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フェラーリが僅差でトヨタを破り2連覇! 今年のル・マン、24時間走ってもなぜ大接戦に?

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フェラーリが僅差でトヨタを破り2連覇! 今年のル・マン、24時間走ってもなぜ大接戦に?

フェラーリが2連覇!

今年のル・マン24時間が長く記憶されるレースとなることは間違いないだろう。
最高峰カテゴリーのハイパーカークラスにはフェラーリ、トヨタ、ポルシェ、キャデラック、ランボルギーニ、プジョー、BMW、アルピーヌなどの大メーカーがこぞって参戦。しかも、彼らは予選から激戦を繰り広げたうえに、24時間のレースを戦い終えてもなお実に9台が同一周回でチェッカードフラッグを受けたのである。私がル・マン24時間を取材し始めてから30年以上になるが、フィニッシュの瞬間までこれほど緊張感の強い戦いが繰り広げられたのは、初めてのことといっていいかもしれない。
結果的に優勝したのは、アントニオ・フオコ、ミゲル・モリーナ、ニクラス・ニールセンの3人が駆ったフェラーリ50号車。昨年、50年振りに最高峰カテゴリーに復帰したフェラーリは、並みいる強豪を下し、ル・マンで通算10回目となる栄冠を手に入れているので、今年は2連覇を果たしたことになる。
ただし、去年のウィナーは同じフェラーリでも51号車に搭乗するアレッサンドロ・ピエール・グイディ、ジェイムズ・カラド、アントニオ・ジョバナッツィの3人。実は、フェラーリでは50号車のほうがエース格なのだが、昨年は跳ね石でラジエターにダメージを受ける不運により勝利を逃していたので、ル・マン復帰2年目にして獲得した今回の勝利には格別の思いを抱いたはずだ。
その喜びを、リーダー役のフオコは次のように語った。「優勝できて、本当に最高の気分です。そしてフェラーリ・ファミリーの一員であることに強い誇りを感じています。チーム全体が、難しいウェットコンディションのなかでも素晴らしい仕事をしてくれました。今日は僕たちの1日だったといっていいでしょう。あとはチーム全員でお祝いをするだけです!」

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なぜ24時間走っても大接戦に?

レース後の記者会見で、このフオコの隣に腰掛けていたのがトヨタ7号車を走らせた小林可夢偉だった。予選で赤旗中断を招いた責任を問われ、ハイパーカー・クラスの最後尾にあたる23番グリッドからスタートした7号車は、レースが始まって3時間が経過した頃には優勝争いに加わる速さを披露したものの、2度のパンクやエンジン・セッティングに関連するトラブルもあり、最終的には50号車と14秒差の2位でフィニッシュしていた。ちなみに、可夢偉は2021年には総合優勝を果たしているが、2位フィニッシュが通算5回を数えるほど、ル・マンでは悔しい思いを重ねてきたドライバーである。
その可夢偉が、隣のフオコに向かって、こんなことを問いかけた。「夜の時間帯にインディアナポリスコーナーで追い越したとき、僕がなにをしたか覚えている?」 するとフオコは笑顔を浮かべながらピースサインを掲げたのである。
「そうなんですよ。インディアナポリスは300km/h以上のスピードで通過するんですが、追い越し際にフオコにピースサインを送ったら、彼も間違いなく僕のほうを見ていて、こちらに向けて『イエス』とばかりに頷いたんです!」
このコメントに記者会見場は爆笑に包まれたが、直後に私は疑問を抱いた。「なぜ、可夢偉はそれほど簡単にフェラーリを追い越せたのだろうか?」
これには、ちょっとした秘密がある。
前述したとおり、今年のル・マンは近年まれに見る接戦となったが、これは主催者が実施する性能調整(BoP=Balance of Performance)によって実現されたものといって間違いない。
ル・マンは世界耐久選手権(WEC)の一戦として開催されていることは皆さんもご存じのとおり。そのWECではメーカー間のパフォーマンス差を最小限とするため、1戦ごとに車重、最高出力、1スティントで使用できるエネルギー(実質的に1回の給油量に相当)などをメーカーごとに定めている。これが性能調整と呼ばれるものだが、ル・マンではこれにくわえてパワーゲインと呼ばれる規定が導入された。
パワーゲインの最大の特徴は、これまでは速度に関わらず一定とされてきた最高出力を、250km/h以上の速度域のみパワーを上乗せしたり、反対に差し引いたりできる点にある。ル・マンでの性能調整を具体的に記すと、フェラーリとトヨタの最高出力は508kW(約690ps)で横並びだが、250km/h以上の速度域ではフェラーリがここから0.9%(約6.2ps)差し引かれるのに対して、トヨタは2.6%(約18ps)上乗せされていたのだ。つまり、前述のインディアナポリスでは、トヨタはフェラーリより24psほど大きなパワーで走っていたことになる。
もちろん、可夢偉がフオコをオーバーテイクできたのは、この出力差だけが理由ではあるまい。ただし、このような性能調整があって、初めて今回のような激戦が繰り広げられたことは覚えておいたほうがいいだろう。


ランボルギーニは10位完走

ちなみに、フェラーリ50号車、トヨタ7号車に次ぐ3位表彰台を得たのは、昨年のウィナーであるフェラーリ51号車。前述したような性能調整をはね除けて、2年連続で2台を表彰台に送り込んだフェラーリの勝負強さには瞠目すべきものがある。
予選(厳密にはハイパーポール)でポールポジションを獲得したポルシェ6号車はフェラーリ50号車とわずかに1.1秒差で4位。フロントロウからスタートし、レース後半まで優勝争いに加わっていたキャデラック6号車は、ウェットコンディションのペースが伸び悩んで7位に終わったほか、昨年に続く参戦となったプジョーは94号車の11位が最高位だった。
いっぽう、今季からハイパークラスに挑戦したニューカマーのなかでは、ランボルギーニ63号車の10位がベストリザルト。残るBMWとアルピーヌは、予選で善戦したものの決勝では完走を果たせなかった。


24 HOURS OF LE MANS 2024
RACE RESULT
HYPERCAR Class
1位 / No.50 / フェラーリ AF コルセ / フェラーリ499P
2位 / No.7 / トヨタ ガズー レーシング / トヨタ GR010 HYBRID
3位 / No.51 / フェラーリ AF コルセ / フェラーリ499P
4位 / No.6 / ポルシェ ペンスキー モータースポーツ / ポルシェ 963
5位 / No.8 / トヨタ ガズー レーシング / トヨタ GR010 HYBRID
6位 / No.5 / ポルシェ ペンスキー モータースポーツ / ポルシェ 963
7位 / No.2 / キャデラック レーシング / キャデラック Vシリーズ.R
8位 / No.12 / ハーツ チーム ジョタ / ポルシェ 963
9位 / No.38 / ハーツ チーム ジョタ / ポルシェ 963
10位 / No.63 / ランボルギーニ アイアン リンクス / ランボルギーニ SC63

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みんなのコメント

5件
  • cam********
    ル・マン24でトヨタ鬼の居ぬ間説を覆す事が出来ないばかりか証明してくれた。
  • Lore in
    色々やったが結局トヨタは負けた
    だめだな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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