国産初の量産プラグインハイブリッドカー、「プリウスPHV(先代)」のデビューから、早9年。
その後、2013年に、三菱アウトランダーPHEVが登場するものの、後追いするものはおらず、プラグインハイブリッド車は、長らくこの2車種のみだった。
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しかし、今年2020年6月、「RAV4 PHV」が登場するや否や、注文が殺到。
注文停止となるほどのバカ売れぶりを見せると、三菱も負けじと、年内に「エクリプスクロス」に、ディーゼルモデルに代えてプラグインハイブリッドモデルを投入する予定と、いまプラグインハイブリッド車が賑わいを見せ始めている。
これまで、日本ではいまいち注目が集まらず、日陰の存在だったプラグインハイブリッドモデル。果たして、プラグインハイブリッドは、ハイブリッドから主役の座を奪えるのだろうか。
文/吉川賢一、写真/TOYOTA、MITSUBISHI、HONDA、LAND ROVER JAGUAR、BMW、MINI、MERCEDES BENZ、PORSCHE、VOLVO、JEEP、平野学、池之平昌信
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環境性能に加えて、加速性能も魅力
現行プリウスPHVは2017年2月に第2世代モデルとして刷新された。ノーマルプリウスとはデザインも差別化され、違いをアピール
プラグインハイブリッドのメリットとして挙げられるのは、まずは環境性能だろう。ガソリン車やハイブリッド車と比べてCO2などの排気ガス排出量を減らすことができる。
そして、2つめは、ランニングコストの安さ(低燃費)だ。ハイブリッド車よりもガソリン消費量が少なくてすむ。
さらに、加速性能や、走りの質感の高さも、プラグインハイブリッド車ならではの魅力だ。RAV4 PHVに試乗させていただいたが、軽くアクセルペダルを踏みこんだだけで、一切の遅れがなく加速Gが立ち上がり、クルマが前へ「ドンッ」と押し出される、圧倒的な加速力を感じた。
そもそもRAV4は、ハイブリッド車でも「踏めば速い」という印象はあったが、PHVはその比ではなく、加速Gの鋭さを楽しみたくて、アクセルペダルを踏みたくなってしまうほどだ。
史上最速のRAV4のキャッチコピーは伊達ではなく、物凄い加速性能に驚かされる。2020年10月末の段階ではオーダーストップ状態が続いている
EV走行がメインの一般道では、車内の静かさと振動の少なさによって、極上の移動空間を味わうことができた。日常使用の範囲であれば、ガソリンを一滴も使わずに、EV走行のみで事足りるのも、経済的だ。
環境保全に関心のある方や、電動による途切れの無い力強い加速を楽しみたい方にとって、プラグインハイブリッド車は、大変魅力的なクルマだ。
だがやはり、デメリットもある。「車両価格」と「車重」、そして「インフラ」だ。
弱点1:高すぎる価格
プラグインハイブリッド+電子制御4WDにより環境性能と走破性を高い次元で融合させたアウトランダーPHEVは根強い人気
プラグインハイブリッド車は、ハイブリッド車よりも20~30%価格が高い。RAV4 PHVはハイブリッドに対して約110万円のアップ、プリウスPHVはプリウスに対して約75万円のアップ、アウトランダーPHEVは約76万円のアップとなる。
その要因はもちろん、駆動用バッテリーやPHV専用パワートレインにある。
リチウムイオンバッテリーの価格が大崩落でもしない限り、この価格差は埋まることはない。ハイブリッド車とは決して埋まらない価格の高さは、プラグインハイブリッド車の大きな弱点だ。
プラグインハイブリッド化するにあたり、普通のハイブリッドよりも大きな容量のリチウムイオンバッテリーが必須となるため高価になる
弱点2:ヘビーな車両重量
そして、重すぎる車両重量も弱点だ。RAV4 PHVはハイブリッドに対して210kgアップ、プリウスPHVはプリウスに対して160kgアップ、アウトランダーPHEVは280kg、と、プラグインハイブリッド車となったことで、とんでもなく重量が増えている。
