愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第4回。柏木由紀子さんがいまも大切にしているメルセデス・ベンツ「280SL」の秘密とは?
婚約記念の280SL
新型ランドクルーザーが搭載する“ガソリン・エンジン”の凄みとは?
「このクルマだけは乗り換えようとか、買い換えようとか、そういった話にまったくなりませんでした」
女優・柏木由紀子さんは所有するメルセデス・ベンツ「280SL」についてそう話す。
「このクルマは1970年に婚約記念として購入しました。主人が『これがいい!』ということで」
柏木さんのご主人は、ご存じ坂本九さんだ。歌手・俳優・タレント・司会者として映画やテレビ、舞台などでマルチに活躍。とくに『上を向いて歩こう』(1961年)は海外でも『SUKIYAKI』の曲名で大ヒット、アメリカの「Billboard Hot 100」で1位を獲得している。
坂本さんは車好きとしても知られていた。柏木さんとの結婚前はリンカーンやジープ、ルノーなどさまざまなクルマに乗っていたそうだ。柏木さんも結婚前、坂本さんが運転するジープに乗ったことがあったという。
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「はじめてSLをみたとき、『すごくかっこいいなぁ』と思ったのを今でも覚えています。結婚してからしばらくは私が280SLを運転して、仕事場へ行っていました」
柏木さんは18歳で免許を取得後、フォルクスワーゲンの初代「ビートル」に乗っていた。ビートルのデザインが大好きで、どうしても乗りたかったそうで、お父様に懇願して購入してもらったという。それから結婚するまではビートルに乗って仕事場へ出かけていたそうだ。
「SLに乗り始めたのは24歳ぐらいでした。その歳でメルセデス・ベンツに乗ってロケ先に行くなんて、ずいぶん生意気だったなぁと思います(笑)」
ちなみに280SLを選んだ坂本さんは、普段、運転手付きのトヨタ「センチュリー」に乗っていたため、あまり乗らなかったという。「主人はサウナやテニスに行くとき、たまにSLを運転していましたね」と、柏木さん。
結婚直後は、ふたりで伊豆や箱根にドライブへ行ったそうだ。
「主人の兄弟と連なって行ったりもしました。SLはふたり乗りなんですが、うしろに子どもたちを乗せてドライブしたこともありました。おおらかな時代だったんでしょうね」
取材時こそ、280SLには金属製のハードトップ「パコダルーフ」が装着されていたものの、当時、ドライブに行くときは幌を下げてオープンにしていたという。
「トラブルですか? 大きな故障はとくにありませんでした。クーラーがあまり効かなかったぐらいですかね」
ご自宅には購入当時に撮影されたと思われる280SLとご夫妻の写真があった。仲睦まじいおふたりと280SLの美しき姿……まるで映画のワンシーンのようで、見惚れてしまった。
転機はクイズ・ミリオネアへの出演
購入から10年が過ぎても、“思い出のクルマ”ということで乗り換えの話はまったく出なかった。その頃になると、柏木さんは別のクルマに乗っていたため、SLはごくたまに坂本さんが運転する程度になっていた。
「主人が亡くなってから、SLに乗らなくなってしまいました」
坂本さんは1985年、日本航空123便墜落事故に巻き込まれ星になった。以降、280SLはガレージにしまったままだった。
一時期、茨城県笠間市にあった「スポーツカーミュージアム日動」に展示されていたことはある。
「笠間市は、私たち夫婦が笠間稲荷神社で結婚式を挙げるなど、ゆかりのある地でした。そこにある博物館に展示するようになって、何年か置いていただいたんです。ただ、そちらが閉館してしまったので、また自宅に戻ってきました」
転機が訪れたのは2005年、フジテレビ系列のクイズ番組『クイズ・ミリオネア有名人親子大会』にお嬢様の大島花子さんと出演。なんと全問正解し、1000万円を獲得したのだ。
「収録前に『賞金を獲得したら思い出のベンツを直したい』と、話していました。まさか全問正解するとは夢にも思わず、びっくりしました(笑)。もっとも、賞金には税金が発生するので、1000万円そのまま獲得というわけにはいきませんでしたが」
早速、業者に持ち込み、修理を依頼したという。エンジンなどは載せ替えず、とりあえず限りある予算の範囲内で、“乗れるよう”に修復してもらった。
「修理完了後、SLに乗って次女と茅ヶ崎まで行ったのですが、マフラーから白煙が盛大に出た上、ガソリンの匂いもすごくて……周囲のクルマに迷惑をかけてしまっても申し訳ないので、結局、乗らなくなってしまったんです」
20年近く動かしていなかったから、完璧には直らなかったようだ。それからは、また、自宅ガレージに保管されている。
後編では柏木さんの知られざる愛車ヒストリーと、280SLの現在について綴る。
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【プロフィール】
坂本九(さかもと きゅう)
歌手・俳優・タレント・司会者。1941年12月10日生まれ、神奈川県出身。1960年、シングル『悲しき六十才』でデビュー。1961年、『上を向いて歩こう』が大ヒット。同曲は1963年にアメリカで『SUKIYAKI』としてリリースされ、『Billboard Hot 100』で3週連続第1位を獲得する。もちろん、日本人初だ。その後も『見上げてごらん夜の星を』や『明日があるさ』など数々のヒット曲を放つ。さらに俳優や司会者としても映画やテレビで活躍した。1985年8月12日、日本航空123便墜落事故に遭い星になる(享年43歳)。
柏木由紀子(かしわぎ ゆきこ)
東京都世田谷区出身。小学生の時に劇団若草に入団。雑誌『女学生の友』などのモデルをつとめる。高校生の時に松竹映画『明日の夢があふれている』(1964年)で映画デビュー。翌1965年に『若い真珠』でレコードデビュー。1966年、『東京の人』のヒロインに抜擢、以後『細腕繁盛記』『これが青春だ』『新妻鏡』『華麗なる一族』など数々のドラマで人気に。ロート製薬などのCMにも多数出演した。
1971年に坂本九さんと結婚。ふたりの娘の育児をしながら女優活動や夫婦で共演したCMや『なるほど!ザ・ワールド』などのクイズ番組などにも出演。
家族愛と絆について執筆した本『上を向いて歩こう』(扶桑社)は30万部を越えるベストセラーに。家族愛をテーマにした講演も全国で開催。
2004年には長女・大島花子、次女・舞坂ゆき子と家族ユニット「ママエセフィーユ」を結成。CD『心の瞳』をリリースした。2020年には『心の瞳』のアンサーソングとして『瞳をとじて』をリリース。今年の5月26日には『星を見上げて歩き続けて』(光文社)を刊行した。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・正木万美子
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