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エンジンオイルの交換時期は? 交換費用やおすすめの交換方法を紹介!

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エンジンオイルの交換時期は? 交換費用やおすすめの交換方法を紹介!

覚えておきたいエンジンオイルの基礎知識

 クルマを維持していくうえで定期的に行うべき整備項目はいくつかある。なかでも重要度が高いのがエンジンオイルの交換だ。エンジンオイルは一定の走行距離や時間を経過した場合に交換するものだけど、交換に適している距離や時期は車種や搭載エンジンごとに違うし、走らせ方によっても異なる。それにエアクリーナー交換などエンジンまわりのカスタムをしている場合も、ごく普通に乗っているノーマルエンジンのクルマとは交換時期が違ってきたりする。そこで今回はエンジンオイルについての基本事項や交換サイクル、選び方や作業手順などについて紹介したい。

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エンジンオイルの役割1「潤滑作用」

 まずはエンジンオイルの役割だが、これは大きく分けて5つの項目があるので順に解説していこう。最初の項目は「潤滑作用」というもの。エンジンはガソリンと空気を混ぜた混合気をプラグの火花によって燃焼(爆発)させ、発生した熱エネルギーを利用してクランクシャフトを回転させて動力を生む機械だ。

 そしてこの一連の動作のなかで、カムシャフトやピストン、コンロッド、クランクなどは、組み合わさる周辺パーツと常に擦れたり摺動しているため、この運動をしている2つの面には摩擦抵抗やそれに伴う発熱が生じる。そこで各パーツがスムーズに動けるよう摩擦抵抗を減らすのがエンジンオイルの潤滑作用だ。

 また、エンジン内のパーツにはそれぞれの動作に必要な隙間(クリアランス)が設定されているが、エンジンオイルはこの隙間にも入り込むことで衝撃が加わった際にその力を吸収し、金属面同士がぶつかり合うことを防ぐ効果も持っている。

 このように摩擦や衝撃からエンジン内部パーツを保護することは、エンジンオイルがもたらす効果の中でもっとも重要なものである。

エンジンオイルの役割2「冷却作用」

 つぎは「冷却作用」について。エンジンの冷却は主にラジエターに入れるLLC(ロングライフクーラント)をエンジン内部に循環させることで行っているが、じつはエンジンオイルもエンジン内を流れる際にエンジンが発生する熱を奪う役目をしている。

 また、接触しながら運動するパーツ同士の間は潤滑しているとは言え摩擦熱が発生しているが、エンジンオイルはその熱の吸収も行っている。さらに高回転域を多用するスポーツカー用エンジンやハイパワーエンジンでは、高温に晒されるピストンを冷却するため、油圧を利用してピストンの裏側にオイルを吹き付ける「オイルジェット」という機構を備えるものもある。

 ちなみにエンジンオイルに冷却作用があるといっても本来の役目は潤滑なので、多くのエンジンの場合はラジエターのような熱を放出させるための装置はついていない。そのため油温が上がりやすいハイパワーエンジンを積むクルマには、純正でオイルクーラーが装着されることもある。サーキット走行をするクルマやパワーアップを図ったチューニングカーでは、後付けのオイルクーラーが用いられる。

エンジンオイルの役割3「密封作用」

 エンジンはピストンやクランクなどの回転運動により動作するが、この際にオイルの膜(油膜)が擦れあったり摺動したりするパーツ間の隙間を埋めることで一種の密封作用を生む。ピストンリングなどとあわせて、燃焼室内の燃焼ガスやそこで生まれた圧力が吹き抜けることを防ぐ役割も持っている。

 密封作用はオイルの粘度が高いほうが得られやすい傾向なので、旧車や過走行車など「長年の摩擦によりピストンとシリンダー壁面のクリアランスが広がっている可能性が高いエンジン用」と謳われているオイルでは、粘度が多少硬めの設定になっていることが多い。

