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軽いボディに3.0L直6のパワー BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(2)

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軽いボディに3.0L直6のパワー BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(2)

軽いボディに不足ないパワー コーナリングは病みつき

小さなステアリングホイールを切り込むと、BMW 530 MLEの鋭い回頭性に心が奪われる。その反応は、E12型の5シリーズ然とした、ラグジュアリーなインテリアの眺めとは一致しない。

【画像】南アフリカで生まれたM5の起源 BMW 530 MLE(E12型) M1に2002ターボ、3.0 CSL 最新M5も 全105枚

ノイエ・クラッセ時代を物語るように、キャビンは高くガラスエリアが大きい。運転席からの視界は、全方向に優れる。

今回のクルマには、ステアリングコラムにエクステンションが追加され、ステアリングホイールの位置が持ち上げられている。身長の高いドライバーでも、居心地がいい。

サスペンション・スプリングとアンチロールバーは引き締められ、ダンパーはビルシュタイン社製。シャシーとコミュニケーションを取りやすく、空のスチール缶を振り回すように軽妙だ。

リアアクスルには、ボルグワーナー社製のリミテッドスリップ・デフが組まれ、下品なほどにテールハッピーというわけではない。どの程度のスライドを誘えるか、正確に予想できる。

軽いボディに不足ないパワーが組み合わされ、コーナリングは病みつき。フロントノーズを狙った方向へ回し、アクセルペダルを加減しながら鋭い脱出を試みる。後方からは、聴き応えのある直列6気筒サウンドが放たれる。

ホットハッチ的にショートレシオな5速MT

この時代のBMWエンジンは、魅力的な音響体験を与える。目の細かいメッシュで覆われた6本のトランペットが、吸気ノイズも響かせる。4000rpmを超えると威勢が増し、6000rpmまで引っ張れば、レーシングカーさながらのクレッシェンドが待っている。

生々しいサウンドが、モータースポーツを前提としたホモロゲーション・モデルであることを証明する。スーパーカーのM1を彷彿とさせるほど。アイドリング時も、積極的なカムプロファイルの影響で穏やかではない。

さらに、ゲトラグ社製の265型5速マニュアルがベストマッチ。1速が左下に飛び出たドッグレッグ・パターンで、中速域での喜びを増長させる。多くのMモデルのように、ドイツのアウトバーン向きなハイレシオではない。

5速でのギア比は、1000rpm当たり約32km/h。上級サルーンではなく、すばしっこいホットハッチへ与えられるようなショートさで、思い切り直列6気筒エンジンを回せる。

BMW SAが施した巧妙なチューニングによって、ラフな印象は与えない。快適性も保たれている。大幅な軽量化にも関わらず、走行中は粗野な振動音とも無縁だ。

サスペンションも強化されているが、荒れた路面の一般道との相性は好ましい。隆起部分や舗装の剥がれた穴をしなやかに処理しつつ、姿勢制御は適度に引き締まっている。乗り心地は決して悪くない。

力強さと軽さ、敏捷性が、高級感や快適性と調和

逆バンクのコーナーで不意に隆起部分へ出くわすと、流石にリアのトレーリングアームが暴れるような印象は受ける。とはいえ、落ち着きを乱すほどではない。1970年代の南アフリカと変わらないような英国の路面状態にも、対処してみせる。

力強さと軽さ、敏捷性が、高級感や快適性と見事に調和している。530 MLEの価格は当時の520の2倍と高額だったが、BMW SAは当初の予定を超える227台を提供した。その理由を理解できる仕上がりだ。

今回ご登場願った530 MLEは、1976年初期の1台。3年前にグレートブリテン島へやって来たという。110台の限定生産が計画されていたものの、人気を受けて1977年にも117台が追加されている。

ボディカラーは、1976年の前期型ではホワイトのみだったが、後期型には3色が設定された。パワーステアリングやパワーウインドウなどの快適装備も、オプションで追加できるようになった。

「530 MLEは、土曜日のレースに勝ったクルマが月曜日のディーラーで売れる、という典型的な例でした」。2019年にレストアを終えたこのクルマに対し、かつてBMW SAのCEOを務めていたティム・アボット氏が振り返っている。

「BMW南アフリカが、スポーティなブランドとして認識されるようになりました。モータースポーツへの本格的な参戦の道も、切り拓かれたといえます」

BMW製スーパーサルーンの青写真

多くの人が、BMW Mモデルの元祖はミドシップ・スーパーカーのM1だと考えているだろう。手を組んだランボルギーニの影響で開発が遅れ、成功といえる結果は掴めなかったかもしれないが、ドラマチックなモデルを起源とした方が確かに理想的だと思う。

1990年代まで、人種差別が制度として残っていた国で作られたクルマより、遥かに望ましいブランドの筋書きになる。それでも、南半球で誕生した530 MLEが、BMW製スーパーサルーンの青写真を描いたことは間違いないだろう。

1980年の欧州市場へ投入された、E12型M535iへ小さくない影響を与えたことは明らかだ。多くのファンを獲得した、M5の本当の起源がここにある。

協力:イアン・バーギン氏、デューク・オブ・ロンドン社

BMW 530 MLE(1976~1977年/南アフリカ仕様)のスペック

価格:1万595ランド(新車時)/10万ポンド(約1810万円)以下(現在)
生産台数:227台
全長:4620mm
全幅:1690mm
全高:1426mm
最高速度:207km/h
0-97km/h加速:9.3秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1233kg
パワートレイン:直列6気筒2986cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:200ps/6000rpm
最大トルク:28.1kg-m/3700rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

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みんなのコメント

1件
  • s60********
    右のテールランプが取れそうになっているのも味があってイイ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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