コダワリ層の心をつかむ「本物感」満載の機能性!
いま、世界では地球温暖化に影響を及ぼす二酸化炭素低減に向けた取り組みが進められ、クルマ作りにおいては、電動化がテーマとされている。そこに、先進的な運転支援機能やネットワーク化という価値も加わることで、クルマが単なる移動手段に留まらず、私たちの生活や社会をシームレスに繋ぐ役割も求められている状況だ。
計画の甘さやトラブルじゃなかった! 「Honda e」が発売前なのに注文受付を「停止」した理由
そうしたなか、2020年はピュアEVの量産モデルが続々とデビューを飾っている。電気自動車と一言に言っても、エンジン車がそうであるように、バッテリーの搭載容量も目指した世界もさまざま。今回は、私が首を長くして登場を待ちわびていたモデルに試乗できる機会をいただいた。そのモデルの名は「Honda e」だ。
電気自動車は一歩先の未来を示すアイコンとなり得るが、Honda eの場合、電動化をこれまでにない新しい体験として驚きを与えるテスラとか、生活環境に馴染むパッケージで作られた日産リーフと比べると、キャラの違いは歴然。エンジン車と同じ土俵で比べると、EVの航続距離はなるだけ長い方が正義だと思われがちだが、航続距離を長く確保しようとすれば、バッテリーをたくさん積む必要があり、それに比例して車両価格も重量も増してしまう。
その点、Honda eは街乗りベストなEVとして、バッテリーの搭載量は少なめ。満充電の航続距離は2つのグレードで異なるが、WLTCモードで259~283kmとされている。電気自動車は充電計画ありきでの移動が求められるが、パナソニック製の充電性能に優れたバッテリーは、30分の急速充電で202km程度走れるだけの電力をチャージできるという。
ここまでは一般的なEVらしい話だが、このクルマの素性を知ると、じつにホンダらしいチャレンジングな内容であることに驚かされる。元々の構想は前輪駆動だったというHonda e。3リッターV6エンジン並みの大トルクを発生するモーターを鼻先に搭載し、衝突安全性や前輪の切れ角を確保しようとすると、フロントのオーバーハングが伸びてしまうことになる。ならば、「モーターはリヤに搭載して、後輪駆動にすれば解決できるのでは?」ということで、思い切ってRRレイアウトに方向転換したのだという。これらの恩恵で、前後の重量配分は50:50、左右の重量配分も50:50に。バッテリーを床下に敷き詰めたEVのパッケージは低重心にも貢献することになる。
中身がすごいHonda eだが、その魅力のひとつは出会った人をニンマリさせてしまうスタイリングにあるだろう。これまで登場してきたEVは、新感覚のドライブライフを左脳で捉える知的なイメージだったが、Honda eはまるでペットのごとく、私の懐に飛び込んでくる。それでいて、クルマとして必要な機能性を両立させながら愛らしく描いてみせたエクステリアデザインは、シンプルで洗練されたディテールで仕立てられている。よく見ると、車体のブラックアウトされた部分には、ガチャガチャしがちな機能装備が隠されていたりする。
たとえば、フロントのヘッドライトを囲う帯には、冷却用の開口部やフロントフードに設けられた充電口のフタを開けるためのボタンが隠されているし、前方の状況をセンシングするミリ波レーダーまでスッキリと収められている。チャージするたびに目に触れる充電口のフタには、品質の高いガラス材が用いられていて、いいモノを所有している満足感を高めてくれる。コダワリ層の心をつかむ“本物感”は、緻密に計算され尽くされたデザインがもたらすものだ。
一方で、インテリアに目を向けると、未来のクルマは人の感覚に寄り添うものになっていくことを予感させる先進的でモダンな空間が演出されている。ダッシュボードは5枚の液晶ディスプレイが張り巡らされており、カーナビや近隣の充電スタンドの情報表示、車両情報の表示やエンタメ系も楽しめる。また、2つのスクリーンにまたがって表示される壁紙には、熱帯魚にエサをやれる水槽の映像や美しい庭といった情緒的なものも用意されていて、繊細な日本人の感性をくすぐる。こうした機能は充電中にも楽しめるので、充電の待ち時間を有意義に過ごすことができそうだ。
そして、思わず「ステキ!」とつぶやいてしまったのが、グレーのファブリックシート。ホールド性はそれほど高くはないものの、モダンなリビングを思わせるソファのような質感。シートベルトがブラウンでコーディネートされているあたりもニクい。
モニターに向かって「OK! Honda」と語りかけると、音声操作をするだけで車両の機能やナビの目的地を設定することができる。さらに、手持ちのスマホと連携する機能もあって、クルマのキーを手にしていなくても、スマホのアプリでキーの施錠/解錠をしたり、クルマを起動して走り出すこともできる。日本では、まだこの手のデジタルキーの機能を搭載するクルマはほとんどないが、鍵とデジタルキーをうまく活用すれば、クルマ一台を家族でシェアしたりと、便利に使いこなすことができそうだ。
高速域でも質の高い操縦安定性と走行フィールにオドロキ!