 このオイルの粘度に関しては後述するが、ここでも少し触れておこう。パッケージに記載されている「〇W-〇〇」という表示のうち、ハイフンより左が低温時の粘度指数でハイフン以降のふた桁数字は油温が上がった際の粘度を表しているので、実際の走行時の粘度を意識するならハイフン以降の数値をみる。そして数字が大きいほうがエンジン運転状態の時の粘度が高いということなので、過走行車や旧車では後半の数字が大きいオイルを選ぶのがコツだ。

 なお、油膜は密封作用だけでなく、ターボチャージャーの軸をハウジング内の保持部から浮かせつつ、回転抵抗を抑えるベアリング代わりでも使われている(オイルによる軸の冷却も同時に行う)。

エンジンオイルの役割4「防錆作用」

 エンジンを構成するパーツは主に金属でも使われている部位によってスチール系だったり、アルミ系だったりと種類が異なっている。そしてこのうち、スチール系パーツの表面は空気やガス、水分などが一定期間触れ続けることで錆という腐食が発生する。そこでエンジンオイルには防錆効果のある添加剤が配合されていて錆を生む要因から金属表面を保護している。

 ちなみに長期間動かしていないエンジン(とくに鋳鉄製ブロック)では、エンジン内壁の油膜切れによってサビが出ていることもある。その状態であってもセルモーターはトルクがあるので回すとクランキングできてしまうことも多いので「エンジンは問題ない」と判断しがちだがそれは間違い。長期放置車は基本的にエンジンオーバーホールを前提と考えること。最近は旧車ブームで長期放置車でも見た目の状態が良いと「良質車」と言われたりするが、エンジンを長期間動かされていない個体だと隠れたリスクがあるものと思って対応した方が良い。また、なんらかの理由で長期に渡ってクルマに乗らない場合、定期的にエンジンを掛けることでエンジン内に新しい油膜を作り、防錆作用を継続させることができる。

エンジンオイルの役割5「洗浄作用」

 エンジンは混合気を燃焼して動力を生む機関だが、燃焼の際にススが発生することもある。また、エンジンオイルが循環する際にもスラッジと呼ばれる汚れが出るし、エンジン内部パーツが摩耗するときに出る金属粉などもあり、それらは熱が加わったりすることでワニスと呼ぶヘドロのような汚れになってエンジン内部やオイルの通路に付着してしまう。

 そこで汚れが余計に溜まらないよう、エンジンオイルには粘性を利用して汚れを押し出す作用がある。同時に汚れを落とすための添加剤が混ぜてあるのでこれらの効果によってエンジン内の清掃を行っている。エンジンオイル交換後、しばらく乗るとオイルの色が黒っぽくなってくるのは洗浄作用のある添加剤が仕事をしている証拠だ。

 取り除かれた汚れは消えるわけでなくオイルに混じった状態で一緒に循環されるのだが、これらの不純物はオイルの潤滑性能を低下させるものでもあるので、汚れたオイルを長期間使い続けるのはエンジンを傷めることに繋がるので、汚れが進んだエンジンオイルは交換が必要なのだ。

エンジンオイルの種類【ベースオイル】

 エンジンオイルは油田から採掘された原油から作られるもので、製法はまずベースオイルというものを作るところから始まる。ベースオイルは原油を蒸留装置で加圧して蒸留させ、沸点の異なるオイルごとに分けられる。そしてそのなかから沸点の高い素材を再度蒸留し、そこで残ったオイルを精製したり添加剤を加えたりして作られたものがエンジンオイル用のベースオイルとなる。なお、クルマにはガソリンエンジンとディーゼルエンジンがあり、それぞれで使用するオイルは分けられている(一部、両方に使えるユニバーサルオイルもある)。ただ、ベースオイルについてはどちらも同じものを使っているようだ。

 このベースオイルには「化学合成油」「部分合成油」「鉱物油」の3種類があって、化学合成油とは蒸留時に少量取れる素材をベースにした科学的に安定した性能を持つオイルのこと。価格が高い高性能オイルはこれをもとに作られている。

