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ダイハツ 新世代グローバル・プラットフォーム「DNGA」を詳細解説

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ダイハツ 新世代グローバル・プラットフォーム「DNGA」を詳細解説

ダイハツは2019年6月6日、かねてから開発中とされていた新世代のグローバル・プラットフォーム「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」を正式に発表した。DNGAは日本市場から東南アジアを中心とした新興国向け軽自動車・コンパクトカーの次世代スタンダードとなることを目指し、ゼロから開発されたプラットフォームとパワートレーンを意味している。この新技術は、7月に発売予定のスーパーハイト軽自動車ワゴン「タント」から採用され、年内に第2弾となるニューモデルを発売する計画だ。

軽からBセグメントまで

スバル フォレスターを一部改良

DNGAは、ダイハツの商品基本コンセプトである「良品・廉価」を前提にしながら、今後のCASEに対応し、また同時にスピーディな商品開発を可能にする「一括企画開発」の手法を取り入れ、パワートレーンを含む全てのプラットフォーム構成要素をゼロから刷新している。

そのポイントは、日本専用の軽自動車を基点にA、Bセグメントの小型車まで、設計思想を共通化した「一括企画開発」を採用し、これらのセグメントをカバーできるフレキシブル・プラットフォームとしていることだ。同時に時代へ適合させるために車両性能の進化、パワートレーンの進化、先進安全性能の進化という3要素を同時に実現することも開発目標とされている。

さらに、今後の電動化やコネクトサービスの実現など、CASE対応を前提にした設計構想を盛り込んでいる。したがってハイブリッド化や電気自動車も想定されており、同時に次世代のインフォテイメント、テレマティックスなどを想定した電子プラットフォームも採用している。

DNGAの基本構成

DNGAの特長は、「小は大を兼ねる」を合言葉に、競争激化が予想される新興国市場へのスピーディな商品展開を想定し、軽自動車用からBセグメントまで拡張できるフレキシブル・プラットフォームとし、軽自動車で「最小単位」を極めた上で小型車まで設計思想を共通化する「一括企画開発」手法を採用。そして一括企画開発と連動した部品検討活動により、軽自動車から小型車までの部品共用化率は75%以上になり、より早く、よりタイムリーな商品開発が可能になっている。

そして軽自動車から小型車まで設計思想の共通化を行なうために、エンジン、サスペンションの取付位置、骨格配置、着座位置など、共通化できるサイズや位置をあらかじめ織り込んでデザインし、今後全ての新型車をこの設計思想をベースに相似形で開発することで、良品廉価の実現と開発の効率化を両立させることにしている。

DNGAが目指す性能目標は、「クラスを超えた安定感と乗り心地」としている。コストアップすることなく目標性能を実現できる最適な部品配置に向け、全てのプラットフォーム構成要素を新開発し、サスペンションとその取り付け点、アンダーボディ、エンジン、トランスミッション、シートといった全ての構成要素を刷新している。

シャシーの進化

サスペンションは、安定感と乗り心地を最優先にしたサスペンション・ジオメトリーを新設計。クルマの挙動や路面からの入力を最適にコントロールできるサスペンション・ジオメトリーを前提に、シャシー部品の構造を合理化し、部品点数を削減することで、軽量化を実現している。

フロント・ストラットは、キングピン軸をわずかにネガティブ・オフセットとし、ロール軸を低減。またロール時のアッカーマン変化も縮小している。これらにより素直な操舵フィーリングを目指しているのだ。フロント・サブフレームはフラット化され、軽量さと高剛性を両立させている。

ストラット・アッパーマウントは1点止めを採用、ロアアームのプレス板金化、前後ともに中空スタビライザーを採用するなどの軽量化を行ない、前後サスペンションで約10kgの軽量化に成功している。

リヤのトーションビームはボディ取付点のブッシュを逆ハの字配置とし、ロール時のオーバーステア傾向を低減。またリヤのダンパー取付角は前傾させ、バンプストッパーはウレタン製を採用するなど基本性能を向上。

前後のサスペンションのアンチダイブの変化率を抑えることで、走行中のピッチングを抑制し、フラットライドを実現しているという。

高剛性ボディ

プラットフォームは、サスペンションからの入力を受けるフロントとリヤの着力点間をスムーズに結合し剛性を高め、サスペンション応答性を向上。また、衝撃入力を合理的に受け止めるために主要骨格のスムーズ化などにより、10年先を見据えた衝突安全性能、高強度、振動騒音性能を確保。プラットフォームを軽量化しながら上下曲げ剛性は従来比30%向上させている。

骨格の構造合理化による各部の板厚最適化や部品点数の削減、アッパーボディの高張力鋼板の採用率を10%高め、さらに樹脂部品の活用、外板や隔壁の板厚最適化などにより車両全体で80kgの軽量化を実現している。なおアッパーボディは従来からのサイドパネルの剛性を高めるDモノコックのコンセプトを継続して採用。衝突安全性に関わる要所には980MPa級の冷間プレスによる超高張力鋼板を採用している。

新開発KF型エンジン

DNGA用のエンジンとして、今回はKF型3気筒エンジンが紹介された。軽自動車用エンジンのKF型は従来と同じ型式名だ。これは63.0mm×70.4mmというボア・ストロークに変更がないためだが、実質的には新開発エンジンとなっている。

