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適応力を見せたチャンピオン経験者たち。今年は追われる立場のバニャイア/MotoGPの御意見番に聞くインドGP

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適応力を見せたチャンピオン経験者たち。今年は追われる立場のバニャイア/MotoGPの御意見番に聞くインドGP

 9月22~24日、2023年MotoGP第13戦インドGPが行われました。初開催のサーキットであることでいつもと違った勢力図になり、ホンダやヤマハも良い成績を残しました。日本GP前に向けてこのインドGPをどう見れば良いのでしょうか。

 そんな2023年のMotoGPについて、1970年代からグランプリマシンや8耐マシンの開発に従事し、MotoGPの創世紀には技術規則の策定にも関わるなど多彩な経歴を持つ、“元MotoGP関係者”が語り尽くすコラム第18回目です。

2024年MotoGP暫定カレンダー発表。史上最多の全22戦、日本GPは10月6日開催予定

※ ※ ※ ※ ※ ※ 

--今回のインドGPはMotoGP史上初開催ということで、色々な意味で注目されていましたが、レース結果についても前回までとは少し違う勢力図が見えましたね。

 そうだね。結果だけ見れば、それまでドゥカティを軸にアプリリア・KTMといったヨーロッパ勢が鎬を削っていて、ホンダ・ヤマハの日本勢は蚊帳の外といった感じだったけれど、今回は久々にホンダのマルク・マルケス選手がスプリントで3位表彰台、ヤマハのファビオ・クアルタラロ選手がレースで3位表彰台と、予想外の展開にちょっと驚いたね。

 ま、個人的には、これまで転倒続きで完走の無かった、ホンダのジョアン・ミル選手がレースで完走・5位入賞という結果が一番のトピックかな、地味だけど(笑)

--そういえば、ミル選手の完走って初戦のポルティマオとカタルーニャの2回だけですね。今回は予選からマルケス選手を抑えて5位、スプリントでは残念ながら早々に転倒しましたけど調子は良かったですね。

 結果的にマルケス選手が3位表彰台で、これも初戦のポルティマオ以来だから結構インパクトが大きかったね。

--今回日本メーカーが急に勢いを取り戻したようですが、どういった要因が考えられますか?

 日本メーカーと言っても、ホンダとヤマハではそれぞれ要因が異なるわけで、それはマシン造りの方向性に起因すると思うんだけれど、ヨーロッパのメーカーも含めて共通の要因は、やはり初物のサーキットと言うことに尽きるんじゃないのかな。

--確かに、どのライダーにとっても初めて走るコースですから、まずはコースレイアウトをしっかりと覚えるという初歩的なところからスタートしますよね。マシンのセッティングも、似たような特徴のコースに合わせるとしても手探りですしね。

 極端な例では、前回調子良かったからセッティングはそのままで行こうとかね(笑)

 このサーキットは、かつてF1を開催していたから、コースのレイアウトなど事前にゲームで確認できるかもしれないけど、特徴的な高低差についてはやはり実際に走ってみないと分からないしね。それにインドのモータースポーツ事情には詳しくないけれど、レースの開催数は少ないだろうから、路面の状態もあまり良くないしグリップレベルも低いはず。

 つまり、新しいコースに対するライダーの適応力とサーキットのコンデイションが支配的な要因で、マシンの性能限界よりも低いところに限界が設定されてしまった感じだね。

--そういえば、ミル選手が好調の要因を聴かれて、こういうレイアウトのコースは嫌いじゃないと言ってましたね。

 そうそう、完走したポルティマオとか、エステルライヒとかと同じで、自分には相性が良いというようなコメントだったね。どれも高低差が大きくてストップ&ゴーのサーキットだからね。そういえばアレックス・リンス選手が優勝したアメリカズGPのコースレイアウトもそんな感じだったから、傾向としてはホンダ向きなのかな。

--マルケス選手も、ここは自分とホンダRC213Vに向いているサーキットだと言っていました。

 基本的に路面のグリップが低いからマシンの差が出にくいし、コースの特性で深いバンク角でのサイドグリップより、バイクを起こしてからのトラクションが求められるので、そもそもサイドグリップに難のあるマシンの欠点がカバーされると分析していたね。つまりストップ&ゴー型のサーキットでは現状でもかなり行けると……

--ということは後半のアウェイのシリーズでも何回かチャンスはありそうですね。と言っても一方のヤマハのマシンは、基本的にストップ&ゴーは苦手なタイプですよね?

