2007年1月、アウディジャパンはスポーティなアイテムを特別装備した限定車「アウディA4 DTM Limited」を発表している。ドイツツーリングカー選手権(DTM)に参戦するマシンをイメージしたモデルで、ベースはアウディA4 2.0TFSIクワトロ(セダン)。フルモデルチェンジが噂される中で登場した最終進化形はどんなモデルだったのか。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年4月号より)
クワトロ社がセッティングした足まわりは絶妙
走り始めてすぐに「あれっ」と感じるものがあった。予想外に足まわりが硬くないのだ。いや、硬いが、角がないというか、あたりがマイルドと表現したほうがいいだろうか。ショックをうまくいなしている。
【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?
タイヤの銘柄を確認してみると、ミシュランのパイロットスポーツPS2・235/40ZR18を履いていた。それでどうして、こんな味になるのだろう。
そんな気持ち良さのせいもあって、そのまま首都高に乗り、今回は千葉・房総半島を半周するルートを選んでロングツーリングしてみることにした。
高速道路に乗ってペースを上げると、その乗り心地はさらにフラットで気持ちいいものになっていく。さすがに荒れた路面ではキックバックが大きいが、一般道でも実に快適で、締まったボディと足まわりがきりりと気持ちがいい。
ここでこのクルマについて、ちょっと整理しておこう。アウディA4 DTM Limitedは、A4 2.0TFSIクワトロをベースとして設定された特別仕様車。DTM(ドイツツーリングカー選手権)に参戦する「A4 DTM」をイメージして仕上げられたもので、エンジンにこそ手は加えられていないが、専用カーボン製前後スポイラー、専用ファントムブラック仕様のフロントグリル、専用リアディフューザー、大径エクゾースト、スプリントブルーパールのボディカラーなどが演出する外観は、ちょっと恥ずかしくなるほどに派手でスポーティだ。
一方、インテリアを見てみると、S4にも採用されているカーボンパネルや本革を使ったレカロスポーツシート/3本スポーツステアリングホイールなどがやはりDTMらしさを強調しているが、ブラック基調でこちらは落ち着いたムードだ。
変更点は内外装だけではない。実は足まわりこそ、このクルマの大きなポイントだ。スポーツサスペンションと、それと組み合わされるタイヤ/ホイールのセッティングが絶妙だ。A4 2.0TFSIクワトロの足まわりって、こんなに良かったっけ、とさえ思ってしまった。
今年秋にフルモデルチェンジが噂されているA4だが、シリーズとしていよいよ熟成が極まったということだろうか。このセッティングは現行A4の集大成、スポーツ設定のひとつの完成形ではないかとさえ感じさせるものがあった。
うがった見方をすれば、次期型A4のスタディとさえ考えられる。ひょっとしたら相当のコストをかけているのかもしれない。それほど足まわりが決まっている感じで、そのせいもあって、エンジンの回り方やボディのしなり、ドアの閉まり方まで気持ちよく感じてくるから不思議だ。
まったくクルマは見かけによらない。いや、アウディにとっては見かけどおりということだろう。勝手に「硬いだけのやんちゃなクルマ」と誤解していただけだ。
このモデルの開発はS4やRS4といったSモデルやスタディモデルを製作するクワトロ社(quattro GmbH)が担当している。そこにもひとつのポイントがあるように思う。装備内容からすると、こんな価格で販売していいのと思うほどのお買い得モデルだが、それには市場の反応を見るという目的もあるのではないか。このクルマにはきっと次期型のヒントが隠されている。
ボディカラーはスプリントブルーパールの他に、アヴスシルバー、ファントムブラックパールが用意されるが、ボディはセダンのみで、販売台数はわずか150台だ。(文:松本雅弘/Motor Magazine 2007年4月号より)
アウディA4 DTMリミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4600×1770×1410mm
●ホイールベース:2645mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:524万円(2007年)
[ アルバム : アウディA4 DTMリミテッド はオリジナルサイトでご覧ください ]
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