 つぎは「鉱物油」だが、これは原油を蒸留したあとのオイルから不純物や有害な物質を除去したシンプルなベースオイル。化学的な加工が施されていないのでエンジンオイルとして不器用な面があったり耐久性は高くないが、添加物がないぶん温度変化などに伴う性能の劣化はゆるやかという特徴がある。また、鉱物油は価格が安価という特徴もある。

 そして化学合成油と鉱物油を混ぜたものが「部分合成油」と呼ばれるものだ。鉱物油が混じるぶん100%化学合成油ほどの性能は出ないが普段使いのエンジンオイルとしては十分の性能を持つ。それに価格面が100%化学合成油より安価に設定できるというメリットがある。ただし、配合率に決まりはないので極端なことをいえば鉱物油に1ccでも化学合成油を入れれば部分合成油を名乗れる。

 そういった点からスポーツカーやチューニングカー、それにハイブリッドを含む最近の環境性能が高いクルマなど、エンジン性能に特徴がある場合はオイルに対する要求もシビアなので、この手のクルマに部分合成油は向かないと言える。ただ、それほど高年式でなく、なおかつ一般的なエンジンを搭載するクルマであればオイルの値段が安いぶん、交換費用の軽減にもなるので部分合成油のエンジンオイルを使うという選択もありだ。とはいえ、エンジンオイルはエンジンの状態にあったものを選ぶことも大事なのでオイル購入時にお店の方の意見も参考にしたい。

エンジンオイルの種類【グレード】

 エンジンオイルの交換を行うとき、粘度やベースオイルの種類の他にチェックしたいのが品質や性能を表すグレードだ。現在、日本で発売されているエンジンオイルではアメリカ主体(日本を含む)の「API規格」と「ILSAC規格」、ヨーロッパが主体の「CCMC規格」に「ACEA規格」、そして日本の「JASO規格」がある。ちなみにエンジンオイルにはアメリカの自動車技術者協会が定める「SAE規格(5W-30などと表示される)」もあるが、これは品質を示すものではなく粘度の分類で、数値はエンジンオイルとしての性能を保てる温度域を表したものだ。

 表記の読み方は左の数値が低温域の粘度を示し、0Wがもっとも低温域の流動性に優れる。右が高温時の粘度で数字が大きいほど高油温に耐えるというものだが、この数値は車種や走行条件、走行する地域の特性ごとに製品の区分けをするために表記されているものなので、数値の大小がオイルの品質を表すものではない。なお、余談だがいま話題の自動運転のレベルを表すレベル1からレベル5という区分けもSAEが定めた規格だ。

 話を戻すと、エンジンオイルの規格に関してはAPIが広く使われており、この規格を持つオイルをさらに国ごとの工業製品の認定団体がそれぞれのルールで認定しているという図式。そのためオイル容器にはAPIの表示と別の規格の表示という複数の規格表示がついていることもあるが、これらは別の意味を持つものではなくて「APIの〇〇規格相当」とか「APIの〇〇規格を基準に〇〇の性能を高めた」という感じに関連している。

 では、改めてオイル規格で代表的なものを順に紹介していくとまずAPI規格。こちらはアメリカ石油協会が定めている規格でアルファベット2文字で表記する。規格はガソリンエンジンとディーゼルエンジンごとに分かれていて、表記はアルファベット2文字のうち、右の文字がそれぞれで設定されていて、左側の文字はガソリンエンジンだと「S」で始まり、ディーゼルエンジンだと「C」で始まるようになっている。

 そしてアルファベット2文字のうちの右側はグレードを示すもので、ガソリンエンジン用もディーゼルエンジン用もAがもっともベーシックで、B、C、Dと文字が進むにつれて規格のレベルが上がっていくが、オイルの規格は年々厳しくなる燃費性能や排ガス規制をクリアさせることと密接な繋がりがあるので、規格が新しいほど高性能なオイルということになる。

