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日本最長32kmの私道を走る「ダブルス・トレーラー」 新会社発足でボディカラー一新! 新車体を世界初公開!

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日本最長32kmの私道を走る「ダブルス・トレーラー」 新会社発足でボディカラー一新! 新車体を世界初公開!

 デカすぎるにもほどがある! 山口県にある日本一長い「私道」を走るのは、ホイールベース15m超、総重量125トンというダブルス・トレーラー。そのお色直しが行われたとあって、早速現地に出かけてみた!

文と写真/加藤久美子

日本最長32kmの私道を走る「ダブルス・トレーラー」 新会社発足でボディカラー一新! 新車体を世界初公開!

■トミカでも大ヒット。旧宇部興産のダブルス・トレーラーとは?

山口県美祢市の伊佐セメント工場と、同県宇部市の宇部セメント工場を結ぶ日本一長い私道、宇部宇佐専用道路

 山口県宇部市に、東名東京料金所~厚木間よりも長い32kmの「私道」があるのをご存じだろうか? この距離は私道としては国内最長。長くて立派な道路は管理もネクスコ並みに行き届いている。

 その私道とは、2022年9月まで「宇部興産専用道路」と呼ばれていた道路で、1968年から14年かけて建設された。山口県美祢市の伊佐セメント工場と、同県宇部市の瀬戸内海沿岸にある宇部セメント工場を結ぶ全長31.94kmの私道となる。運んでいるのは、伊佐工場で作られるセメントの中間製品「クリンカー」で宇部工場まで運ばれてセメントに仕上がると、そこから日本国内や海外に出荷される。年間の出荷量は約350万トンにも達する。

 道路も規格外であれば、そこを走るクルマも超ド級の規格外だ。日本の公道を走れる最大サイズは一般道の場合27トン、高速道路では36トンだが、1台の牽引車(トラクター)で連結された2台のトレーラーをけん引するため、総重量125トンの巨大トレーラーとなる。

 1編成当たり約88トンの物資輸送を可能としており、総重量は公道最重量の36トン(最遠軸距15.5m)の実に3.3倍以上となる。

 巨大なトレーラーを引っ張る「ヘッド」(トラクタ)はいすゞ、ケンワース(オーストラリア)、ボルボ(スウェーデン)、スカニアの4車種で、とくにケンワースのヘッドは日本で激レアだ。

 ところで、32kmの私道を走るダブルス・トレーラーの運転にはどんな免許が必要だろうか? 私道なのに免許必要? と思われそうだがここでは大型免許と牽引免許が必須となる。125トンの非常に特殊な車両であるため安全な走行には特別な技術を必要とする。乗務員教育は助手席への同乗から始まり、空車走行トレーニングなど1~2ヶ月もの訓練期間を必須とし、厳しい走行試験に合格したドライバーだけが125トントレーラーの運転資格が得られる。

 以前、ベストカーwebでも紹介したが、UBEのロゴが入ったブルーのダブルス・トレーラーはトミカとしても発売され、大ヒットとなった。トミカは台数を公表していないが、一時期は在庫切れになるほどの大ヒットとなっている。

■2022年4月1日に三菱マテリアルとセメント事業を統合して「UBE三菱セメント」誕生

新会社発足により車体色が一新されたダブルス・トレーラー。ヘッドはいすゞGIGA EXZ52CK-XRR-M改

 さて、そのダブルス・トレーラーだが、実はこのたび外装カラーとデザインが一新された。社員のみなさんもまだほとんどが実車を見ていないという中、特別に取材が許された。

 12月22日、テスト走行もまだこれからという状況で、山口県宇部市の「UBE三菱セメント宇部セメント工場」に向かった。

 なぜ、新デザイン&カラーになったのか? 実は2022年4月1日、旧宇部興産(現:UBE)と三菱マテリアルのセメント事業が統合され『UBE三菱セメント』(MUCC)という新会社が発足したからである。新会社の新しいロゴやコーポレートカラーに合わせてダブルス・トレーラーも新塗装となる。

 実は筆者は2021年4月に旧宇部興産専用道路とそこを走るダブルス・トレーラーの取材をしており、その後、事業統合、社名変更の話を知った。2022年4月に新社が営業開始した後、ダブルス・トレーラーや32kmの私道「宇部興産専用道路」はどうなるのだろうか? と気になっていたので事情を聞いてみたのだが、その時点ではまだダブルス・トレーラーのデザイン変更やそのほか、変更となる内容が明らかにされていなかった。

 そして今年12月にUBE三菱セメント広報の方から連絡を頂き、ダブルス・トレーラーの新たなデザインが決まったことを教えていただいた。

「全部で31編成あるトレーラーのうち、今年は更新する1編成のみが新塗装となります。来年以降も新車を入れるたびに増えていく予定です。だいたい2編成/年のペースで更新しますので全部が入れ替わるのは10年ぐらい後になります」(UBE三菱セメント広報担当者)

 ダブルス・トレーラーの耐久年数は8年とされるため、車両を新しくするタイミングで新色になるとのことだ。

■白ベースに新しいロゴマークデザイン。道路名は「宇部伊佐専用道路」に

全31編成あるダブルス・トレーラーはおおむね2編成/年のペースで新しい車体に入れ替えられるという

 取材に出かけた日は朝から雪まじりの雨が降っており、午後からも雨の予定だったが撮影のときだけ奇跡的に青空が出ていた。

 UBE三菱セメントの方のクルマに乗せてもらってダブルス・トレーラーが用意されている場所に移動。凄まじく広い駐車場に停まっている新塗装のダブルス・トレーラーは白い! 大きい! きれい! 雲の間から顔を出した冬の太陽が暖かく、まぶしく、白いトレーラーのボディを照らしている。神々しいまでの姿にしばし見とれてしまった。

