2017年12月14日、スズキは軽自動車のスーパーハイトワゴン「スペーシア」のフルモデルチェンジを行ない、同日から発売を開始した。
ライバルのホンダN-BOXがひと足早く2017年9月に新型を発売したが、このN-BOXを追うように新型スペーシア、スペーシア・カスタムが登場した。この新型スペーシアは新世代の「HEARTECT(ハーテクト)」プラットフォームを採用し、商品コンセプトやデザインも根本的に見直すことで、従来の軽自動車の常識を破るクルマに仕上げているのがハイライトだ。
スズキ 安全装備を充実させた新型「スペーシア」「スペーシア カスタム」を発売
軽自動車のスーパーハイトワゴンは、これまでは子育て世代をターゲットに、機能性、利便性、実用性能を徹底追求してきたが、新型スペーシアは子育て世代に限定せず、若い世代のライフスタイルにもフォーカスし、幅広い年代層の家族や仲間と一緒に楽しく過ごせるクルマに位置付けた。開発のキーワードは「ワクワク」が選ばれ、新しいスーパーハイトワゴン像をアピールしている。
そして、デザインや質感を革新すると同時に、予防安全技術の「スズキ・セーフティサポート」を導入し、より安心して日常で使うことができるクルマとしてるのだ。
新型スペーシア、スペーシア・カスタムのアピールポイントの1番目は、軽自動車初となる後退時ブレーキサポートや、フロントガラス投影式のヘッドアップディスプレイ、交通標識認識、360度3Dビュー機能付き全周カメラモニターなどの予防安全、運転支援システムの採用だ。
2番目は、従来の実用重視のデザインから、ワクワク感のある独自デザインの採用で、ハードなスーツケースをモチーフにした、練り込まれたデザインを採用。軽自動車スーパーハイトワゴンとして新しい世界観を表現している。
3番目は、使い勝手がより、より広い室内スペースを実現するためにパッケージングをさらに追求し、低床化、スライドドアの開口面積の拡大、リヤシートの折りたたみが容易にできることなどをアピール。
4番目は快適性の向上で、スリム型のエア・リサーキュレーターで、ドライバーにエアコン風が優しく流れる新開発のエアコン・ルーバー、オートライト機能などを新装備したことだ。
5番目はワゴンRと同様にISG(スターター/ジェネレーター)の出力向上と、リチウムイオン・バッテリーの容量増大により、モーターのみでも走行できるマイルドハイブリッドを全車標準装備とした。また850kg~870kg(FF)という軽量ボディとの組み合わせで、気持ち良い走りを実現している。
■デザイン
全体のプロポーションでは、ボンネット高を高め、フロントガラスの角度を立てることでクルマの大きさを強調し、サイドウインドウのベルトラインを高めてボディのボリューム感を強調。新型スペーシアをひと目見ただけで室内の広さやクルマの存在感が感じられるように工夫されている。
デザインのモチーフは、ハード形状のスーツケースがモチーフとされ、ボディサイドにスーツケースのようなビードラインを刻んでいる。そしてインテリアにもこのデザインモチーフを活かし、インスツルメントパネルの助手席側アッパーボックス部はスーツケースデザインでまとめている。そしてスイッチ部もスーツケースの金属フレームのようなデザイン処理を行なうなど、デザインに対するこだわりを表現している。
そしてインパネ・アッパーボックスはオプションで好みのカラーを選ぶこともできるようになっている。またインテリアのパネルなどは最新の処理により、従来の常識を破る質感の高さを追求。クラスを超えたインテリアの仕上がりにしている。
新型スペーシアはスーツケースをテーマにした愛着の持てる、しかも個性的なデザインで統一され、従来の実用、機能性本位のデザインから、オーナーの個性を表現できる、遊び心のあるデザインに大きくシフトし、スーパーハイトワゴンに新しい世界観を作り出している。
スペーシア・カスタムは、カスタムならではの強い存在感や迫力を演出するため、フロントマスクは大型メッキグリル、シャープな形状のLEDヘッドライト、ワイド感を強調したバンパーなど採用し、標準のスペーシアとはまったくテイストの違うカスタム・モデルとなっている。
■ボディ、パッケージング
新世代の「HEARTECT(ハーテクト)」プラットフォームを採用し、さらに高張力鋼板に加えて超高張力鋼板を重量比46%採用することで、軽量・高剛性のボディを実現すると同時に、全高を50mm、室内高を35mm高めることで室内容積を拡大している。
さらにフロントシートのヒップポイントは30mm高められ、その結果前後の乗員間距離は10mm長くなり、室内幅も25mm拡大して左右席の乗員間距離を拡大し、特にドライバーのショルダースペースも改善している。