 なお、乗用車や小型トラックなど軽荷重車用のディーゼルエンジンオイルはガソリンエンジン用と同じ規格になっているが、API規格の「CF-4」以降は、JASO規格が定める「DH-1」という規格になる。そしてそのなかでも乗用車が「DL-1」、トラック、バスが「DH-2」という分類になっている。これに加えてクリーンディーゼル向けとしてススの量をさらに減らした自動車メーカーが設定する規格もある。

 つぎはILSAC規格、イルザックと読む。こちらは日本とアメリカの業界団体制定したガソリンエンジン用のオイル規格。もともとはAPI規格オイルの品質を保証するような立場で作られたそうだが、いまはAPIのSL規格に合致したオイルであり、さらに大気汚染防止、省燃費などに関する項目についての基準をクリアしたものに付けられている。そのため主に環境性能を重視したクルマ用のオイルにこの規格のマークがついている。

 そして最後に紹介するのは2020年5月から始まった「API SP/ILSAC GF-6」という規格。これは従来のものより省燃費性や性能の持続性などが向上しているほか、従来にない新たな項目としてタイミングチェーンの摩耗と異常燃焼の一種である早期着火を防止するという新しい評価項目に適応したものだ。

エンジンオイルの選び方

 エンジンオイル選びの基本は所有するクルマの取扱説明書に記載されているオイルを選ぶことだ。多くの場合、自動車メーカー純正オイルを推奨しているだろうが、同時に銘柄ではなくグレードや粘度のみ指定されているので、好みのオイルメーカーの該当するものを入れてもまったく問題はない。ちなみに取扱説明書がこのような書き方になっている理由は、使用地域やオイル交換をするお店の在庫等の関係でメーカー純正品が入手できない状態であっても適切なオイルを選ぶことができるようにという配慮からである。

 中古車で購入したクルマの場合、取扱説明書が付いていないこともあるが、その際は自動車メーカーのHPにある「サポート」から取扱説明書のPDF版が入手できることもあるのでそちらを利用したい。

 ただ、こうしたサービスも年式の古いクルマまではカバーしていないのが現状だ。でも、年式の古いクルマの多くは走行距離も伸びていることも多いだろう。そういう状態では「エンジンオイルの役割・密封作用」のところでも書いたように、ピストンとシリンダー壁面のクリアランスが広がっているので、新車時に設定された粘度では密封作用が十分に行えないこともある。

 とはいえ、チューニングなどしていないノーマルエンジンならば原則としては自動車メーカーが指定したグレード、粘度のエンジンオイルを使ったほうが安心感はある。けれどエンジンオイルの世界は広く、規模の大小問わず多くのオイルメーカーからそれぞれ特徴のあるエンジンオイルが発売されているので、そういったなかから自分のクルマにマッチするものを探すのもエンジンオイル選び・交換の面白さだ。そして旧車や過走行車向けに油膜の保持力を高めた製品というのもあるので、該当するクルマのオーナーはこうしたオイルを入れてみてはどうだろう。

 このように種類の多いエンジンオイルなのでそれぞれの製品に対してさまざまな意見や感想があるが、例えばエンジンオイルを換えたあと、エンジンノイズが静かになることに重点を置いている場合、その他の性能がいくら優れていても、しばらく使うとノイズが大きめになるようなオイルでは「このオイルはダメだ」というジャッジになってしまうことがある。

 このようにクルマのオーナーごとに気になっている部分が違うこともあるので、数あるエンジンオイルから自分にあうモノを選ぶ際は、まず自分が「エンジンの動作やフィーリングについてどこを気にしているか?」を整理してから、製品紹介の解説文を見たり、メーカーへ問い合わせてみると良い。これがお気に入りオイルを見つけるコツと言える。

交換しないとどうなる?