 日本GPも含めて、ストップ&ゴー的なサーキットはかなりあるので、勝機はあるかもしれないな。なんといってもメーカーのお膝元のレースだから気合も入るしね。

 ヤマハが好調だった件は、マシンのキャラクター以上にライダーのコースに対する適応能力とか地力が発揮されたと考えるしかないね。繰り返しになるけど、サーキットのコンデイションによってマシンの性能がフルに発揮できない、つまり差が出にくいというのも有利に働いたと……

 という事は走りこむ事で、まだまだタイムが上がる可能性が有るので、来年あたりはまたガラッと違った状況になるだろうね。

--結果的にレースはドゥカティのマルコ・ベゼッチ選手が独走優勝しましたけど、スプリントもあのアクシデントが無ければ優勝していたかもしれませんね。

 スプリントの1コーナーのアクシデントは、今シーズン3回目の多重クラッシュで、追突したルカ・マリーニ選手が鎖骨骨折とかで次戦はさすがに欠場かな。ベゼッチ選手のその後の追い上げはすごかったから、あれが無ければ優勝の可能性は高かったはずだね。

 しかし、今回のアクシデントもコースレイアウト見ただけで、絶対に起きると確信していたけど、悪い予想はピタリと当たった。そもそもストレートエンドで鋭角的にターンするレイアウトはスタート直後のアクシデントは避けられないよね。

 最近のサーキットは殆どティルケデザインだから、F1用に設計されていてどれもこんな感じ。F1はイナーシャも大きいから、トップスピードから確実に安全圏まで速度を落としてアクシデントの際のダメージを低減するというコンセプトなのかな。少しは二輪の要件も考慮して設計して欲しいよね。

--確かにコース幅は狭いけど、F1はストレートでDRSを使ってオーバーテイクするから問題無いよね的なレイアウトですね。でもベゼッチ選手の独走で単調に見えたレースも、その後方では熾烈なオーバーテイク合戦があって結構見ごたえありましたよね。

 ホルヘ・マルティン選手とフランセスコ・バニャイア選手の2位争いは結構スリリングなシーンが有って、冷や冷やしながら見ていたよ。最終的にオーバーテイクの際のアクシデントではなくて、前に出たバニャイア選手がペースを上げてマルティン選手を引き離しにかかったとたんにスリップダウン。

 シーズン前半にはよく見られた光景だけど、最近安定感が増していたバニャイア選手だっただけに、ドゥカティファクトリーとしてもまさかの展開だったね。やっぱりカタルーニャのアクシデントで流れが変わりつつあるのかな。

 クアルタラロ選手も「僕のマシンはオーバーテイクできない!」と常にぼやいている割にはマルティンと互角にやりあっていたから、「やればできるじゃん」思った(笑)最後に力尽きたのは残念だったけどね。

--一方のマルティン選手とベゼッチ選手は、このところ調子を上げてポイントを荒稼ぎしてバニャイア選手に肉薄してきましたね。

 レースを興行としてみれば、悪い展開ではないというか、ドルナにしてみたら願っても無い展開になって来たというところではないかな。

 去年は、シーズン途中までチャンピオンシップをリードしていたクアルタラロ選手が、後半失速してアウェイでボロボロになり、逆に後半で調子を上げてきたバニャイア選手がアウェイでも好調をキープして逆転したのは記憶に新しいところ。

 今度は追われる立場になった、バニャイア選手のメンタリティの強さが問われる番だね。

--バニャイア選手って、追うふたりに比べると何となく線が細い感じが否めませんよね。

 そうなんだよ、バニャイア選手って背も高くてイケメンで、今までの二輪ライダーには無かったタイプなんだよな。それだけにメンタルの強さはどうなの、って一抹の不安があるんだ。

 言っちゃ悪いけど、マルティン選手にしてもベゼッチ選手にしても、見るからにふてぶてしくてメンタル強そうじゃん(笑)

 ま、誰が勝ち上がって行くにしても今シーズンはドゥカティの2連覇がほぼ確定、と言う状況に変わりなさそうなのが癪だけどね。

--ところで今回は技術的な内容が皆無でしたね。

 だから言ったでしょ、「新しいコースに対するライダーの適応力とサーキットのコンデイションが支配的な要因」だって。これだから二輪レースは面白いんだよ(笑)

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みんなのコメント

1件
  • fire_fox
    ファビオとマルティンのバトルが互角?!

    立ち上がりの加速差、見た?
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