マツダの新しいSUV「CX-60」のディーゼルエンジン搭載モデルに世良耕太が試乗した。モーター&バッテリーを持たない“素のエンジン”の魅力を考える。
MHEVとの差額は約60万円
ギャラリー:ロードスターを彷彿とさせるSUV──新型マツダCX-60 XD Exclusive Mode試乗記
マツダのSUVを国内ポートフォリオで整理してみると、小型に分類されるのが「CX-3」と「MX-30」で、車両本体価格は200万円(税込、以下同)を切るあたりから300万円台中盤に分布する(BEVを除く)。中型SUVは「CX-30」と「CX-5」で、価格帯は200万円台中盤から400万円台前半だ。大型SUVを構成するのは「CX-60」と「CX-8」で、ハードウェア面で分類すれば、横置きパワートレーンを持つCX-5をベースに3列シート化したのがCX-8。価格帯は300万円弱から500万円強となる。
マツダのSUVのラインアップに新たに加わったのがCX-60で、ハードウェア面ではパワートレーンを縦置きに搭載するのが特徴。主に運動性能面(走りを重要視)からの選択で、縦置きパワートレーンの搭載は長いボンネットフードからうかがい知ることができる。そのCX-60の価格帯は300万円弱から600万円台前半だ。
CX-60を構成するパワートレーンは4種類ある。エンジンに電動技術を組み合わせたパワートレーンが2種類で、エンジン単独が2種類。電動技術側は、2.5リッター直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンに高出力のモーターと大容量のバッテリーを組み合わせたプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)と、新開発の3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンに、最高出力12kWのモーターを組み合わせた48Vマイルド・ハイブリッド車(MHEV)だ。
エンジン単独仕様はMHEVからモーターなどの電動デバイスを取り除いたディーゼルと、2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンである。4種類のパワートレーンすべてが、新開発の8速ATを組み合わせる。電動技術系は4WDのみの設定。エンジン単独系は4WDのほかに2WD(後輪駆動)も設定する。
電動駆動系のPHEVとMHEVは電動デバイスを付加した影響もあって、価格帯は500万円オーバー。この価格帯のマツダ車はこれまでほとんどなかったので、既存のマツダユーザー、あるいはこれまでの製品ラインアップからマツダに対するイメージを固めてしまっている人々にとっては手を出しにくいかもしれない。
ユーザーの上級移行をスムーズにおこなうため、CX-60を発売するにあたってマツダは、既存の価格帯にもバリエーションを配置した(と、見ることもできる)のが、エンジン単独仕様の6気筒ディーゼル車と4気筒ガソリン車だ。
6気筒ディーゼル車の価格帯は320万円台から460万円台、4気筒ガソリン車は300万円を切る価格帯から設定がある。
今回は6気筒ディーゼル車をドライブする機会を得た。4WDではなく2WDだ。XD Exclusive Modeというグレードで、(18インチではなく)20インチサイズのアルミホイールや(クロスではなく)ナッパレザーのシートを装備していたり、インパネやドアトリムのデコレーションパネルが華やかだったりと、“素のディーゼル”としては最上級。そのため車両本体価格は443万3000円。それでも、6気筒ディーゼルMHEVの最廉価版より62万1500円も安い。
走りに振りきったツウの選択「価格差に比例して安っぽい部分があるの?」「それとも十分なの?」「どうなの?」という疑問を確かめるべく、素のディーゼルの、4WDではなく2WD仕様のステアリングを握った。
高速道路と市街地と山岳路を走りまわって実感したのは、ディーゼルMHEVから電動デバイスを取り去り、前後に配分する駆動力を後輪にだけ配分する機構にした簡略版では決してないことだった。
後輪駆動の6気筒ディーゼル車を気持ち良く走らせながら思ったのは、「これ、マツダ・ロードスターにおける990Sとおなじではないか?」という点だった。990Sはロードスターの原点に立ち返り、ばね下重量の軽量化を図り(車名は990kgの車重に由来)、シャシー&エンジンに専用セッティングを施して走りの楽しさを追求したモデルだ。
CX-60の6気筒ディーゼル車の場合、素直な走りを追求するために、あえて電動デバイスを取り去ったと認識できなくもない。2WDはさらに、走りのために軽量化を追求した仕様だと考えたくなる。スペックを確認すると、試乗車のXD Exclusive Modeの車重は1840kg(XD、S Packageの2WDは1790kg)で、4WDのMHEVより70kgも軽いのだ。
3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載するのはMHEVも素のディーゼルも変わりはないが、前者はハイパワー版、後者はローパワー版の位置づけで、スペックは異なる。MHEVが搭載するエンジンは最高出力254ps、最大トルク550Nmを発生。素のディーゼルエンジン車は最高出力231ps、最大トルク500Nmだ。
重量級のクルマをストレスなく動かすのに必要なのは、パワーよりもまずトルクだ。3.3リッター6気筒ディーゼルエンジンはCX-60に合わせて開発しており、あらかじめ1900kg級の車重を見込んで最大トルクの範囲を設定してある。それが500~550Nmだ。走らせてみて実感したが、500Nmでも十分。クルマの軽さも効いているのだろう。アクセルペダルを深く踏み込んだときの瞬発力と、切れ目なく続く力強い加速が印象的だ。
MHEVの場合は8速ATの前端に配置したモーターの機能を生かし、定常走行時にエンジンを停止し、加速時にエンジンを再始動して効率(燃費)を高める。モーターを持たないディーゼルエンジン車は、当然エンジンはかかりっぱなしだが、走行中はずっとエンジンが動いており、足の裏の動きと一体となって反応してくれる一貫性が心地いい。
CX-60の4WDは後輪駆動の特徴であるニュートラルな旋回特性に、前輪に駆動力を配分することによって得られる安定性を付加する狙いがある。裏を返せば、2WDにしたところで、後輪駆動の本来の持ち味であるニュートラルな旋回特性は担保される。走りの楽しさを追求したロードスターだって後輪駆動ではないか! ロードスターとCX-60ではだいぶ物理量は異なるが、「人馬一体」や「走る歓び」を追求するマツダのクルマづくりにおけるスピリットに変わりはなく、実際、2WDのCX-60も走らせて楽しいクルマだった。
走行性能に影響を与える技術面では、ロードスターで初採用されたキネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)が、パワートレーンの種類に関係なく全車に標準装備されている。KPCは横Gが強めにかかるコーナリング時に、リヤ内側輪をわずかに制動することでロールを抑える技術だ。重心が高い車両ほど効果は高く、路面にピタッと張り付いてコーナーをクリアしていく動きは惚れ惚れする。高速道路の料金所から半径大きめの上り勾配のカーブをたどって本線に合流するシーンは、ディーゼルエンジン特有の頼もしさも相まって、CX-60ディーゼルエンジン車2WDきっての得意科目である(攻めすぎ注意)。
CX-60のMHEVではないディーゼルエンジン車、それも2WD(FR)を走らせているとどうしても、ロードスターとの近似性が脳裏をよぎってしまう。軽やかとは言いがたいが、意のままに動く気持ち良さは共通。走りに振りきったツウの選択としておすすめのバリエーションだ。
文・世良耕太 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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