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日本メーカーによる待望のGT4マシン。トヨタGRスープラGT4【スーパー耐久マシンフォーカス】

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日本メーカーによる待望のGT4マシン。トヨタGRスープラGT4【スーパー耐久マシンフォーカス】

 全9クラスが競うスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankookのなか、GT4マシンによって競われるST-Zクラスは、2018年のクラス創設以来、年々車種バラエティが増え、4月17~18日に開催された2021年第2戦『SUGOスーパー耐久3時間レース』には6車種、14台が参戦した。

 不定期にお送りしている“スーパー耐久マシンフォーカス”。2021年シーズン第2回は、今季からST-Zクラス参戦を開始した『トヨタGRスープラGT4』の特徴、特性をご紹介しよう。

GRスープラ GT4がST-Zクラス初PP獲得も「余裕はないです」と久保凜太郎【S耐第2戦SUGO】

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 2019年5月に登場したトヨタGRスープラをベースとしたFIA-GT4マシンとしてドイツ・ケルンのトヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ(TGR-E/旧TMG)で開発されたGRスープラGT4は、2020年3月に欧州でデリバリーが開始されると、2020年8月に北米、2020年10月から日本・アジアでも順次販売が開始された。

 エンジンはロードカー(RZ)と同じ3リッター直列6気筒ターボエンジンを搭載するが、ロードカー(RZ)の最大出力387馬力に対し、GT4はマニエッティ・マレリ製レーシングECUや、アクラポビッチ製レース用排気システムによるチューニングが施され、最大出力430馬力を誇る。トランスミッションは7速スポーツオートマチックを搭載し、ギヤチェンジはパドルシフトで行う。

 車重はロードカー(RZ)が1530kgに対し、GT4は1350kgと軽量化されているが、これは参戦するレースごとのバランス・オブ・パフォーマンス(BoP/性能調整)によって変動するだろう。
 
 GRスープラGT4は2020年6月にドイツ・ニュルブルクリンクで開催されたNLSニュルブルクリンク耐久シリーズ(旧VLN)の開幕戦でデビューレースを迎えて以降、欧州ではカスタマーチームの手でブリティッシュGT選手権、GT4ヨーロピアンシリーズ、ニュルブルクリンク24時間レース、DTMトロフィーなどのレースに次々と投入された。

 2020年10月から日本での販売が開始されると、2021年シーズンのスーパー耐久 ST-Zクラスに登場し、第2戦スポーツランドSUGOでは4台が参戦した。もっとも、スーパー耐久シリーズへはROOKIE Racingの手で2020年シーズンから参戦しており、日本でもすでにお馴染みの存在ではあったが、昨シーズンはホモロゲーション取得前ということで、ST-1クラスからの参戦であった。

「僕らはトヨタディーラーのトヨタカローラ新茨城のチームとして2019年からST-4クラスをトヨタ86で参戦してきました。昨年シリーズタイトルを獲ることができ、チームとしてのひとつ目の目標をクリアすることができました。そのタイミングでこのGRスープラGT4が登場したので、チャレンジしない手はないなと。トヨタカローラ新茨城ほど、レースを一生懸命やっているディーラーも多くないなかで、新しくトヨタから出てきたレーシングカーを外すということはしたくありませんでした。この流れに乗るべきだと思い、今季はGRスープラGT4と86の2台体制での参戦となりました」

 そう語ったのは、311号車 FABULOUS GRMI GR SUPRA GT4のドライバーであり、C.S.I Racingのチームマネジメントも担う久保凛太郎だ。

 そんな久保に、GRスープラGT4についての印象を尋ねると「ステアリングがかっこいいですね(笑)。今季から登場ということもあり、内装もスッキリと綺麗に作られています。操作性もいいですし、ほかのGT4だとステアリングだけではなく、コンソールとかにもスイッチが分散されていますが、GRスープラGT4はステアリング上のスイッチだけでほぼほぼ操作できるクルマなので、そこはいいポイントだと思います。ドライバーのことを考えて作られたクルマだと感じますね」と評価した。

 トラクションコントロール(TCS)が6段階、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)が12段階と電子デバイスの調整幅も充実しており、そういった点についても「しっかりしてると思います。ジェントルマンが安全にサーキットを楽しめるクルマだと思います」と好印象を抱いているという久保だが、一方、登場から間もないこともあり、GRスープラGT4にはまだまだ改善の余地があるとも口にする。

「ボディ剛性が少し物足りないと感じました。斜め方向の剛性感が少し弱いかなと。ショートホイールベースなのでしかたがない部分ではあると思います」

「クルマとしては、コーナリングマシンだと思います。中高速のコーナーはすごく軽快に曲がりますね。そのため、SUGOや岡山国際サーキットなどでは、短いホイールベースが効いてくると思います。逆に富士スピードウェイなどは、ストレートスピードに秀でるほかのマシンの方が速いのかなと感じますね」

