50代以上のクルマ好きがバイクに戻るリターンライダーが急増しているという。それに合わせてバイクメーカーが、ダックス、GB350、ホーク11といったリターンライダーを対象にしたバイクが登場。
さらには、Z1やZ2、CB750、CBX400Fなどの絶版中古車の高騰に加え、カワサキZ900RS 50thアニバーサリーやホンダCB1100EX&RS、ヤマハSRなど新車価格より高い中古車が存在している。
おっさんリターンライダー急増中! ダックス GB350 ホーク11……久しぶりに乗るバイクはどれがいい?
とはいえ、気持ちは若くても体は50代のおっさん、そのおっさん向けにどのバイクがいいのか、大型免許を持ちヤマハの大型バイクに現役で乗る50歳のクルマ好きおっさんライダーである柳川洋氏が徹底解説する。
文/柳川洋
写真/柳川洋、ホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハ、ベストカーweb編集部
■コロナの影響でバイク乗る人が増え、販売台数が3年で35%増
コロナ禍で、密にならない屋外でストレス解消できるアウトドアスポーツの人気が高まっているが、バイクも例外ではない。最近、伊豆や箱根などに出かけると、ピカピカのバイクに真新しいウェアとヘルメット、やや緩めの体型(失礼!)、だけどライディングはど素人のそれではなくそこそこ速い、という、いかにも「あの人リターンライダーだ!」という人を見る機会が明らかに増えた。
現在50歳の筆者の周りでも、バイクの免許を取りに教習所に通っている友人が2人いる。1人は中型免許を保有していて、20年ぶりに大型のバイクに乗りたくて教習所通いを始めたリターンライダー、大型バイクに乗るため一からバイクの免許を取ろうとしているもう1人。
バイク人気が復活していることは、データからも明らかだ。126cc超のバイクの国内販売台数は2018年から2021年までの3年で何と35%増加の162,482台となった。半導体不足の影響もあったのに、すごい伸び率だ。
歴史を振り返ると、我々おっさん世代が中・高校生だった昭和末期(1987、1988年)はまさにバイクブームの絶頂期で、国内で32万4千台売れていた。だがリーマンショック後に売れ行きが急激に落ち、2010年、11年はピークの3分の1以下、販売台数10万台を下回る惨状となった。その後は11万台から12万台で推移していたが、ここにきて販売が絶好調となっている。
バイクの国内販売台数は、ようやく長いトンネルを抜け出して最悪期から+76%まで回復、一過性のブームではなく今回は長く続いてもらいたい。出典:全国軽自動車協会連合会資料より柳川氏作成
筆者も3月末にカワサキのディーラーでお話を伺う機会があったが、やはりリターンライダーは相当増えているとのこと。ベストシーズンを前に新車だけでは供給が足りず、今すぐ乗りたい需要に応えるため、2月に訪れた時にあった中古車の在庫が一部を除いてほぼ入れ替わってしまっている、というような状態だった。
「あいつとララバイ」などのバイク漫画を読みふけり、真夏のバイクの祭典鈴鹿8耐の決勝日には15万人を超える観客動員があった1980年代のバイクブームに青春時代を過ごしたオヤジ世代も、今や50代。子供も手がかからなくなり、経済的にも時間的にもやや余裕ができて、コロナの影響もありバイクに乗る人が再び増えている、というのが真相のようだ。
■免許を取りたい女性も急増、教習所も大混雑
また、リターンライダーだけではなく、新たにバイクの免許を取る人も増えている。いわゆる「中免」、つまり400ccまでのバイクに乗れる免許を新たに取得した人は、2018年から2021年までの3年間に12%増加。絶対数こそ少ないものの、大型二輪免許を取る人も再び増えてきている状況だ。
2018年まで減少傾向が続いた二輪免許の新規交付件数も、2019年から一転して増加傾向が続いている。出典:警察庁交通局「運転免許統計令和3年版」より柳川氏作成
コロナ以前だと、会社勤めをしていると、平日に教習所でバイクの技能教習を受けるのは相当難しかった。仕事着や革靴のままで教習に行くわけにもいかず、着替えやヘルメット、グローブも持参するとなると、土日などの休日に通わざるを得ない。だが在宅勤務の広がりで、平日にサクッと教習に行くことも可能になった。そのせいで免許を取る人が増えた一面もあるだろう。
また今回の「コロナバイクブーム(?)」がこれまでと大きく違う点が一つある。それは、バイクの免許を取得する女性が急増していることだ。直近の3年間では男性の免許取得者の伸びが+7.6%なのに対し、女性は+32.0%。
新たにバイクの免許を取る女性の比率が凄まじい勢いで伸びてきている。出典:警察庁交通局「運転免許統計令和3年版」より柳川氏作成
エンジンの電子制御、ABSなどの安全装備の進化による交通事故の減少や、輸入車のディーラーのように高級感のある販売店の増加などで、「バイクはうるさく、臭く、危ない」というネガティブな印象を持つ人が減った、ということも女性の免許取得者が増えた理由のようだ。
レストランなどの飲食店でも、ゴルフなどのスポーツでも、女性の割合が高くなると結果的に男性も増えて、ビジネスが好回転し始めるというのはよく知られた事実。今回のブームは一過性のものでは終わらないのではないか。
私が卒業した都心の自動車教習所に、自動二輪車教習の状況を聞いてみた。
「教習を始める前に適性検査を受けていただく必要があるのですが、それが現在1ヶ月待ちで6月からのご案内となり、そこから予約可能な技能教習も混み合っておりまして、現在普通自動車免許をお持ちの方でも、最短の卒業で3ヶ月半はみておいていただく必要がございます」、とのことだった。
■リターンライダーのバイク選びで考えるべきポイントとは?