DNGA用として全てのエンジン部品を見直し、エンジンの燃焼を重視することで、燃費、動力性能、環境性能などすべての要素で性能を高めている。基本コンセプトは、コンパクト・ペントルーフ型燃焼室による燃焼速度の向上で、狭いバルブ挟み角、ストレートな吸気ポートを採用。吸気ポートの燃焼室入り口部には突起を設けて、吸気を剥離させ、強いタンブル流を発生させ、低負荷でも急速な燃焼を実現している。

吸気ポートは気筒2本の独立式で、それぞれにインジェクターを装備。噴射する燃料の形状を従来より大幅に霧化性能を向上させることでポート内や燃焼室内への燃料付着を低減し、シリンダー内への燃料流入率を向上させている。

またポンピング損失を低減するため、最大で30%に達する大量EGR採用。EGRクーラーも装備している。こうした大量EGRを使用するため、点火システムは日本初となる「マルチスパーク(複数回点火:2回点火を使用)」システムを採用してシリンダー内での確実な着火と燃焼速度を早め、ノッキングを抑制している。なお、可変バルブタイミング(VVT)は吸気側に装備。軽自動車用のため低中速のトルクを重視しており、アトキンソンサイクルは採用していない。

排気マニホールドは、シリンダーヘッド一体型の集合タイプとし、排気ガスの温度低下を抑制し、触媒の浄化性能を向上させている。

このように、原理原則を重視したエンジンにより、走りと、軽自動車用として初となる最高レベルの低排ガス基準を両立させている。

D-CVTトランスミッション

CVTトランスミッションも大幅に刷新した。従来のダイハツ内製のCVTは軽量・コンパクトを主眼にしており、変速比幅は5.3と狭かった。しかし今回はDNGA用に革新的なD-CVTを開発し、変速比幅を拡張し伝達効率も大幅に高めている。

D-CVTとはデュアルモードCVTを意味し、世界初となるスプリットギヤ構造としている。これにより変速比幅は7.3まで広がり、同時に伝達効率も高め、高速でのエンジン低回転化、燃費の向上を果たしている。なお、この新CVTはトルク容量100Nmの軽自動車用と、Bセグメントまでカバーできるトルク容量150Nmの2種類が設定される。

D-CVTでの発進は、通常の金属ベルトの変速が担当し、一定の車速に達するとギヤ軸側にも動力が伝達され、金属ベルト軸による駆動とギヤ軸による駆動が並行して行なわれる3軸構成となっている。そしてギヤ軸に設けられた遊星ギヤにより、両軸の駆動力を一体化させるシステムで、駆動力を分割して伝達するためにスプリットギヤ式と呼ばれる。ギヤは駆動力の40%~90%を負担するので、金属ベルトのみによる駆動より伝達効率が向上する。

この結果、金属ベルトの負担が低減できるので小型車用も軽自動車用と同一の金属ベルトが使用でき、構造的にも軽量・コンパクトにに仕上げられている。ちなみにインプット軸とデフ軸の距離は168mm、CVTを構成するプライマリー軸とセカンダリー軸の距離は136mmで、いずれも世界最小だという。

結果として、加速性能の向上、60km/h走行時でエンジン回転数は200rpm、100km/h走行時では550rpmの低回転化を実現している。

運転支援システム

今後、ますます重視される、安全技術、運転支援技術はデンソー製のステレオカメラを装備し、独自の制御ロジックによりこれまでのスマートアシストIIIに「全車速追機能付きACC」など運転支援機能を新たに追加している。

ACCは車間距離や車速を維持し、停車時まで制御可能(先行車ありで0km/h~100km/h、先行車なしの場合は40km/h~100km/hで作動)になっている。またレーンキープアシスト(60km/h以上で作動)、アダプティブ・ドライビングビーム、ブレーキ制御付き前後誤発進抑制などを採用。また標識認識機能は「進入禁止」標識を識別する。

さらに新たにパノラマモニター装備車は、パノラマモニター用カメラの中で、左右のドアミラーに装着されたカメラを利用し、駐車枠の白線を検出して駐車支援を行なう「スマート・パノラマパーキングアシスト」を装備。ディスプレイに操作ガイドが表示されるとともに、ステアリング操作が自動で操作される。ドライバーはガイドに従ってシフト操作と加減速だけを行なうシステムだ。このシステムは新たなセンサーなしで、低コストで実現しているのが特長だ。

なおDNGAでは今後のCASEに対応した電子プラットフォームを採用しており、インフォテイメント、運転支援システム、コネクテッド技術にも適合できるようになっており、今後も運転支援システムやインフォテイメントはバージョンアップさせていく予定だ。

ダイハツはDNGAを導入することにより、今後の新型車の投入ペースは従来の1.5倍にスピードアップし、2025年までに15ボディタイプ・21車種を展開する計画だという。そして2018年実績の生産台数175万台を2025年には250万台にする青写真を描いている。

DNGA第1弾となる新型タントは間もなく登場するが、どのような性能に仕上がっているか興味深い。

Automobile Study

新型タント特設サイト
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ダイハツ 公式サイト

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