グローバルでチョー売れ筋カテゴリーとなっているSUV。近頃は3列シートを備えるモデルもラインナップされるようになってきたが、そもそもその3列目シートの快適性やユーティリティはどうなのか。
今回は、国産2台と輸入車1台のSUV3台、さらに国産ミニバン1台の計4台を用意し、3列目にフォーカスして徹底チェックを行った!
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●今回テストを行った4モデルはコチラ!!
マツダ「CX-8 25Tエクスクルーシブモード」(462万7700円)。3列シートをウリにするマツダSUVのフラッグシップモデル。ガソリンの2.5LNA&ターボ、2.2Lクリーンディーゼルを設定する
レクサス「RX450hL」(796万円)。レクサス「RX」の全長を110mmストレッチし、追加された3列シートモデル。パワートレーンはV6、3.5Lハイブリッドのみの設定
ボルボ「XC90 B5 AWD ノルディックエディション」(879万円)。ボルボのSUVでは最大クラスとなるモデル。パワートレーンはいずれも2Lのガソリンターボに48Vマイルドハイブリッド、そしてプラグインハイブリッドを組み合わせる
〈特別参加〉日産「セレナe-POWER ハイウェイスターV」(358万2700円)。ボックスタイプミニバンのベストセラー車で、2Lマイルドハイブリッドと1.2Lのe-POWERの2種類のパワートレーンを設定
自動車評論家の渡辺陽一郎氏(写真手前左)と、モデルの田中麻奈未さん(写真手前右)が4モデルをチェック!!
自動車評論家の渡辺陽一郎氏と、モデルの田中麻奈未さんが一気乗りした人気3列シートSUV 3本勝負! その注目の評価やいかに!?
※本稿は2020年9月のものです
文/渡辺陽一郎
モデル/田中麻奈未
写真/平野学
ベストカー2020年10月26日号
【画像ギャラリー】あのモデルはどんな感じ!? 登場した3列シートSUV&ミニバンの気になる内外装をチェック!!
【ROUND1】 実際のところ、どんなものなのか? 3列目の居住性
3列目の居住性は、以下の方法で確認した。身長170cmの乗員が運転席に座り、運転姿勢を合わせる。次は2列目の右側(運転席の真後ろ)に移り、膝先に握りコブシがひとつ収まるようにシートのスライド位置を調節する。その後に3列目の居住性をチェックした。
3列目が最も広いSUVはマツダ「CX-8」だ。ほかの車種と同様、3列目は床と座面との間隔が足りずに膝が持ち上がる。それでも膝先に握りコブシひとつ半の余裕があり、頭部は天井に触れない。3列目に座る乗員の足が2列目シートの下に収まり、窮屈感を和らげた。
レクサス「RX450hL」の3列目は残念ながら膝先空間も狭く、3車のSUVモデルでは最低点になった
2位はボルボ「XC90」。3列目の膝先空間はコブシひとつ弱だ。CX-8よりも狭いが、頭上空間は同程度で大人が座れる。
3位はレクサス「RX450hL」。2列目にスライド式の格納機能が採用されて3列目の乗降性はいいが、スライドレールを埋め込んだから床が高い。3列目に座ると、ほかの2車種以上に膝が持ち上がる。膝先空間も狭く2列目の背面との隙間もわずかだ。頭部は天井に触れてしまう。
また、RX450hLでは、2列目に座る乗員の足が1列目の下に収まりにくい。従って3列目を使うために2列目を前寄りにスライドさせると、2列目まで窮屈になる。
ミニバンのセレナは、3列目の膝先には握りコブシふたつ半の余裕があって頭上も広い。床と座面の間隔も充分に確保され、膝が持ち上がりにくい。
こちらはセレナの3列目シート。ミニバンだけに当然だが、頭上空間が圧倒的に広く膝先も余裕あり
「3列目の居住性」採点表
【ROUND2】 実際に座って走行して実感! 3列目の乗り心地と快適性
3列目の乗り心地と快適性が最も優れているのは「RX450hL」だ。頭上と足元が狭く、居住性は最下位だが、快適性は高い。突き上げ感が抑えられ、路上のデコボコも伝えにくい。3列目の座面も柔軟で、路面からのショックを吸収する。
CX-8を抑えてこの項目で1位に立ったのはRX450hL。居住性は低いが、快適性は高い
田中麻奈未さんは「走りが滑らかで、音も静かです。クルマに乗っている感じがしません。3列目は狭いけれど乗り心地は快適です」とコメントした。
2位は「CX-8」。上下に揺すられる印象を伴うが、不快な突き上げ感を抑えてSUVの3列目では快適だ。シートの吸収性もいい。田中麻奈未さんは「エンジン音が適度に聞こえて、クルマに乗っている実感が湧きます。乗り心地が少しユラユラしますが硬さを抑えています」という。
CX-8の3列目シートに座ると、不快な突き上げ感が抑えられていてシートの吸収性もよかったという