パッケージングのもうひとつのポイントはフロントガラスの角度を立てることと、インスツルメントパネルを前進させることで前席の前方の開放感を大幅に向上させている。
またサイドのスライドドアの開口面積は、高さ方向で+20mm、左右幅は+20mmとし、後席への乗り降りや、荷物の積載などがしやすくなっている。さらにスライドドアは他のドアが閉まっている時は、スライドドアが作動中でもロックを予約できる機能や、スライドドアの一時停止機能も追加されている。
リヤシートは、ワンタッチのダブルフォールディング式とし、荷室側からも前後スライドも可能だ。さらにリヤには27インチの自転車も積載でき、自転車の積み下ろしを楽にするためラゲッジ部後端には自転車のタイヤ溝ガイドを設けるなど日常での使い勝手は一段と高められている。
■マイルドハイブリッドを標準装備
ワゴンRから採用されているマイルドハイブリッドシステムが、今回の新型スペーシアにも全車標準装備化されている。インテグレーテッド・スターター&ジェネレーター(ISG)を従来より高出力化し、さらにリチウムイオン・バッテリーの容量も増大させ、バッテリーの電力だけで最長10秒間のクリープ走行ができるようになっている。
そのため停車中からブレーキペダルを離すとエンジンは始動せず、モーター走行が行なわれる。
また走行中は、最長30秒間のモーターアシストが作動し、エンジン負荷の増大を抑える。さらに今回からステアリングホイールにあるパワーモードを選ぶと、エンジントルクが増大し、CVTの変速が変更され、さらにエンジン駆動力にモーターアシストがプラスされるブースト・モードも採用している。
アイドリングストップは、減速で10km/h以下になるとエンジンが停止し、ISGでブレーキ・エネルギーによる回生が行なわれる。
搭載されるエンジンは、自然吸気とカスタムに設定しているターボともにR06A型で、従来と大きな変更はないが、自然吸気エンジンは走行風をエアガイドで吸気ホース周囲に流して吸気温度を下げ、より実用燃費を高めている。またCVTは本体の重量を5kg軽量化している。
燃費性能は、車両重量850kgのハイブリッドGが30km/L、870kgのハイブリッドXは28.2km/L、カスタム・ターボは25.6km/Lとなっている。全モデルがエコカー減税対象だ。
■予防安全、運転支援システム
新型スペーシアは、最新の予防安全、運転支援システムの「スズキ・セーフティサポート」を採用し、政府が推進する「セーフティ・サポートカーSワイド」に適合指定している。
衝突軽減ブレーキは、従来からのカメラ+レザーレーダーによるデュアルセンサーサポートに加え、後退時ブレーキサポート、前後方向の誤発進抑制機能を備え、さらに車線逸脱警報、ふらつき警報などを装備。またハイビームアシスト、交通標識認識機能、ガラス投影式のヘッドアップディスプレイ、全方位モニターカメラなど、充実した安全装備を設定している。
なお軽自動車初となる後退時ブレーキサポートは、超音波センサー(ソナー)を使用し後方の障害物を検知。ドライバーがブレーキを操作しない時は自動ブレーキを作動させるシステムで、もちろんペダルの踏み間違いにも対応できる。
メーカーオプションでヘッドアップディスプレイ、全方位3Dモニターが設定されている。ヘッドアップディスプレイは、カラー表示でフロントガラスに投影されるため、明瞭な情報表示が可能。また表示項目も車速やシフトポジションから燃費、エンジン回転数、エネルギーフロー、エアコン、交差点案内など多彩だ。道路標識、衝突軽減ブレーキなどの警報もディスプレイに表示される。
軽自動車初の全方位3Dモニターは、4個のカメラを使用し、室外からの視点でクルマと駐車スペースなどを見渡せる3D映像と、室内から見た視点の2種類が選択できる。また前方と後方の左右確認サポート機能も持ち、歩行者やクルマが接近している場合は警告灯が点灯し、ブザーが鳴るようになっており、見通しの悪い場所での発進などをサポートすることができる。
新型スペーシアは、軽自動車スーパーハイトワゴンの殻を破る新たなデザインの採用や、インテリアの細部までこだわったデザインと仕上げ、マイルドハイブリッドの全車標準装備化、そしてセーフティ・サポートカーSワイドに適合する予防安全機能を装備して、普通車クラスを凌駕する意気込みが感じられる。
またガラス投影式のクリアなヘッドアップディスプレイ、全方位3次元モニターなど意欲的な装備も設定するなど注目に値する。
スペーシア 装備表、諸元表
スペーシア カスタム 装備表、諸元表
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