 以前、あるオイルメーカーの技術者から「交換時期になったエンジンオイルの状態を“オイルがヘタって潤滑性が落ちた”と表現されることがありますが、この表現はちょっと違っています。なぜならベースオイルの特性上、分子がせん断されたとしても粘度が低下することはほぼありません」と言われたことがある。では、古くなったエンジンオイルの性能が落ちるのはどうしてかというと、配合されている各種添加剤の効果が低下することやエンジン内部で酸素に触れることから起こる酸化、そしてスラッジやガソリンなどが混じるためである。

 例えば潤滑作用。これはベースオイルがもとから持っている特性だが、これをサポートするために粘度指数向上剤、摩擦軽減剤などが添加されているが添加剤は使用しているうちに効果が薄れてくる。すると本来の潤滑性能が維持できなくなる。また、添加剤で補っていた粘度が低下すると、油圧が上がらなくなったり、油温が上がりやすくなったりとエンジンにとって「頼りないオイル」になってしまうのだ。

 さらにオイルに汚れが混じるとそれはストレートに潤滑性の低下になる。このことを比喩的に説明すると、例えばクランクシャフトの軸受け部分、ここにはエンジンオイルに含まれる潤滑のための分子(オイル玉と仮称)が100個入るだけのスペースがあるという設定で状況を思い浮かべて欲しい。新品エンジンオイルなら接触面には100個近いオイル玉が入るので十分な潤滑作用や衝撃緩和性があるが、走行していくうちに潤滑性や耐衝撃性が一切ないスラッジ(汚れ玉と呼ぶ)が混じってくる。すると接触面にはオイル玉と汚れ玉の両方が入ってくるので潤滑性や耐衝撃性の効果は徐々に低下し、汚れ玉がさらに増えてくれば接触面に十分な潤滑が出来なくなり、表面に傷が付いたり摩耗したりとエンジンにとって致命的なダメージを負ってしまうこともあるのだ。それに汚れ玉にはとても小さな粒子のものもあるので、そういった物質は細いオイル通路の目詰まりを起こす原因になったりもする。

 このようにエンジンオイルは例外なく劣化をするので、一度エンジンに入れたオイルは走っていようがそうでなかろうが定期的に交換することが必要なのである。なお、輸入車など一部のクルマでは1万km以上無交換を謳うロングライフエンジンオイルが使われているので、週末しかクルマに乗らないというオーナーなら「1年くらいオイル交換をしていない」という状況になるだろう。

 このオイルが指定されているエンジンのオイル交換時期は原則として自動車メーカーの指定する期間ごとに行えば良いが、輸入車のエンジンだって走行距離が伸びてくればエンジン内部はクリアランスが変化したりとオイルに不純物が混じりやすくなる。そうなればロングライフエンジンオイルといえど劣化は進むので、そこに気がつかずに使い続ければトラブルが起こってもおかしくない。それだけに例えば走行距離が10万kmを超えたなどを境に交換の間隔を見直しても良いだろう。なお、その際はロングライフエンジンオイルである必要はない。規格や粘度があう通常のオイルでOKだ。

オイル交換のサインとは?

 自動車メーカーはオイル交換に適した距離として約4000~5000km(一般論)と設定しているが、エンジンを含む機械のメンテナンスにおいてこうした数値を示すには考え方の基準が必要だ。そういう視点からメーカー推奨のサイクルを考えてみると、原則として点検整備をちゃんと行っていること、メーカー保証が効く走行距離や使用期間に収まるエンジンを前提としているとも考えられる。

 もちろん、保証の範囲を超えていてもエンジンオイルの交換時期は約5000km前後が一般的な目安には違いないが、既に説明したようにエンジンは走行していると内部パーツの劣化などから燃焼ガスの吹き抜けやガソリンのオイルへの混入が起きやすいし、スラッジの堆積も進んでくるものだ。

 こうした状態ではメーカー保証範囲内のエンジンよりもエンジンオイルは汚れやすい状態と考えられるので、長年大切に乗り続けているクルマや趣味の旧車ほど、エンジンオイルの交換時期は短めに設定した方が良いかもしれない。では、どれくらい早めたら良いかということだが、これは「エンジンノイズが大きくなったような気がする」といったドライバーの感覚的に「あれ?」と感じることがあったらそれを優先したい。もし、取り越し苦労だったとしてもエンジンオイル交換をすることはエンジンにデメリットになることはない。

