2019年師走に富士ヶ嶺オフロードで開かれたマツダのオフロード試乗会、「CX-5」&「CX-8」篇である。
現行CX-5は2017 年発表の2代目で、現在のマツダの主力モデルである。国内でも、日本自動車販売協会連合会による2019年1~12月のブランド通称名別の統計で販売台数3万1538台を記録、スバル「フォレスター」についで29位につけている。
都会だけで乗るのはモッタイない! CX-30 オン&オフロード試乗記
そのCX-5のプラットフォームを延ばして3列シートにし、マツダSUVの最上位モデルとして、同じく2017年の秋に登場したのがCX-8だ。前出2019年の統計では2万3294台を販売し、第36位に名前を連ねている。294万8000円から始まる、定員6人、もしくは7人の大きなSUVとしてはなかなか売れているといえるのではあるまいか。
【CX-8 XD PROACTIVE 4WD 主要諸元(写真左)】:全長×全幅×全高:4900mm×1840mm×1730mm、ホイールベース2930mm、車両重量1900kg、乗車定員6名、エンジン2188cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(190ps/4500rpm、450Nm/2000rpm)、トランスミッション6AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ225/55R19、価格406万4500円(OP含まず)。【CX-5 XD Exclusive Mode 4WD 主要諸元(写真右)】:全長×全幅×全高:4545mm×1840mm×1690mm、ホイールベース2700mm、車両重量1700kg、乗車定員5名、エンジン2188cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(190ps/4500rpm、450Nm/2000rpm)、トランスミッション6AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ225/55R19、価格397万6500円(OP含まず)。どちらもエンジン横置きのFWD(前輪駆動)ベースで、駆動方式はマツダのほかのモデル同様、FWDと、i-ACTIV AWD と呼ばれる4WDのどちらかを選ぶことができる。
とはいえ、今回はオフロード試乗会なのでFWDの出番はない。
日本のメーカーとしては珍しく、マツダは毎年、商品改良を施している。で、2019年の改良の目玉が、新型車であるCX-30、それにCX-5とCX-8に新たに搭載された、AWDの走破性を強化するシステム「オフロード・トラクション・アシスト」である。
なんでまたCX-30とかCX-5のようなクロスオーバーSUVにそんなデバイスが必要なのかというと、ジープ「ラングラー」のような本格4×4と同じ土俵で評価されるのが当たり前の時代になっているからだという。
CX-8のインテリア。インパネ上部のインフォテインメントシステム「マツダコネクト」用モニターは標準。本革巻きステアリング・ホイールはオーディオ&操舵支援系のスウィッチ付き。メーターはアナログ。フルカラーのインフォメーションディスプレイ付き。360°カメラも搭載。3つのファクターを重視マツダによると、オフロード性能というのは、次の3つのファクターで決まる。
1 ディメンション(最低地上高)
2 接地性(サスペンション・ストローク)
3 トラクション性能(AWD、LSD、トラクション・コントロール)
1は前後オーバーハングの長さも大いに影響しているだろうけれど、ここでは無視して、CX-5のクラスの最低地上高は200mmが一般的という。そのなかにあって、CX-5の最低地上高は210mm、つまり、クラストップの数値を誇っている。
CX-8、CX-5ともにオートマチックトランスミッションは6段。走行モード切り替えスウィッチはセレクターレバー横に設置。疑い深い筆者がググったところ、なるほどトヨタ「RAV4」は190~200mm、日産「エクストレイル」はすべて200mm、210mm確保しているグレードもあるのがホンダ「CR-V」で、210mmを上まわるのはフォレスターの220mm ぐらいだった。
2のサスペンション・ストロークはたっぷりあるのに越したことはないとして、ここでマツダが問題にしたいのは3のトラクション性能である。
