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初試乗 ジャガーFペースSVR V8スーパーチャージャー 遅れて現れたお手本

掲載 更新
初試乗 ジャガーFペースSVR V8スーパーチャージャー 遅れて現れたお手本

もくじ

どんなクルマ?
ー 予定より9ヶ月遅れた発表の理由とは
どんな感じ?
ー 最高出力は550psながら軽くない1995kg
ー パワーアップに応じてシャシーもアップデート
ー 利便性もよく居心地の良いインテリア
ー ハイパフォーマンスSUVのお手本
「買い」か?
ー パフォーマンスと実用性の稀有な両立
スペック
ー ジャガーFペースSVRのスペック

試乗 BMW X7 xドライブ30d 英国で評価 インテリアは上質 X5に近い組成

どんなクルマ?

予定より9ヶ月遅れた発表の理由とは

「不特定の部品供給に関わる障害」ジャガー・ランドローバー社、JLRのスペシャルビークル・オペレーションズ(SVO)ブランドの3番目のとなるパフォーマンスモデルの発表が、1年近い遅延となった理由がこれ。今回のジャガーFペースSVRのことだ。


ジャガーの公式な情報によれば、2018年7月に予定されていたプレス発表まで数週間というところで、ジャガーが発注したものと、生産に向けて納品されたコンポーネンツとの内容が異なることが判明したらしい。結果的に、この問題が解決するまで、モデル発表が延期することが決定されたのだという。


しかし、複合的な部品だとはいえ、コンポーネンツの課題解決に9ヶ月も要するのだろうか。もっと別の理由もあると思えてならない。SVOの新しいボスは、少なくともわれわれの知る限り1モデルの計画を中止しているし、JLRの大きな企業損失も大きく影響しているのではないだろうか。ちょうどこのホットなFペースの開発から当初の発表にかかる期間と、先の34億ポンド(4828億円)にも達する赤字のニュースのタイミングとが重なるのは、偶然なのだろうか。少なくともわれわれのもとには、様々な噂や情報が聞こえてきている。


革新的な新しいボス、ミヒャエル・ヴァン・デ・サンドが、彼のはじめて手がけるクルマとして大幅な手直しを求めたことで、発表が遅れたという情報もある。9カ月という期間はわれわれには長く聞こえるが、自動車業界の人々にとっては、ワイパーアームやラゲッジスペースの車内灯を見直す以上の事ができる時間であることは、間違いないだろう。

どんな感じ?

最高出力は550psながら軽くない1995kg

アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオやポルシェ・マカン・ターボ、メルセデス-AMG GLC 63Cなどへ対する、ジャガーの回答がFペースSVRとなる。中クラスのSUVを見渡せば、多くのモデルに7万ポンド(1015万円)前後のハイパフォーマンス・グレードが存在しているが、2016年に発表されたFペースの標準グレードは4万~5万ポンド(580万~725万円)程度。JLRの広報担当社にさらに上の7万ポンド(1015万円)クラスの存在を確認しても、しばらくの間は慎重に否定していた。


ジャガーがカードとして持っている、スーパチャージャーで加給する5.0ℓのV型8気筒エンジンは、周囲を見渡しても珍しい存在で、Fペースに突出したパフォーマンスを与えるのに好適なユニットでもある。しかし、さほど方程式は単純ではないところがクルマの面白いところ。


確かに550psというパワーは、ジャガーのいうとおり群を抜いたスペックではある。一方で車重は1995kgにも及んでおり、ライバルモデルの中には200kgほど軽量なクルマも存在している。その結果、0-100km/h加速に要する時間は4.3秒で、充分に良好な数字ではあると思うが、メーカー公称値で比較すると、いくつかのライバルより劣っていることになる。


このような重量のかさむSUVで、加速競争をすることは無駄なことだと感じる読者もいるかも知れない。われわれとしては、ロードテストの機会でより意味のあるパフォーマンステストを実施する予定なので、そちらにはご期待いただきたい。また、果たしてパワーで劣るハイパフォーマンス・グレードのライバルの方が、本当にFペースSVRより0-100km/h加速で速いのか、気になる読者もいるのではないだろうか。

パワーアップに応じてシャシーもアップデート

さて、FペースSVRには標準グレードと同じスチールコイル・サスペンションが装備されているが、スプリングレートはフロントで30%、リアで10%ほど高められている。また設定を見直されたアダプティブ・ダンパーが標準装備となっている。


アルミホイールは22インチの鍛造タイプが選ばれ、軽量化されたハブには396mmの直径を持つ、強化されたディスクブレーキが備え付けられる。トランスミッションはZF社製の8HP70型と呼ばれるトルクコンバーター式の8速ATが搭載される。


そこへ、基本的には後輪へトルクを伝達し、必要に応じて前輪へも分配するスタンバイ式となる、クラッチベースの4輪駆動システムが組み合わされる。また、左右後輪の間に搭載されるトルクベクタリング機能を有したeデフは、まったく新しいコンポーネンツとなり、従来のSVOモデルに採用されていたものとは異なるという。