 交換時期を調べる意味でオイルレベルゲージで汚れをチェックするということもあるが、エンジンオイルは交換後しばらく走ると汚れてくるし、ディーゼルエンジンの場合はすぐに真っ黒になる傾向なので、オイルの色で状況を判断するのは難しい。では、音で聞き分けるという手もあるが、遮音性の高いクルマではこれも現実的ではないのでやはり「走行距離」で管理することを基本としたい。

 走行距離での交換時期管理はわかりやすいものだけど、チューニングカーやサーキット走行をするクルマのようにエンジンを酷使するクルマの場合は、もうひとつの指針として油圧計の装着を奨める。エンジンは一番低い位置にある「オイルパン」に溜まるオイルをオイルポンプで吸い上げることでヘッドやシリンダーというオイルパンより高い位置にある部位にオイルを送っているのだが、このときに重要なのがオイルを送るための圧力、つまり「油圧」だ。

 この油圧はエンジンの回転数が上がれば高まり、高速で動く接触面や摺動部の油膜が保持できるだけのエンジンオイルを送るのだけど、汚れて不純物が多く混じったり油温が上がったりしたエンジンオイルはポンプが正常に動いていても油圧が上がらなくなることがある。すると部位によっては十分な油膜が保持できず、接触面や摺動面が余計に摩耗したり傷が付いたりすることもあるのだ。

 そのようなことからチューニングカーはもちろん、エンジンをとくに大事にしたい旧車などは油圧という数値も管理することで、よりシビアにエンジンオイルの交換時期をチェックしていきたいところだ。余談になるが、箱スカGT-Rは水温計のほか、油温計ではなく油圧計が純正装着されている。そんなところからもエンジンの状況を見るのに油圧計は有効というのがわかるだろう。

「シビアコンディション」とは?

 最近、目にするようになってきた整備用語に「シビアコンディション」という言葉がある。これはクルマの一般的な乗り方に対して、そこから外れる乗り方をしている場合のことを指す用語だが、一般的についての説明がないので自分がそれに当てはまるかイマイチよくわからない。

 そこでここで言う一般的がどんなものかを調べると「平坦な道を安定した速度で走る」である。つまり郊外の信号の少ない空いた道を走っているような状況だと解釈できるが、日本全国、人が集中して住んでいる地域ではクルマは信号のたびに止まったり渋滞にはまることが多いので、この時点で「一般的」とは言いがたい。

 また、シビアコンディションの定義には、山あいに住んでいてクルマの移動で坂道を上がることが多い(登坂の距離が長い)場合や、土埃が立つような未舗装路を走ることも含まれているし、年間走行距離が2万kmを超える場合もシビアコンディションと言われるので、つまりほとんどのクルマがシビアコンディションで使用されているとも言える。あとでシビアコンディションに分類される条件を記載しておくので、気になる人はそちらも参考にして欲しい。

 でも、こうした設定は総じて幅を持って設定されているので、どれか当てはまる項目があったとしても過敏になる必要はない。とくにエンジンオイルに関してはこれまで紹介したようにエンジンにあうグレードや粘度のものを使用して4000km前後で交換していればまず問題はないだろう。

 ただ、シビアコンディションの定義の中で気にして欲しいのが、「ホコリが多い道の走行が多い」というものについてだ。空気に混じるホコリはエアクリーナーでその多くが吸収されるが、それでも細かいものはエンジンに吸われていき、燃焼ガスに混じる。そしてそれが吹き抜け等によってオイルと混じるのだ。すると前に書いたように接触部の潤滑作用の低下などオイルの性能を落とすことになる。ホコリが多いかどうかの判断はエアクリーナーの汚れ方をチェックすると見えてくるので、オイル量のチェックをするとき同時にエアクリーナーの状態も見ておきたい。

