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既存オーナーもSUVに買い替え!? プリウスはなぜ販売日本一から陥落したのか

掲載 更新 41
既存オーナーもSUVに買い替え!? プリウスはなぜ販売日本一から陥落したのか

 初代プリウスのCMは、「21世紀に間にあいました」というキャッチフレーズで、鉄腕アトムが登場し目をひいた。あれから24年が経過する。

 先進性の初代、ハイブリッドを馴染ませた2代目、爆発的ヒットで国民車となった3代目、そして現在の4代目まで順風満帆な販売台数を誇っていたプリウスだが、近年の販売は元気がない。

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 2019年を最後に、年間販売台数ナンバーワンの地位から遠ざかり、2021年4月の乗用車ブランド通称名別順位では、3672台の15位(前年比78.6%)まで落ち込んだ。

 ハイブリッド車が増え、プリウスを選ぶ必要が少なくなったのが原因という見方もあるが、実際の販売現場では何が起こっているのだろうか。プリウス人気が落ち込んだ原因を、販売現場目線で紐解いていく。

文/佐々木亘、写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】衝撃の登場から24年。ハイブリッドの先駆者トヨタ プリウスを初代から見る

■「勝手に売れていった」先代プリウス

販売現場にいた筆者が特に衝撃を受けた3代目プリウス。販売開始から1か月で18万台を受注した

 「ハイブリッドは燃費が良く環境にも優しい」。このイメージは日本のみならず、海外でも大きく広がっていった。

 ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオやキャメロンディアスが、愛車にプリウスを選んでいたのは有名な話だ。スーパーカーや高級車と同等に、プリウスのネームバリューが高かったことをうかがわせる。

 筆者がトヨタの販売現場にいて、最も衝撃的を受けたプリウスは3代目(ZVW30型)だ。

 2009年に登場し、発売開始から1か月で18万台を受注、2010年には年間販売台数31万5669台を記録し、1990年にカローラが持っていた年間販売記録を20年ぶりに更新する。そして、2011年のマイナーチェンジにより、さらに売れ行きに拍車がかかる。

 当時のプリウスの売れ方は、常軌を逸したものだった。

 強く営業活動をせずとも、お客様が来店し、プリウスを買っていく。入れ食い状態を超えて、エサをつけなくても魚が釣れているような状態だった。新車の注文が取れないなどと悩むことのなかった時代である。

 30系プリウスは、プラグインハイブリッドの発表や、スポーツコンバージョンモデルG’s(現GR SPORT)の登場など、話題性にも事欠かなかった。魅力的なスタイルを多く生み出した3代目プリウスを好み、現在も乗り続けるユーザーは多い。プリウスG’sを愛車にする、筆者もその一人だ。

■プリウス=ハイブリッドはもう古い? 現行プリウスの苦労

現行(4代目)プリウス。3代目から買い替える人たちも、プリウス以外のハイブリッド車を選ぶようになってきた

 大ヒットだった3代目の流れを壊さぬよう、4代目プリウスをデビューさせるのは至難の業だっただろう。新プラットフォーム「TNGA」採用の第1号車であり、個性的なエクステリアデザインと、プリウス待望の4WD「E-four」を搭載する。しかし、30系以上のヒットにはならなかった。

 エクステリアデザインが酷評される4代目だが、筆者は販売不振の原因がほかにもあると考える。それは、プリウスが特別なクルマではなくなってしまったという点だ。

 30系を販売している当時、プリウスは「ハイブリッドのクルマ」、アクアは「ハイブリッドの小さいの」と言われることが多かった。この言いまわしで、営業マンも「プリウスを見に来ていただいたんですね」とわかっていたのだ。

現行(4代目)プリウス リア

 しかし、4代目が登場した2015年には、クラウン、エスティマ、ハリアーに加え、カローラ、ノア・ヴォクシー、シエンタでもハイブリッドが存在する。ハイブリッドはトヨタ全体のシンボルとなり、プリウスのことを指す固有名詞ではなくなった。

 4代目プリウスのセールスポイントは、TNGAによる走行性能の向上、トヨタセーフティセンスPを装着するなど安全性の高さである。もちろん性能の向上には目を見張るものがあったが、ユーザーが期待していたのは、ハイブリッド技術の大幅な進化だったのではなかろうか。

 EV走行できるレンジが広がり、燃費性能も良くなっていたが、強烈なインパクトとは言えない。ハイブリッドを代名詞に、人気を伸ばしたプリウスは、ハイブリットが一般化されたことにより、その強みを失ってしまったと考える。

 販売現場でもプリウス推しは少なくなり、他のラインナップと横並びになる。ハイブリットの先駆者として、圧倒的な個性が光るプリウスの姿はない。先進技術が広く一般化されるのは喜ばしいことだが、同時にプリウスにとっては厳しい環境となってしまった。

■プリウスのお客はどこへいった?

写真のハリアーなど、今ではハイブリッド車はプリウス以外にも選べるようになっている

 スマッシュヒットとなった30系プリウスも、前期モデル登場から12年、後期モデルも登場から約10年が経過した。3代目プリウスは、そろそろ買い替えの時期を迎えている。

 30系プリウスユーザーの代替活動は進んでいるのか、販売店に話を聞いてみた。

 「若い30系プリウスのオーナーは、ハリアーやRAV4、そしてヤリスクロスやライズなど、SUVに買い替えるケースが多いです。プリウスからプリウスへの代替は少なくなりました」

 「また、30系プリウスのオーナーには高齢層も多く、現在のクルマを最後のクルマとして、免許を返納するという話も多く聞きます。あえてプリウスを選ばなくても、ハイブリッドの選択肢は多くありますし、耐久性の高いプリウスなので、代替は思ったようには進みません」

 もともと4チャネル取り扱いで、販売網の広さがあったプリウスだが、全車種併売によって、そのアドバンテージは崩れた。多くのユーザーに、ちょうどいいと思われていたプリウスも、選択肢が増えた今、魅力的に映らなくなってきているのだろう。

 プリウスがもう一度復権するためには、進化した新しいハイブリッド技術の搭載が必須となるだろう。ハイブリッドの先駆者である以上、この技術で他社はもちろん、トヨタのライバルにも負けられない。プリウスはハイブリッド技術の先頭を、常に走り続ける存在であることを期待されている。

 今もまだ多く走る、2代目・3代目のプリウスたち。このオーナーたちが振り向き、魅力に感じる5代目を、是非作り出してほしい。ハイブリッドの新たなステージを、新型プリウスが見せてくれることを期待したい。

【画像ギャラリー】衝撃の登場から24年。ハイブリッドの先駆者トヨタ プリウスを初代から見る

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みんなのコメント

41件
  • デザインが悪いし、後席の頭上も低く実用性もないからだと思うし、他の車種でもハイブリット車が増えて存在意義が薄れた関係でしょうね?


  • 売れ線の車にハイブリッドが有るのが当たり前になったからでしょ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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