現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > メルセデス・ベンツ CL63 AMGの新しい5.5L V8エンジンは想像よりはるかに洗練されていた【10年ひと昔の新車】

ここから本文です

メルセデス・ベンツ CL63 AMGの新しい5.5L V8エンジンは想像よりはるかに洗練されていた【10年ひと昔の新車】

掲載
メルセデス・ベンツ CL63 AMGの新しい5.5L V8エンジンは想像よりはるかに洗練されていた【10年ひと昔の新車】

2010年7月、メルセデス・ベンツ CLがフェイスリフトされ、CL63 AMGに新しいV型8気筒5.5L直噴ツインターボエンジン「M157」が搭載された。同時にトランスミッションも湿式多板クラッチを用いた「AMGスピードシフトMCT」が採用されていた。今回は登場後間もない2010年8月に、フランス・カンヌで行われたAMGモデルの国際試乗会の模様を振り返ってみよう。なお、63AMGパフォーマンスパッケージの試乗は「S63AMG」で行われている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年12月号より)

ダウンサイジングを敢行した5.5L V8ツインターボ新エンジン
従来の“55AMG”シリーズに代わって、AMG完全自社設計のV型8気筒6.2L自然吸気エンジン「M156」を積む“63AMG”シリーズが登場したのはたった4年前のことだ。しかし世の中の急激な流れに対応して、AMGは早くも新しいエンジンを用意した。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

燃費向上を目指してダウンサイジングを敢行したV型8気筒5.5L直噴ツインターボの新エンジンは「M157」の型式で呼ばれる。最初に搭載されるのはフェイスリフトを受けたCL63AMG、そしてS63AMGである。

排気量をM156の6208ccから5461ccへ縮小した上でスプレーガイデッド式直噴システムを搭載し、2基のターボチャージャーを組み合わせた「M157」は。最高出力544ps/5500rpm、最大トルク800Nm/2000~4500rpmを発生する。M156比19ps、170Nmの向上である。さらにオプションのパフォーマンスパッケージでは、最大過給圧が標準の1.0barから1.3barとされ、最高出力571ps/5500rpm、最大トルク900Nm/2500~3750rpmに跳ね上がる。

ギアボックスには新たにAMGスピードシフトMCTを組み合わせる。7Gトロニックのトルクコンバーターを電子制御湿式多板クラッチと置き換え、MT同様のダイレクト感とレスポンス、そしてATと変わらない操作性を兼ね備えたこれは、すでにSL63AMGやE63AMGでもお馴染みだ。

鋭いピックアップ、凄まじいトルクに圧倒される
まずはフェイスリフトで精悍さを増したCL63AMGのハンドルを握った。スタートはカンヌ市街。粛々と行きたいが、大幅に向上したトルクをより低い回転域からデリバリーする特性は、スタートダッシュを俄然強烈なものにしていた。何しろ1500rpmですでに670Nmものトルクを発生し、しかもAMGスピードシフトMCTはロスのないダイレクトな変速を実現しているだけに、アクセルペダルを深く踏み込めば、そのまま中速域まで車体は一気に引っ張り上げられる。

しかも小排気量化も効いているのだろう。その先のピックアップは鋭く、ターボらしい二次曲線的なフィーリングで大パワーを発散させながら、一気に7000rpm近くまで達する。強いて不満を言えば、エンジンの音や伸び感だけではレヴリミット近しとは察せられず、回転計に始終目を向けておく必要はある。

この辺りは自然吸気との違いと言えるが、率直に言って、想像よりはるかに洗練され、そして抑揚に富んだフィーリングに仕上がっていることには嬉しくさせられた。

パフォーマンスパッケージは「S63AMG」で試した。圧倒されたのは、その凄まじいトルク。2000rpm辺りからすでにノーマルとのトルク感の差は歴然で、そこからトップエンドにかけても、明確に一枚上手の迫力で全長5m超のボディを瞬間移動させるのだ。これを味わった後にはノーマルを物足りないとすら思ってしまった。購入予定にない人はパフォーマンスパッケージ、近寄らない方が無難である。

痛快なのは、この獰猛なエンジンが信号待ちなどでピタッと停止することだ。Cモードでは2速発進となりスタート/ストップ機能が働く。エンジン再始動はとりたてて早くはないが、ストレスを感じさせるほどではない。

他にもオルタネーターの充電状況を最適管理するジェネレーターマネージメントシステムの搭載など細部に至る配慮により、燃費はS63AMGで10.5L/100km(約9.5km/L)と、上々の数値を記録している。CO2排出量も246g/kmと、従来の344g/kmから大幅に低減された。

専用のABC(アクティブボディコントロール)を採用するシャシは、比較的硬めの乗り心地を示す。とは言ってもゴツゴツ不快だなんてことがある筈はなく、普段は快適なクルージングをこなせる一方で、ワインディングロードなどでは姿勢変化を適度に抑えた引き締まった走りを楽しめる。

新機軸として、ESPにコーナリング時の内輪に軽いブレーキをかけて、LSD的に旋回力を高めるトルクベクトリングブレーキの機能が追加されているが、その効果を体感するのは難しい。いずれにせよ、最初はデッドに思えたステアリングが、馴染んでくるとまったり心地良くなるのが、このCLクラスやSクラスである。

なお、CL65AMGも同時にフェイスリフトを受けているが、こちらはパワートレーンに変更はなく、V型12気筒ならではの贅沢なフィーリングは、今もって絶品と表現できる。 

CL63AMGは、フラッグシップクーペに相応しく、美しさもパフォーマンスも、環境性能も向上して生まれ変わった。M156への郷愁が完全に断ち切れたとは言わないが、しかしこの新しい価値は多くのユーザーから喝采とともに迎えられるに違いない。(文:島下泰久)

メルセデス・ベンツ CL63 AMG 主要諸元
●全長×全幅×全高:5106×1871×1426mm 
●ホイールベース:2955mm 
●車両重量:2135kg 
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:5461c
●最高出力:400kW(536ps)/5500rpm 
●最大トルク:800Nm/2000-4500rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR 
●最高速:250km/h (リミッター)
●0→100km/h加速:4.5秒
※EU準拠

[ アルバム : メルセデス・ベンツ CL63 AMG はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
ベストカーWeb
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
Auto Messe Web
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
Auto Messe Web
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
AUTOSPORT web
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
VAGUE

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村