆動。最高出力も下がったが、さほど強く実感させられるほどではなかった。充分に力強く、シャシーも上質。時折大きなワゴンボディを忘れるほど。

アバントとサルーンとの荷室容量の差も、実は驚くほど小さかった。サルーンは530Lとかなり大きく、アバントの方が余裕があるものの、565L。リアシートはどちらもリムジンのように広く快適。家族も喜ぶパッケージだ。

サルーンのエアサスペンションはお気に入りだったが、アバントのスチール製スプリングも、クッションの良い乗り心地が味わえた。小さなボートのように揺られることはなかった。

ステアリングホイールの操舵感はニュートラルで、18インチのホイールから充分なフィードバックが伝わってくる。ちなみにサルーンでは20インチを履いていた。そしてサルーンと同じように、アバントでもクルマでの移動や旅行がとても楽しみに感じた。たとえ通勤でも。

燃費は、ボディサイズを考えれば望外に良かった。ディーゼルエンジンには反発も多いと思うが、一度の満タン、73Lで1100km以上の距離が走れる。

英国での軽油価格は安くなく、一度満タンにすると80ポンド(1万1000円)ほどが必要。だが、エフィシェンシー・モードで走れば、優れた航続距離がいつも得られた。

これらはアウディに期待する通りの内容だと思う。目新しさはないかもしれない。でも、それだけではない。

慣れなかったエンジンの一呼吸

まず、50 TDIでも40 TDIでも、エンジンには気になる部分があった。加速時の一呼吸だ。ロータリー交差点や高速道路の合流で、安全に進むために必要なパワーが、必要な瞬間に得ることができない。

その一呼吸は明確で、時には気をもむほど。交通量の多い交差点では、いつも配慮していたと思う。

アバントは輝いていたが、刺激には乏しかった。BMWやメルセデス・ベンツで感じる、感覚的な高まり。スポーツモードに切り替えても、変化は限定的。

幅広い魅力を備えたクルマとして、仕上げることに成功はしている。しかしプレミアムさを高める、細かな部分の余裕や威厳までは得られていないように思う。必要だと考えなかったのかもしれない。

A6は素晴らしいクルマだ。だが数週間経って乗り慣れてしまえば、普通のクルマにも感じられてしまった。

長期テストが終了するいま、A6の40 TDIが名残惜しいかと聞かれれば、それほどでもないと答えてしまう。アウディらしいハイレベルの質感は、特に強いアピール力を備えていたのだけれど。

セカンドオピニオン

雨の長距離ドライブでは、まるで城にタイヤ付いたかのように静かに安定して走る。でも、その一芸だけで、個性は少し薄いと思う。短時間で乗り比べた程度では、ダイナミクス性能の違いはさほど強く感じられないかもしれない。しかし長時間乗るほど、BMW 5シリーズの方が毎日の満足感が高いことは間違いないだろう。 Richard Lane(リチャード・レーン)

テストデータ

気に入っているトコロ

上質なインテリア:どの仕様のA6を選んでも車内は快適で居心地が良い。ドライビングポジションも良好。
毎日のクルージング:A6は常に乗り心地が良い。高速道路でも郊外の国道でも、一貫性のある身のこなしだ。
優れた燃費:ガソリンスタンドへ寄る回数が減ったから、軽食をつまむ回数も減った。何しろ満タンで1100km以上走るのだ。

気に入らないトコロ

エンジンのタイムラグ:A6クラスのクルマとして、家族時のタメは許せないと思う。交通の流れに上手く合流するには、注意が必要。
タッチモニター:見た目は良くても、実際に「押せる」ボタンの方が常に良い。しかも安全だと思う。

走行距離

テスト開始時積算距離:339km
テスト終了時積算距離:9052km

価格

アウディ A6アバント 40 TDI スポーツ Sトロニック
新車価格:3万9850ポンド(569万円)
現行価格:4万1275ポンド(590万円)
テスト車の価格:4万6935ポンド(671万円)
ディーラー評価額:3万5250ポンド(504万円)
個人評価額:3万3000ポンド(471万円)
市場流通価格:2万8250ポンド(403万円)

オプション装備

テクノロジー・パック:1495ポンド(21万円)
大容量燃料タンク:115ポンド(1万6000円)
ダンピングコントロール・サスペンション:1150ポンド(16万1000円)
パノラミック・サンルーフ:1950ポンド(27万3000円)
グレイシャー・ホワイト・メタリック塗装:685ポンド(9万8000円)
ブラックレザー/アルカンターラ・スポーツシート:800ポンド(11万4000円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:21.2km/L
タンク容量:73L
平均燃費:18.0km/L
最高燃費:18.1km/L
最低燃費:16.0km/L
航続可能距離:1049km

主要諸元

0-96km/h加速:8.3秒
最高速度:239km/h
エンジン:直列4気筒1968ccターボチャージャー
最高出力:203ps/3750-4200rpm
最大トルク:40.7kg-m/1750-3500rpm
トランスミッション:7速デュアルクラッチ・オートマティック
トランク容量:565L
ホイールサイズ:8.0J 18インチ
タイヤ:225/55 R18
乾燥重量:1785kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:2400ポンド(6万5000円/1カ月)
CO2 排出量:124g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:526ポンド(7万5000円)
燃料含めたランニングコスト:526ポンド(7万5000円)
1マイル当りコスト:9ペンス(13円)
減価償却費:1万1600ポンド(165万円)
減価償却含めた1マイル当りコスト:2.23ポンド(320円)
不具合:なし

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みんなのコメント

1件
  • >>A6は素晴らしいクルマだ。だが数週間経って乗り慣れてしまえば、普通のクルマにも感じられてしまった。

    結局はダメって事か。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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