いよいよ、気になっていた走りをチェック。今回は上級仕様のAdvanceのハンドルを握って街に繰り出していく。信号待ちをしていると、通り掛かりの歩行者に温かい表情で見つめられている視線を感じるのもなんだか嬉しい。モーターがタイヤを転がして走っていく感覚は、振動やノイズが少なく、快適に移動することができる。
航続距離が求められる環境車でありながら、Advance仕様の足もとには、フロントに205/45ZR17、リヤに225/45ZR17サイズのミシュラン パイロットスポーツ4のスポーツタイヤが装着されていることに驚かされる。そこに、シビッククラスのダンパーが採用されたこともあって、荒れた路面や高速道路の巡航では、タイヤが滑らかに路面を捉え、操縦安定性に優れた走りを披露してくれる。
最小回転半径はノーマルモデルに採用される16インチも17インチも4.3mと小回り性が高い設定。前輪は大きく切り込めるため、片側1車線の生活道路でUターンをするときはハンドルを切り返す必要がなく、スイスイ走ることができる。
ドアミラーの代わりに導入されたサイドカメラミラーシステムは、車内のインパネの両端に設置されたモニターにカメラ画像を映し出すというもの。ドアミラーで周囲のクルマを確認する目線の動きに近いレイアウトが取られたおかげで、自然な感覚で使いこなせた。ドアミラーと比べて、カメラは張りだしが少ないので、駐車時に折りたたむ必要はなく、壁スレスレの場所を通過するときには救われることもありそうだ。
首都高速道路では料金所からの合流や追い越しでアクセルペダルを踏み込んでみる。加速のインパクトは控え目だが、バッテリーの容量が少なめであることを考えると、継続的にパワーを使い切るのは得策ではないのかもしれない。ただし、必要なときは瞬時にトルクが立ち上がってみせるので、不満を抱くことはなかった。
それよりも、驚かされたのは安定性の高さと質の高い走行フィール。高剛性な骨格と重量配分に優れたパッケージ、低重心であることは、スポーツカー並みの素性の良さを持ち合わせていることになる。カーブでは余計な揺すられ感を与えず、路面のギャップを乗り越えるときは、しなやかな足取りで通過してみせる。まるで高級セダン並みの静けさも手伝って、プレミアムカーのハンドルを握っている気分にさせてくれた。
450万円オーバーの車両価格は決して安いものではないが、EVのメカニズムのほかに、独創的なRRレイアウト、洗練されたデザイン、未来を先取りできるデジタル系、抜群の操縦安定性、Honda SENSINGがもたらす運転支援機能など、コンパクトなボディには多彩な魅力が凝縮されている。
今回の試乗を通して、Honda eはハートで向き合える電気自動車であることに、これまでになかった価値を感じた。EVを所有する上では、充電インフラが普及しづらい日本の環境はさまざまな課題が残されているが、Honda eは「人とクルマの在り方は、電動化した未来も捨てたものではない」と教えてくれているようで、なんだか嬉しい気持ちになった。
ホンダはHonda eのメディア試乗会の最終日に、2021年をもってF1撤退し、カーボンニュートラルに向けた技術開発に力を注ぐと発表を行った。そうした戦略を踏まえれば、まさにこのHonda eこそ、ホンダらしい未来の価値を切り拓くアイコンとなるべきではないだろうか。
今後は自動車メーカー各社が電動化に取り組むなかで、ブランド独自の魅力を提供していかなければ、あえてホンダを選ぶユーザーの獲得は難しくなる。ユーザーの期待をいい意味で裏切り、ホンダらしい思想が感じられるクルマ作りをこの一台で終わらせてはならない。こうしたクルマづくりのアプローチを今後に役立てて欲しいと思うばかりだ。
Honda eの驚くべき小回り性&安全性を屋内迷路で体感!
試乗会場では、室内に段ボールで作った迷路が出現。こうした小径を曲がるシチュエーションでは、4.3mの最小回転半径が底力を発揮。前輪が大きく切り込めるから、軽のN-BOXよりも小回りが効いてスイスイ走れる。ドアミラーと置き換わったカメラシステムは、壁とボディの隙間をクルマの外に降りて真横から眺めているかのように見やすくてビックリ!
室内迷路の模様を動画でチェック!
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