マクロな視点で環境保全を考えれば、軽い車重のクルマに、エネルギー効率のいいパワートレインを組み合わせるほうが適していることは、物理の初歩を学んだ方であればおわかりのはず。
三菱はエクリプスクロスPHEVを2020年12月に販売開始予定。好評だったディーゼルエンジンは消滅。価格は約385万~約450万円
評論家の中には、バッテリーを低い位置に置くことで低重心になりハンドリングに優れ、かつ大容量バッテリー車になるほど重量感のある乗り心地となるのでいい、という方もいる。
それも間違ってはいないが、「クルマは軽量であること」に勝るものはない。
重量級ボディを支えるために、車体やサスペンションを強化して、戦車のように重たくなったボディを、電気の力でグイグイと走らせるのが環境にいいとは、筆者は到底思えない。
そのため、どのメーカーも、重たくなってしまった車重を隠すよう、EV航続距離の長さや加速のよさといった「パフォーマンス」をアピールしているだろう。
本来の環境保全の考え方とは矛盾していることを、取り上げるメーカーはない。「最新のエコカー」であるプラインハイブリッドの存在を、否定しかねないからだ。
下記の表に、現在日本で販売中の国産プラグインハイブリッド車と、そのベースとなったモデルのスペックを載せたので、参照してほしい。
プラグインハイブリッド車の価格の高さは、駆動用バッテリーやPHV専用パワートレインが要因。さらには車両重量の増加が著しい点は見過ごせない点だ
弱点3:インフラの不足
筆者は、元EVオーナーだ。電力がないと死活問題となるフルEVで、やっとの思いでたどり着いたパーキングエリアの充電器。しかしフルEVだけでなく、プラグインハイブリッド車も列をなしている光景を何度も見かけた。
プラグインハイブリッド車は無理して電力充電せずとも、移動ができるのだが、「いざというときのために備えておきたい」といった日本人の特性もあるのだろう。
当時は「プラグインハイブリッドは電気じゃなくても走れるじゃないか」とも思ったものだが、しかし問題はそこではなく、圧倒的に充電設備が足りていないことにある。
欧州車がプラグインハイブリッドに積極的なのは、環境規制においてかなり優遇されるという理由がある。今後さらに増えるためインフラの整備は急務
東名高速下り線の海老名SAのように、4基の急速充電器が設置されている場所もあるが、これは特異な例。普通は、1カ所に2基あれば多いほうで、一般道にある設備だと、夜間は使用できないとか、定休日があるなど、いまだに足りていないという印象だ。
プラグインハイブリッド車が国内で普及するためには、こうした充電設備のより一層の充実はもとより、充電速度が速い設備へ更新をすることが必要であり、そのためには、クルマ側にも急速充電時のバッテリー加熱を防ぐ温度調整機能などが、必要となる。
プラグインハイブリッドは100%電気自動車と違い、充電しなくても走行することが可能だが、いざという時のために充電を欠かさないのは当然のこと
結論:主役にはなれない
例えば20年後であっても、プラグインハイブリッド車が、クルマのメインストリームになることはない、と筆者は考えている。
モーターによる圧倒的な加速や、EV航続距離の長さは、プラグインハイブリッドの魅力ではあるが、価格への跳ね返りが大きすぎる。
高額なプラグインハイブリッド車を買うよりも、そこそこのパフォーマンスだが環境コンシャスなハイブリッド車のほうが、現実的には正しい選択といえないだろうか。
今後は、比較的廉価なクルマにはハイブリッド(マイルドハイブリッド含む)、さらに高価なクルマの一部にはプラグインハイブリッド、そして、各カテゴリーに純EV車がフルラインアップ、といった形に決着するのではないか、というのが、現時点での筆者の予想だ。
つまり、「日本自動車界の主役として、ハイブリッド車に取って代わる」というわけではないが、新車ラインアップに存在感のあるキャラクターとして一角を占めるようになるだろう…ということだ。
マツダMX-30は日本でまずはマイルドハイブリッドを販売。2021年初頭に100%EVを導入、そして隠し玉としてレンジエクステンダーもラインナップ
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