筆者もまさに1970年代に生まれ、高校時代はバイクマンガ「バリバリ伝説」にハマり、友人たちがホンダNSR250Rやヤマハの後方排気のTZR250など、今やお宝となった2ストロークのレーサーレプリカに乗っているのを羨ましくみていた口だった。
1浪して大学に入学した夏に、中・高ずっと一緒だった親友が、塾講師のバイトに向かって原付バイクに乗っていてコンクリートミキサーの後輪に巻き込まれて亡くなり、それ以来バイクからは距離を置いていた。だが、バイクのことがずっと頭を離れず、2007年に普通自動二輪免許を、連続して大型二輪免許を取得し、念願のバイクオーナーになった。初めて自分で買ったバイクはMVアグスタのブルターレ910R。
わずかに手首に力を入れただけでもウイリーしそうになるぐらいアグレッシブな味付けのバイクで、筆者が何度も(物理的に)痛い目にあったMVアグスタブルターレ910R
わずかに右手首に力を入れただけで振り落とされそうになるような、とてつもない暴れ馬で、冬の環八の陸橋のジョイント部分で不用意にアクセル開けたら滑って転んで膝を5針縫ったり、秋の日光に走りに行ったら雨が降ってきてタイトなコーナーでフロントブレーキかけすぎてコケたり、伊豆スカイラインの中速コーナーで曲がりきれずに側溝に落ちそうになったりと、リターンライダーにもありがちなことを一通り経験いたしました。
2018年に「このまま何もせずに歳をとっていくと、目も悪くなり、体力も反射神経もなくなるので、一生のうちに一度は世界最高峰のスーパースポーツバイクに乗っておきたい」との思いからヤマハのYZF-R1に乗り換えた。
アクセルを不用意に開けたら本当に目が回るぐらいの圧倒的な加速性能と、ガツンとブレーキかけても不安にならない接地感の良さをフルに活かせているとはとても言えないが、大きな怪我もなく、伊豆スカイラインや箱根ターンパイクではガチのバイク勢に煽られながら、ほぼ実用性のないバイクで幸せにバイクライフを過ごしている。
バイクはクルマと全く別次元の解放感を楽しみ、日本の四季を身体で味わうことができる
そんな筆者から、これからリターンライダーを目指す方へのアドバイスは、筆者のようにいきなり大きなバイクではなく、乗って楽しく、それなりに実用性もある小さめのバイクからスタートすること。
あまり認めたくはないが、我々オヤジ世代は、運動会の徒競走で転んでしまうように、自分の頭でイメージした通りに身体を動かす能力が低下している。かつてバイクに乗られていた方ほど、昔のイメージと自分が今できることには結構な差ができている可能性が高い。
釈迦に説法かもしれないが、バイクは力が抜けていないと曲がらない乗り物だ。昔と同じ感覚でコーナーに飛び込んで「あれ、なんか違う」と感じて身体がこわばりセルフステアを邪魔したり、緊急回避のフルブレーキやシフトダウン操作ができなかったら大事故につながる。
まずは復活の第一歩として、非力かもしれないが楽しい、軽排気量のバイクからステップアップして、最終的に自分が夢見ていたバイクにいくのがいいのではないかと思う。
■維持費が超安い割に家族みんなで楽しめる、原付二種のホンダDAX125
まずはAT小型限定普通二輪免許以上があれば乗れる原付二種で、クラッチレスのホンダダックス125から始めてみてはいかがだろうか。昭和レトロ感あふれる愛嬌あるスタイリングだが、LEDヘッドライトやテールランプ、デジタルメーターも含め決して安っぽくはなく、所有する喜びも満たしてくれる。
ABSもつき、足つきもいいので、後ろに奥様やお子様を乗せて走っても安心感が高く、子供が気に入ってくれて将来バイクの免許を取りたい、なんて言ってくれれば一緒に楽しめて夢のようだ。兄弟車のモンキー125は、二人乗りできない点が惜しい。
ある意味完全に趣味の世界なので、乗って楽しめるのも重要だが所有すること自体の喜びがあったり家族と楽しみを分かち合えるバイクを見つけたい
原付二種は軽自動車税も年間2400円、自賠責も原付同様の2年で8850円。自動車重量税はなし。クルマの任意保険のファミリーバイク特約で保険もカバーできる。高速道路には乗れないが、原付の時速30km制限のフラストレーションからは解放される。
燃費も時速60kmの一定速度で走った場合55.0km/リットルと、とてつもない数字となっている。ダックスのメーカー希望小売価格は44万円、維持費が本当に安く済むことで、最悪宝の持ち腐れで乗らなくなってしまってもダメージが最小限で済む割には、実際に乗って楽しめる可能性が極めて高い、復活の第一歩にふさわしいバイク。これで通勤したら会社のみんなに驚いてもらえること間違いなし。
