4月21日(日)にイモラ・サーキットで開催されたWEC世界耐久選手権第2戦『イモラ6時間レース』は、決勝レース後半に降り出した雨によりハイパーカークラス、LMGT3クラスともに展開に変化が訪れた。後者の新しいGTカテゴリーでは、チームWRTがレインコンディションでライバルたちから一歩抜け出し、最終的に31号車と46号車BMW M4 GT3がワン・ツー・フィニッシュを飾った。
一方、スタートから3時間までレースをほぼ完璧に支配していたマンタイ・ピュアレクシングの92号車ポルシェ911 GT3 Rは、レインタイヤを選択したことにより後退。BMW勢の後塵を拝するかたちで3位フィニッシュとなった。
「天気予報を信じられず」屈辱的敗戦のフェラーリ。ウエットへの交換が遅れ、コミュニケーションも破綻/WECイモラ
それでもアレクサンダー・マリキン、ジョエル・シュトームと92号車ポルシェをシェアしたクラウス・バハラーは、レース後半の天候変化にともないウエットタイヤに履き替えたチームの決断を「100パーセント支持している」と語った。
GTレース界の名門チームであるマンタイ・レーシングがオペレートする92号車は、レース4時間目に降り出した雨に反応しチェッカーまで残り2時間を切ったところで予定外のピットインを行い、グッドイヤーのドライ用のスリックタイヤからウエット路面用のレインタイヤに履き替えた。しかし、これが同チームの運命を変えることとなった。
当時は不安定で変わりやすいコンディションであり、ハイパーカークラスではスリックタイヤでステイアウトしたフェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)などが順位を落としていくなか、LMGT3チームの多くはスリックタイヤでの走行継続を決断する。チームWRTはそのひとつで、マキシム・マルタンの46号車とアウグスト・ファーフス駆る31号車BMWが、首位に立っていたポルシェがタイヤを変るためにピットインしたことでトップ2に浮上した。
バハラーは、このときのマンタイ・ピュアレクシングの判断についてチームに非があるとは考えておらず、トップを走っていたとしてもライバルに先んじて動く判断を支持したと述べた。
「正直なところ、レインタイヤを履くという決断を100パーセント支持していた」とバハラーはSportscar365に語った。
「感覚的に良い選択だと思った。僕が決めたのではないが、僕自身も間違った選択をしたんだ。結局のところ、僕たちは何も悪いことはしていない。ただ、予測できない天気だったんだ。もし、あのまま雨が降る続けたならば僕たちは幸運にもレースで勝てただろう」
彼は、マンタイはトリッキーなコンディションのなかで「より安全な方法」を選び、グラベルトラップにハマって動けなくなるような危険を冒すつもりがなかったと付け加えた。
「もちろん、あとになって『彼らが正しい判断を下し、僕らが間違った判断を下した』と言うのは簡単だが、まったく逆の結果になることもある」とバハラー。
「次に重要なのは、スリックタイヤではこのような状況でクルマを失うのがとても簡単だということだ。理論的にはレースに勝てたかもしれないが、実際はグラベルの中でレースを失っていたかもしれない」
「(タラレバを言えば)すべて可能なんだ。だから何も言うことはない。チームとして素晴らしいレースができた。この結果に満足して、次のレースを楽しみにしているよ」
■「生き残れる」。BMWを勝利に導いたベテランドライバーたちの自信
一方、BMW Mモータースポーツ・ディレクターのアンドレアス・ルースは、チームWRTのクルーがファーフスとマルタンの意見を聞いてタイヤ交換を見送ったことを示唆した。
「(雨が降り出したレース中盤)この時、アウグスト(・ファーフス)とマキシム(・マルタン)がそれぞれのクルマに乗っていた」とルースはSportscar365に語った。
「彼らは非常に経験豊富なドライバーで、マシンのことを知り尽くしているため、(あのような状況では)彼らを信頼する必要があった」
「彼らはチームと連絡を取り合っていて、このまま(のコンディション)ならスリックタイヤでも生き残ることができると感じていた」
「実際、この判断が正しかったことが証明されたし、彼らはミスをしなかった。多くのドライバーがコースアウトしたが、彼らはフラットアウトしながらもマシンをコースに留めることができたんだ」
タイヤ交換のためのピットインを見送ったことは結果的にBMWにワン・ツー・フィニッシュをもたらすこととなったが、ルースはコンディションが悪化する可能性を心配していたことを認めた。
「もしも、あの後さらに雨が降ってきたら、間違いなく負けていただろう」と同氏は述べた。
「実際にウエットタイヤで行かなければならない状況になったら、その時点で負けだった。つねに気象レーダーをチェックしていたよ」
「確かに、ときには五分五分の決断を迫られることことがあり、決断を下してそれが有利になることを祈るしかないこともある。今回は確かにそうだった」
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