 カラーリングが新しくなった第1号のヘッドは『いすゞGIGA EXZ52CK-XRR-M改』(520馬力 排気量15.7L 16段マニュアルトランスミッション)だ。現在のところ新カラーはこの1台だけ。使用期間を終えて更新するクルマと入れ替わる形で新塗装の車体が導入された。これまでの薄いブルー系の下地に青いUBEのロゴデザインとは全く異なっており、フレッシュでクリーンな印象だ。

 ちなみに、新しい会社UBE三菱セメントのコーポレートマークにある赤色はMUCCのパーソナリティである力強さ、柔軟かつスピード感を持って対応していくしなやかさ、そしてその根底にある成長性を表しており、青色は知的さや誠実さを表している。赤=三菱、青=UBEではなかった。

「そのようによく言われますけど、違うんですよ(笑)」と穏やかにほほ笑む広報さん。まあ確かによくみると、赤も朱色がかっていて三菱の赤じゃないし、青もいわゆる「UBEブルー」の青とは微妙に異なっている。

 ちなみに、MUCC(UBE三菱セメント)カラーに変更されるのは、ダブルス・トレーラーだけではない。都内でもたまに見かけるUBEロゴが入った、一般のコンクリートミキサー車もMUCCカラーに代わる予定だ。

 さらに船舶関係もすべて新しいロゴ、カラーになるとのこと。

■専用道路、どうやって管理している?

『宇部・美祢・山陽小野田産業観光推進協議会』が主催する「産業観光バスツアー」に参加すればこの雄姿が間近に見られる

 32キロの私道はこのたびの社名変更で宇部伊佐専用道路という名称に改称された。国内最長の私道はどのような管理が行われているのだろうか?

 宇部興産セメントサービス株式会社の柴田和弘さんとUBE三菱セメント株式会社吉富健治さんのお二人に話を伺った。過去には4日間大雪で通行止めになったこともあったという。寒いシーズンの管理は特に大変そうだ。

― ダブルス・トレーラー、冬はスタッドレスなどを履くのでしょうか?

「いえいえ、冬タイヤに交換したり、チェーンを巻いて走ったりはありません。ダブルス・トレーラーは1編成で34本のタイヤを履いており、タイヤ交換も手間がかかり、外したタイヤの置き場所を確保するのも大変です。30編成あるので、タイヤだけで1000本以上。だいたい1年で18万キロ走るので年1回の割合で交換します」

― では雪が降るなどした場合は?

「道路の除雪を行います。ですが、除雪車も小さめの1台のみで、基本は社員が行っています。宇部セメント工場側は比較的温暖ですが、伊佐セメント工場がある方は寒くて道路の凍結もあります。専用道路一番の難所は全長1020mの『興産大橋』ですが、ここも除雪して凍結防止剤を巻いて…という対応になります」

「伊佐セメント工場では伊佐鉱山で採掘した石灰石などを原料としてクリンカーを製造していますが、こちらを止めることはできないので、運べないとなるとクリンカーがどんどんたまっていくのが大変でしたね」

― 32kmの私道、一番の難所「興産大橋」とはどんな橋ですか?

「全長1020mの『興産大橋』ですね。100mの間に6m高度が上昇する急こう配の上り坂となるため、シフト操作もとてつもなく難しくなります。なぜ急こう配なのかというと、大型の貨物船を通りやすくするため、橋げたと海面の間をできるだけ高くとっているからです。非常に急な上り坂ゆえ、シフト操作も熟練の技が必要となります。速度とエンジン回転数を合わせる神ワザ的なシフトダウンを繰り返して88tの荷物を引っ張り上げます」

― 総重量125トンのダブルス・トレーラー、燃費はどれくらいなのでしょうか?

「1Lあたり1.4kmくらいですね。燃費だけなら10トンダンプが3~4倍良い(約5km/L)のですが、ダブルス・トレーラーは1回に10トンダンプの9倍以上の量を運ぶことができるので、結果的にはダブルス・トレーラーの方が効率がよく、エコな輸送方法と言えるでしょう」

 32kmの私道。一般車はもちろん走行できないが、実はダブルス・トレーラーと合わせて見学できるツアーがある。『宇部・美祢・山陽小野田産業観光推進協議会』が主催する「産業観光バスツアー」である。

 2023年の予定はまだ発表されていないが、COVID-19感染拡大予防で1回に参加できる人数が絞られていることもあり、毎回予約申し込みは激戦模様。気になる方は公式サイトなどをチェックしてみて!

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みんなのコメント

16件
  • 景気の悪い日本、塗装コスト削減の為に、企業や運送会社の車両の色は
    全て「白」にストライプか模様になっちゃうんじゃないの?
    現に、日通さんですらそうなって迷走中ですが・・・
  • 別記事によると登坂時、橋の下ではギアを15速、速度60km/hで上り始め、
    速度とエンジン回転数を合わせてシフトダウンを繰り返し、坂の8分目までに
    7速までギアを落とし、15km/hで88tの荷物を引っ張り上げるということです。

    スカニア以外はスプリッタ付MTだと思いますが、約1000-1500rpm程度の
    パワーバンドの狭いエンジンで巨体を引っ張るのは、確かに容易なことでは
    ありませんな…

    14段もギヤがあった、昔のスズキ50㏄GPロードレーサーを思い出して
    しまいました…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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