■「大人」が乗るからカッコいい、ホンダGB350 S
もうこのバイクは見た目でビビビ、と来て恋に落ちてしまう感じでいいのでは。丸型ヘッドライト、フロントサスペンションのラバーブーツ、丸みを帯びたフューエルタンクと塊感のある単気筒エンジン、いうお約束のクラシカルなスタイリングの中にも、洗練されたモダンな感覚が見え隠れする一台。
ノーマルよりもインチダウンされたワイドな17インチタイヤやブラックアウトされたフェンダーとサイレンサー、スマートなLEDウインカー、赤いステッチ入りのスウェード調シートの下に銀色に輝くプレート、そしてその上に目を引く赤いイニシャルS。昔のようにドコドコ言い過ぎない、乾いたエンジン音。
いい歳したおっさんライダーだけでなく、見る人のテンションも上げてくれる一台だ。
「これカッコよくないですか? こういうバイクで綺麗な乗り方をし、気づかれないぐらいさりげなくカスタマイズするのが大人の余裕を感じさせていいと思います」と筆者
シート高が800mmと若干高いが、幅がそれほどでもないのでおそらく問題ないはず。こういうバイクで、わきまえた綺麗な乗り方をし、セパハンにして気づかれないぐらいさりげなくカフェスタイルにカスタマイズする、みたいなのが大人の余裕を感じさせていい。
メーカー希望小売価格は59万4000円。燃費は実燃費に近いWMTCモード値で41.0km/L。年額の軽自動車税は6000円、自動車重量税は1900円。自賠責は2年で9270円。
任意保険は人によって等級が違うのでなんとも言えないが、ご参考までに20等級の筆者が、1000ccのYZF-R1で対人・対物無制限、搭乗者傷害・人身傷害などしっかりカバーをつけてインターネット損保で36000円ほど。車両保険は付与できない。
■人気のバイクの新古車価格は新車価格を上回るケースも
ホーク3のリバイバルモデル、ホンダホーク11。なんとエンジンが直列2気筒のOHCエンジンだという。(流石に3バルブではないようだ)今年の9月29日に発売予定
スズキVストローム650はその名の通り、V型エンジンを搭載する。とても扱いやすいアドベンチャーツアラーだから、長距離旅行のお供に最適
扱いいやすさに優れる本格的スポーツモデルのヤマハYZF-R7。この時代にこの車格、仕様で新車が100万円以下からというのも魅力
まずこれらのバイクから始めて、徐々に慣れてきたころに自分の夢だったバイクにステップアップされてはいかがだろうか。ホンダHAWK11のロケットカウルに身を伏せて潮風を避けながら湘南の海沿いを流しても、スズキのVストローム650に荷物を満載して北海道にソロキャンに出かけても、ヤマハYZF-R7で箱根の坂を軽快に登ってもいい。
トラディショナルなカフェレーサースタイルのカワサキZ900RS(50thアニバーサリー)
ゆったり乗るのも楽しい空冷1100ccエンジンを搭載するホンダCB1100EX。生産終了はとても残念
人気車に関しては、一昔前の「中古のバイクは買い叩かれる」という定説とはやや違った状況になっており、もし万が一やはりバイクを降りる事態となっても大きく損はしない可能性もある。
例えばカワサキZ900RS 50th Anniversaryなどでは、新古車の買取価格が新車価格の149万6000円を25万~30万円ほど上まわるとも聞こえてきたり、ホンダCB1100EXも5年落ち2万キロの中古のバイクの乗り出し価格が、直近販売されたファイナルエディションの新車価格と変わらない、という状況となっている。
ただし、中古バイク買取販売で上場している会社の財務情報を見れば、売上高総利益率つまり粗利は45%、ざっくり言って中古バイクの買取価格は売値のおよそ半分~7割程度であることも念のためお伝えしておく。
経済的なことももちろん大事だが、リターンライダーにとって一番大切なことは、自分を過信しすぎず、ケガをせずに楽しくバイクに乗ること。これから暑くなるが、万が一に備え、肘や肩だけでなく、胸部にハードプロテクターを装着することを強くお勧めいたします。
ヘルメットの次に大事な胸部の保護。筆者はベルクロファスナーテープをジャケットの内側に貼ってハードプロテクターを使い回しているとのこと。バイク事故の死因は頭部の次に胸部圧迫が上がるので、要チェックだ
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みんなのコメント
傍から見てすぐにわかるし、共通してるのは圧倒的視野の狭さと著しく低い危険予測能力。
正直迷惑以外の何物でもない