 久保の言葉のとおり、第2戦SUGOではウエットコンディションのなか、14台が参戦した激戦のST-Zクラスで311号車はGRスープラGT4初のポールポジションを獲得している。決勝ではライバル勢よりも時間がかかってしまう給油時間がネックとなり5位フィニッシュとなったが、テクニカルなコースでの速さは確かであり、第6戦として開催される岡山では、コーナリングの良さを活かした好走を見せてくれそうだ。

■メンテナンスは“インチ工具”で。チーフメカニックが語るGRスープラGT4

 C.S.I Racingは、GR Garage水戸インターに勤務するトヨタカローラ新茨城の社員メカニックとレースメカニックによる混成チームだが、311号車 FABULOUS GRMI GR SUPRA GT4のチーフメカニックはGR Garage水戸インターの岡田友輔氏が務めている。

 昨シーズンまでST-4クラスに参戦する310号車 GRGarage⽔⼾インター GR86のメカニックを務めていた岡田氏だが、2021年シーズンより2台体制となるにあたり、311号車のチーフメカニックを務めることとなった。レーシングカーのチーフメカニックを務めるのは初めてという岡田氏は、GRスープラGT4にどのような印象を抱いているのだろうか。

「ロードカーとはベースは同じで、エンジンも純正に近いですが、足回りなどは少し違うので、ふだん店舗で見ているGRスープラとの違いで少し戸惑うところはあります」

「GT4マシンということで、メンテナンス的にやることは少ないです。しかし、ミリ工具ではなく、インチ工具を使うので、メンテナンスのやりやすさという点ではST-4クラスの86の方がやりやすいなと感じます。あと、GRスープラGT4はセッティングをひとつ動かすと、急激に性格が変わったりします。そういった意味でも86の方が触っていてやりやすいなとは感じますね。ただ、どちらかというとGRスープラGT4の方がレーシングカーっぽいという印象です」

 日本メーカーのマシンにもかかわらず、メンテナンスの際にインチ工具を使用するのは、ロードカーのGRスープラがトヨタとBMWの共同開発車両であり、また、オーストリアのマグナ・シュタイヤー社で生産されていることに由来するものだろう。

 GRスープラGT4の車両販売価格は175,000ユーロ/約2300万円(消費税、関税、輸送費等別)となる。ロードカー(RZ)のメーカー希望小売価格は約732万円のため、ロードカーと比較すれば価格差は約3倍となるが、GT4マシンのなかでは標準的な価格だ。

 車両価格もさることながら、気になるのはランニングコストを計算する上で重要なポイントとなるエンジンとミッションのマイレージだ。これまで“スーパー耐久マシンフォーカス”で紹介してきたGT4マシンはいずれもシーズン中にエンジン、ミッションをオーバーホールすることなく、富士24時間を含めた1シーズンを走り切ることができるマイレージの長さを誇っていた。

 その点に関して岡田氏は、「ざっと聞いた感じですが」と前置きした上で、「エンジンとミッションは、オイル交換だけで1シーズンいけると聞いています」と話した。デビューから間もないマシンということもあり、正確なマイレージは1シーズンを通して見定めていきたいということだが、GRスープラGT4もGT4マシンの特徴であるランニングコストの安さを持ち合わせていると言えるだろう。

 C.S.I Racingの311号車 FABULOUS GRMI GR SUPRA GT4は第1戦もてぎで5位、第2戦SUGOも5位でチェッカーを受け、第2戦終了時点でポイントランキング4位となっている。5月21~23日にはスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankookの第3戦『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』が行われるが、残念ながら311号車は第3戦をスキップし、次の出走は第4戦『TKU スーパー耐久レース in オートポリス』の5時間レースとなる。C.S.I Racingは富士24時間でST-4クラスに参戦する310号車 GRGarage⽔⼾インター GR86の1台に注力するという。

 ポイントランキングでGRスープラGT4勢トップを守っているだけに、311号車の富士24時間欠場は寂しいが、108号車 アスラーダ Ver. SUPRA、111号車 Access HIROSHIMA+ GR SUPRA GT4、885号車 林テレンプ SHADERACING GR SUPRA GT4といった3台のGRスープラGT4が富士24時間に参戦を予定している。

 いまだST-Zクラスでの勝利がないGRスープラGT4は、富士24時間というシーズン一番の大舞台でどのような戦いを見せるのだろうか。大激戦が繰り広げられるST-Zクラスの戦いに引き続き、注目したい。

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みんなのコメント

2件
  • 日本独自の天才的カテゴリー。

    S耐久は素晴らしい。
  • コストダウンが進むレース業界※一部除くF1等
    NISMO GT-R GT3が約6千万
    アウディR8 LMS GT4が約3千万
    BMW M4 GT4 2.1千万
    ジネッタG55 GT4が約1.8千万 グループ仕様としては多分最安

    R8は市販車の日本価格が約3千万(北米で2千万~2.5千万)なので
    オプション差はあるだろうがベース車から考えると驚愕の安さ、

    G55は市販車が存在しないパイプフレームのレース車をGT4の規定に合わせて作った車両
    元々市販車に必要な装備を有してない分安上がり

    スープラGT4は価格だけ見れば標準的かもしれないがベースから見るとやや高め






※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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