3位は僅差で「XC90」。RX450hLとCX-8は、低めの速度域に焦点を合わせたが、XC90は高めの領域を重視する。この影響により、時速50km前後で街中を走ると硬く感じやすい。ただし突き上げる粗さはなく、引き締まった印象だから、硬めではあるが、上下の揺れが早めに収まる。高速道路などでは快適だ。
田中麻奈未さんは「少しゴツゴツしますがフラフラしません。地面に近いところに座っているような安心感があります」と述べた。
セレナの3列目は、後輪からボディが後方へ張り出した部分に設置されていて上下動が大きく感じる。ユサユサと揺すられる印象も伴う。田中麻奈未さんは「路面からの振動で少しミシミシと音がしますが、乗り心地の硬さはないです。周囲の見晴らしもいいです」とコメントした。
「3列目の乗り心地と快適性」採点表
【ROUND3】 ドライバーズカーとしてどうか? 走りのよさとハンドリング
走りと操舵感は各車種に特徴があるが、日本の道路環境に最も適しているのは「CX-8」だ。全長が4900mmのLサイズSUVだが、操舵感が比較的正確で適度によく曲がる。高重心のSUVが苦手とする下り坂のカーブで危険を避けるような場面でも、後輪が確実に接地して挙動を乱しにくい。
高速域の乗り心地は「XC90」、低速域では「RX450hL」に見劣りするが走行性能は良好だ。ボディが大柄な割に、運転している実感を味わえる。
2位は「XC90」。重厚感が伴って直進安定性が優れている。高速道路のカーブを曲がる時の安心感も高い。その代わり小さく回り込む峠道のカーブでは、ボディの重さを意識させる。操舵に対する反応も少し鈍い。車両重量が2トンを超えることも影響した。全長は4950mm、全幅は1930mmにも達するため、街中での取り回しはよくない。乗り心地まで含めて、高速道路を使った長距離移動に重点を置く。
CX-8の撮影車のエンジンは直4、2.5ℓターボ車。230ps/42.8kgmを発揮する。最大トルク発生時のエンジン回転数は2000rpm
XC90は2Lターボに48Vマイルドハイブリッド。250ps/35.7kgmのエンジンに10kW/40Nmのモーター採用
3位は僅差で「RX450hL」だ。CX-8に比べると操舵に対する反応が穏やかで、XC90ほど重厚でもないが、運転感覚はなじみやすい。低速域の乗り心地が優れ、ハイブリッドのモーター駆動も加わるから、誰が乗っても静かで滑らかに走るいいクルマだと感じる。
これらの上級SUVに比べて、ミドルサイズミニバンのセレナは、走行性能や操舵感が見劣りする。それでもe-POWERは、ノーマルタイプのSハイブリッドに比べると、挙動の変化が滑らかで操舵に対する曖昧な反応もある程度は解消されている。
RX450hLはV6、3.5Lハイブリッドを搭載。262ps/34.2kgmのエンジンに2つのモーターを採用。システム出力は313ps
セレナの撮影車は1.2Lのe-POWERを搭載
「走りのよさとハンドリング」採点表
【総括】
SUVは悪路を走破するクルマから発展したので、大径タイヤ、厚みのあるフロントマスクなど外観の存在感が強い。一方、ボディの上側はワゴンに近い形状だから室内は広い。カッコよさと実用性の両立で人気を高め、3列目シートを備える車種も増えた。
SUVの床は、ミニバンのように平らではなく、3列目は2列目に比べると燃料タンクのために持ち上がる。窮屈な姿勢になるが、多人数乗車の機会が1年に数回、短距離にかぎられるなら、ミニバンではなく外観の見栄えや走りのいいSUVを選ぶほうが合理的という判断も成り立つ。
大人の多人数乗車が片道1時間に達する場合はマツダ「CX-8」を推奨する。SUVの3列目としては最も快適で、ミニバンに置き換えると、ホンダ「フリード」やトヨタ「シエンタ」に近い居住性を確保した。
内装の質、走りも優れ、総合評価も高い。中心価格帯は350~400万円で、上級SUVとしては割安だ。トヨタ「ハリアー」「アルファード」、スバル「新型レヴォーグ」などの売れ筋価格帯と重なる。
ボルボ「XC90」の3列目は、CX-8ほど快適ではないが、片道40分程度なら大人の多人数乗車も可能だ。ボディは全長が約5m、全幅も1.9mを超えるから高速道路を巡航する使い方に適する(この時は3列目を使わない)。価値観が日本車とは異なり、価格も824万円以上だ。
レクサス「RX450hL」は3列目が窮屈で、大人が多人数で乗車するなら片道20分までだ。その代わり、内外装や運転感覚を上質に仕上げた。
個性を重視するクルマ好きはCX-8やXC90を選ぶと思うが、違和感なくふつうに使える上級SUVがほしいならRX450hLが適する。RXの7人乗りはロングボディのRX450hLのみで価格は796万円だ。結局、現実的な選択肢はCX-8になる。
【画像ギャラリー】あのモデルはどんな感じ!? 登場した3列シートSUV&ミニバンの気になる内外装をチェック!!
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