 なお、剥き出しタイプのクリーナーに換えている場合は、純正よりも確実にホコリを多く吸い込んでいるので、エンジンオイル交換の頻度はノーマルクリーナー仕様より短く設定したほうが無難だ。

エンジンオイルを自分で交換するには

 エンジンオイルをDIYで交換するのは道具と場所さえ揃っていれば難しいことではない。それに自分で交換作業をすれば、エンジンルームを上から見ただけではわからなかったオイル漏れやブッシュ、ホースの痛みが発見できたりする。現行車や年式の新しいクルマならそういう部分の心配は少ないが、チョイ古のクルマや旧車では、こまめな点検が大きなトラブルを防ぐために重要なことなので、こうしたクルマに乗っているなら自分のクルマへの理解を高める意味でエンジンオイル交換をDIYで行うメリットは大きい。

 エンジンオイル交換は抜いたオイルや、使用しなかったぶんのオイルの処理(捨て方)までがセットになる。国産2Lクラスの普通車では約4Lほどのオイルが抜けるが、カー用品店には4.5L容量のオイル処理パックが売っているので、それを使うと抜いたオイルを燃えるゴミとして捨てることが可能(地元のゴミ収集ルールを確認)だ。ただ、この処理パックは300~400円という価格なのでオイル代の他に毎回これが必要になる。しかもカー用品店ではオイル交換が年間でタダになる有料会員制度を設けていることも多いので、それと比べると毎回処理パックを購入するのは高くつくのだ。

エンジンオイルの交換手順

 エンジンオイルを交換するには、まず古いエンジンオイルを抜かなくてはならないが、その方法としては次の2通りがある。エンジンオイルのレベルゲージからオイルチェンジャーと呼ばれるポンプを使用して抜く通称「上抜き」と、オイルパンのドレンボルトから排出する「下抜き」だ。

 ガソリンスタンドや整備工場など、オイルチェンジャーを備えているお店では上抜きの作業が多い傾向がある。これは下抜きに比べて作業手順が簡潔で、排出したオイル量が分かりやすいという利点もあるためと考えられる。またドレンボルトを抜く必要がないため、作業トラブルを避けることが可能だ。

 一方、上抜き用のオイルチェンジャーを用意できないDIYでの交換作業は、下抜きで行うことが一般的。方法としては車体をジャッキアップし、安全のために通称「ウマ」と呼ばれるリジットラックで作業スペースを確保する。そうしてエンジンのオイルパンに備わるドレンボルトを緩め、そこからオイルを排出。そうして古いオイルが抜け切ったらドレンボルトを締めるのだが、この時にオイルパンの排出口とドレンボルトの間に挟み込む「ドレンワッシャー」は、オイル漏れのリスクを軽減させるために必ず新品に交換するようにしたい。

 上抜きもしくは下抜きで古いエンジンオイルを排出したら、次は新しいオイルを入れる作業だ。必要量は車種・エンジンごとに異なり、車両の取扱説明書またはディーラーやカー用品店で確認した上で、オイル缶から専用のジョッキに移した上でエンジンへ注入する。この時、ジャッキアップしている場合は車両を下ろし、必ず車体が水平になるようにすること。そしてオイルの入れすぎを防ぐために、一気に全量を入れるのではなく、まずは規定の8割ほどを入れ、レベルゲージで量を確かめながら注入していく。

 上限値に達したらオイル注入口のキャップを締め、レベルゲージも元に戻す。これは一度エンジンをかけ、オイルを全体に行き渡らせることで、エンジン内の正確なオイル量を計測するためだ。これでもしオイル量が上限値よりも大幅に下まわっていたら、レベルゲージで確認しながら少量ずつ追加して油量を調整しよう。もしオイルを入れすぎた場合は規定量まで再度オイルを抜かなくてはならないので、オイルを注入する際はレベルゲージで細かく確認しながら慎重に作業するようにしたい。とくに下抜きしかできない場合は、再びドレンボルトから抜かなくてはならず、少量を抜くだけで大変な苦労になるので十分注意する。