ぬかるみ等で片側のタイヤが空転すると、自動車の通称デフは駆動力をもう片側のタイヤに伝えられなくなる。それを防ぐため、本格4×4だったらデフ・ロック機構とか、あるいはLSDを装備したりする。デフ・ロックは確実だけれど重量増を招き、LSDは、連続性こそ“○”でも、高コストという“×”がある。
ようするに、日常の性能を一切悪化させない、乗用SUVのベスト・ソリューンは「オフロード・トラクション・アシスト」である。というのがマツダの結論で、ABS(アンチ・ロック・ブレーキ・システム)を使って、空転している車輪のみにブレーキをかけて抵抗を与え、それによって接地している側の車輪にトルクを伝える。ブレーキの制御だけではなく、AWDとトラクション・コントロールを協調させて路面に接地しているタイヤに最適な駆動力を分配し、トラクション性能を最大限に引き出す。
メーター横にある「オフロード・トラクション・アシスト」のスウィッチ。統合的なこの制御システムを構築するために、開発陣はカリフォルニアの州立公園内のオフロード・コースで、ジープ「チェロキー」、スバル「フォレスター」、それにポルシェ「カイエン」をCX-5と一緒に走らせたという。
オンロード性能そのままにオフロード性能を向上ということで、CX-8ではモーグル・コースで片側のタイヤを浮かせながらのオフロード・トラクション・コントロールを体験した。
タイヤが空転したら、オフロード・トラクション・コントロールのスイッチをオンにする。すると、ブレーキ制御が強くなって空転を止め、i-ACTIV AWDが接地しているリアにトルクを多めに配分、エンジンは低速トルクを多めに発揮する。
最小回転半径は5.5m。6人乗りのリアシートはキャプテンタイプ。リアシート用エアコンスウィッチ。フロントとは別に温度&風量を設定出来る。3列目シートはベンチタイプ。上級モデルはインパネやドライニングにウッドパネルをあしらう。空転するタイヤから白い煙がモコモコ出るので、大丈夫か!? と気の弱い筆者は案じたけれど、何度かアクセルを踏んでいるうちに無事、モーグル・コースを走破した。
新しいデバイスをくわえているわけではなくて、既に持っているABSとAWDの多板クラッチ、それにエンジンの制御の新しいアルゴリズムをつくりあげた。なので、重量増もないしコスト増もない。「オンロード性能を一切悪化させることなく、オフロードのコントロール性を向上させた」と、マツダの開発者が胸を張る。
CX-8で印象的だったのは「スカイアクティブD2.2」と呼ばれる2188ccのディーゼル・エンジンだった。2.2は大小ふたつのターボを低速と高速で使い分ける2ステージ・ターボで、最高出力190psと450Nmという大トルクの持ち主で、全長は5mに近く、車重1900kgの大型SUVをなめらかに走らせる。
WLTCモード燃費は17.4~17.6km/L。2019年10月の一部改良で、車名エンブレムのデザインが変わった。2019年10月の一部改良で、キーの形状も変わった。最後にヒルクライム・コースをCX-5のXD Exclusive Modeで走った。
おなじD2.2を搭載するCX-5は車重が1700kgと、200kg軽い分、CX-8よりも軽やかに感じるかと思いきや、CX-8ではモーグルと、すり鉢状とはいえほぼ平地をドライブしたのに対して、こちらでは急坂の登り下りだったので、いまから考えると、意識が動力性能云々に向かわなかった。私はただ、前にそびえる坂道を登り、そして下った。
CX-5は5人乗りのみ。ボディは全長×全幅×全高:4545mm×1840mm×1690mm。インテリア・デザインはCX-8とほぼおなじ。上級グレードのシート表皮はレザー。電動調整機構付き。上級グレードのリアシートはヒーター機構付き。BOSEサウンド・システムはオプション。印象的なのは、なぜオフロードの下り坂で威力を発揮する自動ブレーキ制御のヒル・ディセント・コントロールを装備しないのか?という質問への、マツダのエンジニアの明快な答だった。
「当社のブレーキ性能なら、(ドライバーの操作で)十分だから」
ですよね~。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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