FペースSVRのインテリアデザインは、レンジローバー・スポーツSVRで見られるような、派手なカラーコンビネーションは避けられている。今回のテスト車両の場合、とても上品で控えめな、タンとブラックのレザーの組み合わせの中に、カーボンファイバー製の装飾パネルが慎重に錬られてレイアウトされている。

利便性もよく居心地の良いインテリア

車内空間の広さや利便性もクラス標準で比較しても優秀だといえ、それ以外のインテリアはとても好印象なもの。JLR社製の最新のインフォテインメント・システムは採用されておらず、インテリア自体も同社の中で最新のデザインというわけでもないものの、充分にリッチで快適で、居心地が良い空間だ。


ひとつわたしが残念に感じたのは、レンジローバー・スポーツSVRに採用されていた、スポーツシートがFペースSVRでは選べないないこと。背もたれにヘッドレストが一体化されているもので、座り心地も快適なうえに、サイドサポートに包まれながら深く腰掛けると、頭の位置もちょうどいいポジションが取れる、わたしのお気に入り。


運転席へ腰を掛け、フロントウインドウから外を見渡すと、フランス南部ニースの山肌には、大きなウェディングケーキに緩くかけられたリボンのように、ひらひらと曲がった道が延びている。このFペースは、渓谷にうねる狭い道では、そのボディサイズを実感してしまうクルマではある。ライバルのポルシェ・マカンやアルファ・ロメオ・ステルヴィオなら、どう感じるのだろうか。


エンジンをスタートさせ、クルマをするりと発進させる。きついコーナリング時ではわずかなボディーロールを発生させるものの、横方向のグリップは強力で、クルマの向きを変えるためのインプットに、想像以上にスマートなレスポンスを示してくれる。かといって、さすがに体格のいい運動選手のように機敏に動くというわけではないけれど。

ハイパフォーマンスSUVのお手本

操縦性も良いいが、スピードを高めていくと、車重の重さが顔を見せ始めるようだ。だが、ハンドリングのレスポンスはどちらかといえば穏やかで漸進的なものだから、自然なフィーリングでクルマの状態もつかみやすい。さらに7万ポンド(1015万円)級のSUVに相応しい、快適な乗り心地も兼ね備えている点は、高く評価できるだろう。


加えてエンジンの輝きが眩しい。パワー感だけでなく、特徴の強い音響的な面でも、ターボ加給されるV8とは全く異なる引き込まれる魅力を備えている。回転数にシンクロするように発するエンジンノイズと、高回転域まで回した時の咆哮のバランスも素晴らしい。


69.2kg-mという極太のトルクは2500rpmから発生するから、一生懸命にアクセルを踏む必要も、変速に気をもむ必要もなく、一切不満のないスピードに乗ってFペースは突き進む。中回転域を保てば余裕もシャクシャクで、この手のハイパフォーマンスカーに期待する上質さも味わえる。


FペースSVRはスムーズにも、かなり活発にも、ドライバーの希望通りに走らせられる。それでもギアを2段ほど下げて、アクセルを踏み込んだ時の情熱的な振る舞いこそ、このクルマの真価が表れる時だと感じた。わたし個人の意見としては、多目的でありながら快適性も求めるドライバー視点で見た場合、ハイパフォーマンスSUVのお手本にもなり得る仕上がりだと思う。

「買い」か?

パフォーマンスと実用性の稀有な両立

このクラスなら、間違いなくお勧めできる1台。もちろん軽くはない中クラスのSUVだから、我を忘れて連続するコーナーへ飛び込み、一体となって踊るようなコーナリングを楽しむクルマではない。何人かの友人や家族と一緒に、記憶に残るようなロードトリップを、テンポよく楽しむためのクルマだといえる。


だとしても、快適性や実用性、その他高級車に求められるような点で、同乗者へ不満を与えることはないだろう。むしろ行き渡る上質さが、車内を笑顔で包んでくれるはず。ジャガーFペースSVRよりも華やかで、速く、エキサイティングなクルマがあることも事実ながら、これほどのパフォーマンスを備えつつ、優れた実用性も持ち合わせているクルマは、とても稀有な存在ではないだろうか。

ジャガーFペースSVRのスペック

■価格 7万5335ポンド(1092万円)
■全長×全幅×全高 4746×1936×1652mm(標準グレード)
■最高速度 283km/h
0-100km/h加速 4.3秒
■燃費 8.0km/ℓ(WLTP複合)
■CO2排出量 -
■乾燥重量 1995kg
■パワートレイン V型8気筒5000ccスーパチャージャー
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 550ps/6000-6500rpm
■最大トルク 69.2kg-m/2500-5500rpm
■ギアボックス 8速オートマティック

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