交換時に併せてやっておきたいメンテ

 またエンジンオイル交換作業をする時、2回に1度のサイクルで推奨されているのが、オイルエレメントと呼ばれるフィルターの交換である。純正部品代はだいたい1000円~2000円程度、工賃はオイル交換料金プラス1000円程度が一般的な料金だ。オイルエレメントを交換する場合は、その容量分だけ新品オイルの必要量が増えることになるので、作業前に確認しておくようにしよう。

 そしてもうひとつオイル交換時の追加メニューとして、「フラッシング」と呼ばれる作業を取り入れたほうが良い場合がある。それは長期間オイルを交換していなかったり、それまでエンジン内に入っていたオイルの汚れがヒドい場合に行われるもので、簡単に言えば“エンジン内部をすすぐ”のような作業のこと。古いオイルを抜き取り、新しいオイルを入れる、その工程の間に行うもので、洗浄効果の高い専用オイルを一度入れてエンジンを数分かけ、再度オイルを抜き取ってから本来の新品エンジンオイルを入れるというものだ。

 ただしこのフラッシングは反対派の意見もあり、その理由としては「エンジン内部に留まっていた汚れがフラッシングオイルで撹拌(かくはん)してしまうことでエンジンに悪さをする可能性がある」ということと、「エンジン内にわずかに残ってしまったフラッシングオイルが新品エンジンオイルの性質を阻害してしまうのでは?」という懸念だ。クルマの状況によっても異なってくるので、気になる場合はディーラーやカー用品店などの専門スタッフに相談したほうが良いだろう。

オイル交換作業にかかる時間や工賃

 これらエンジンオイルの交換作業をショップに依頼するのであれば、ディーラーやカー用品店、自動車整備工場、ガソリンスタンドなどが一般的。オイルに熟知したスタッフであれば各銘柄の特徴や選び方にも精通していることだろう。もし自分のクルマに入れたいオイルが決まっていなければ、そうしたプロにエンジンやクルマの使い方に合わせたオイルをチョイスしてもらうのも賢明な手段だ。

 オイル交換の作業時間に関しては、お店に依頼すれば作業自体は30分もあれば完了するが、混んでいると数時間待つことになるし、お店まで距離があると行き帰りの時間を含めて半日仕事になることもある。とくに連休前や連休中、夏休み前、年末などはオイル交換を依頼する人たちで混み合うことが多いので、お店にお願いする場合はスケジュールに余裕を持って交換するようにしたい。

 対してDIYで交換する場合は、工具などの用意からジャッキアップ、そして片付けまで入れると2時間くらいは掛かるので、単純作業といえどチャッチャとは終わらない。このようにお店に依頼するにしてもDIYでやるにしてもそれぞれでメリット、デメリットがあるので自身の作業環境や作業にかけられる時間などからオイル交換の手段を考えたい。

まとめ

 このようにエンジンオイルはエンジンを保護する大事な役割を担っており、使用されるオイルの種類や交換時期などはさまざまなケースがある。また、自動車メーカー指定の純正品以外にも各オイルメーカーからはたくさんの銘柄がラインアップされており、愛車にマッチする物をじっくりと吟味することもクルマ好きにとっては楽しみのひとつだ。

 そして交換作業はディーラーやカー用品店にお願いすることができるが、最低限の道具さえあればDIYでも行うことも可能。特に距離を走った車両や年式の古い旧車などは自分で作業することで、トラブルを早期に発見できたりクルマの調子を把握できたりするメリットがある。

 とくにこだわりがなければ、メーカー指定の距離でディーラーやショップにお任せしておけば十分かもしれないが、「より気持ち良く乗りたい」とか「いつまでも最高のエンジンコンディションを保ちたい」という人は、オイルにこだわってみるのもカーライフの新たな楽しみとなるかもしれない。

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